▼はじめにご挨拶
Nora Scientific代表の源と申します。本業の傍ら、細々と個人事業主として本事業に携わっており、主な事業内容は、より多くのエンジニアが流体力学を理解し、効果的な製品設計に役立てることができるような技術指導およびそれを手助けするツールの提供です。
▼このプロジェクトで実現したいこと
一般的なWindows PCで動作する、安価で、誰でも手軽に実行可能な、3次元流体シミュレーション・ソフトウェアの開発を行います。
※以下に記す本プロジェクトを実現するための技術に関する特許は出願済み。
▼プロジェクトをやろうと思った理由
近年の環境規制の高まりから、様々な製品や環境の高効率化・低環境負荷化が要求されています。これには、輸送・工業機器の空気抵抗低減や冷却損失の低減が挙げられます。身近な例では、家庭内でのエアコンやサーキュレーターの最適配置による省エネルギー化が挙げられます。このような高効率化の実現には、試行錯誤による最適化は、時間・コストの観点から現実的ではなく、流体シミュレーションによる最適化が必要です。
大きなスケールを有する現象に着目すると、風による汚染物質の飛散・拡散予測や、ビル風の発生原因究明及びその予測などが挙げられますが、これらの現象に対して、様々な条件下で実験を行うのは非常に困難です。また、自転車走行、競泳、モータースポーツなどにおける空気抵抗の低減は、空気抵抗とフォームやエアロパーツとの間の正確な因果関係を定性的、定量的に究明するために、流体シミュレーションの活用が効果的です。
このように、工業製品設計開発のみでなく身の回りの様々な現象と密接に関わる流体力学ですが、その現象理解や数値シミュレーションは、専門家でない方には敷居が高いとよく言われます。これには、(i) 現象が目に見えないために、直感的理解が困難、 (ii) 数値手法・条件決定には多くの知識が必要、 (iii) 従来の数値解析の実行には、専門的な前後処理が必要、のような理由が挙げられます。
特に、従来の市販の流体数値シミュレーションソフトは、非常に高価であり、高度な専門性を有する前後処理が必要で、企業であってもシミュレーションの実行準備及び結果の理解には、専門の外部コンサルタントを用いるケースがほとんどです。
▼これまでの活動
これまで、Nora Scientific事業の活動の一環として、非常に安価(学生は無料)で、誰でも実行できる2次元流体シミュレーションソフト、Flowsqure(フロースクエア)を開発、公開してきました。境界条件(流れ対象の物体形状。例:車、翼など)の設定には、ペイントソフトでシミュレーションしたい場の絵を描くだけという単純なインターフェースを採用し、流体数値シミュレーションの専門知識がない方でも気軽にシミュレーションを実行できるツールとなっています。我々が把握しているだけでも、企業における設計開発・社員研修のみならず、大学における幅広い分野の講義や、中・高生対象のワークショップ、非エンジニアの方の趣味など全世界で2万人以上に用いられてきました(ただし、無料/寄付額任意のソフトウェアであるため、全利用者数は不明)。
しかし、Flowsqureは2次元という制約がある故、3次元性の強い実用的な流れ場への適用は不可能であることも多々あります。流体シミュレーションをより多くの人々・企業にとって身近なものにするには、同レベルの手軽なインターフェースを有し、一般のPCで実行できるように計算負荷をできるだけ低減した、3次元流体シミュレーションソフトウェア、(仮称)Flowsquare+(フロースクエア・プラス)の開発が必要です。
▼従来の3次元流体シミュレーション・ソフトウェアとの違い
上記の必要性により、開発する3次元流体シミュレーション、Flowsquare+は、従来の市販の3次元流体シミュレーション・ソフトウェアと比較し、以下の利点があります。
1.専門性を有する前処理・後処理が必要ない。
必要な下準備はペイントソフトで解析対象の絵を描くことです。CADによる境界条件設定や、計算メッシュ生成に頭を悩ます必要はありません(ただし、CADデータのインポートも将来のアップデートにて対応予定)。ペイントによる画像のみで複雑な3次元形状を指定できる技術はNora Scientificで開発され、特許出願済みです。
上図:ビットマップ画像3枚で構築できる3次元形状の典型例。
2.シミュレーション実行中にも可視化結果が随時描画される。
従来の流体シミュレーション・ソフトウェアとは異なり、シミュレーション実行中においても、最新の流れ場が随時描画されるため、シミュレーションの進捗を実際の流れを見るように確認できます。
3.様々な可視化ツールが予め含まれる。
従来の流体シミュレーションソフトではシミュレーション実行後の結果の可視化には、別の可視化ソフトウェアを準備する必要がありましたが、Flowsquare+では、結果の描画するための様々な可視化ツールが予め含まれています。組み込み予定の可視化手法は、速度ベクトル、断面図、カラーコンター、流体追跡粒子、流線などで、これらの様々な可視化手法により、流れ場を直感的に理解できます。もちろん、これらの可視化は、上記(1)のペイント画像で指定する物体形状の3次元ポリゴンとともに表示されます。
4.非常に安価
現在市販されている3次元流体シミュレーション・ソフトウェアは、1ライセンス100万円を超えるものが多く、大企業でない限り、気軽に採用できるものではありません。Flowsquare+では、以下のような複数のライセンス形態・価格帯を予定しています。また、本価格で、マルチコア・マルチスレッド並列計算機能の利用も可能です。
(a) 学生ライセンス(年更新):無料
(b) 2次元ライセンス(1年間):1,000円程度を予定
(c) プロフェッショナル・ライセンス(1か月):3,000円程度を予定
(d)プロフェッショナル・ライセンス(12か月):30,000円程度を予定
上図:現在予定しているライセンス形態表。(*1)Flowsquare+ダウンロード直後からご利用いただけます。(*2)シミュレーション実行毎の時間ステップ前進に制限はありますが、シミュレーションのリスタートを繰り返し行うことで、制限なくシミュレーションの時間前進を進めることができます。
▼現在までの開発状況および資金の使い道
現在までに、必要と考えられる作業工程のうち、約半分程度の実装が完了しています。具体的には、流体数値解析のカーネルの開発はほぼ完了しており、今後は入出力に関するインターフェース、3次元描画、並列計算機能の実装を完了させる必要があります。
資金の使い道は、本ソフトウェア開発に要する人件費、本ソフトウェア実行環境構築の一部費用を予定しており、残りの開発工程を2~3か月程度で完了し、今夏に完成・公開することを目的としています。
3次元流体シミュレーション・ソフトウェア開発では、ユーザーインターフェースの複雑化、3次元グラフィクスを用いた描画の組み込み、並列計算機能の実装など、現在公開中の2次元ソフトウェアと比べ、高度な計算科学技術を必要とし、開発が非常に困難になります。本クラウドファンディングで得た資金で、これらの開発費の一部を担い、開発ペースの向上を目指します。予定以上のファンドが集まった際には、開発リソースをさらに増強することも可能です。
上図:現在実装済みの機能を用いた室内空調のシミュレーションの実行例(温度で色付けしたトレーサー粒子を表示、形状はペイント画像で構築)。
▼リターンについて
本プロジェクトをサポートしてくださる皆様に以下のような特典を用意しております。
3,000円
・1か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
10,000円
・3か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
30,000円
・Nora Scientificのオリジナルステッカー2枚
・12か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
50,000円
・Nora ScientificのオリジナルTシャツ1枚
・Nora Scientificのオリジナルステッカー2枚
・12か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
100,000円
・ソフトウェアのスタート画面上にサポーターとしてお名前を掲載(ローマ字表記;希望者のみ;Flowsquare+初公開から1年以内のアップデートまで適用)。
・Nora ScientificのオリジナルTシャツ1枚
・Nora Scientificのオリジナルステッカー5枚
・12か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
1,000,000円
・Flowsquare+や一般的な流体数値シミュレーションに関する2日までの出張指導(国内のみ、旅費込)
・ソフトウェアのスタート画面上にサポーターとしてお名前を掲載(ローマ字表記;希望者のみ;Flowsquare+初公開から1年以内のアップデートまで適用)。
・Nora ScientificのオリジナルTシャツ1枚
・Nora Scientificのオリジナルステッカー10枚
・12か月のプロフェッショナル・ライセンスの発行
・Flowsquare+のWebページのサポーター欄に1年間お名前を掲載(希望者のみ)。
▼最後に
流体シミュレーションは、現在は一部の企業や研究機関でしか用いられていませんが、近年の計算機の発達により、今後より多くの分野で活用されていくものと考えられます。数値シミュレーションの適切な活用により、実験に基づく試行回数が削減され、その為の期間や費用を大幅に節約することができる日も近いでしょう。本プロジェクトで開発するFlowsquare+はそのような時代のメインストリームの一部を担うようになれば、と考えています。
最新の活動報告
もっと見るFlowsquare+オフィシャルサイト
2018/06/08 00:32Campfireでのプロジェクト終了後の情報発信の場として、Flowsquare+のオフィシャルサイトを公開しました。公開時期の目安となるよう、開発状況をお伝えするとともに、公開前にFlowsquare+の仕様・内容なども確認することができます。チュートリアルなどのページも、開発状況に応じて適宜公開する予定です。 https://fsp.norasci.com/ それでは、本プロジェクト終了の数日及びソフトウェア公開まで引き続きご支援、応援、コメント等よろしくお願いします。 もっと見る
Flowsquare+オフィシャルサイト作成
2018/06/01 12:54本プロジェクトも残り10日を切りました。プロジェクト終了まで日数はあるものの、目標の達成は難しいだろうと思っています。この結果に対して、いろいろ原因は考えられるのですが、やはりFlowsquareやNora Scientific事業で、SNSを使った情報発信活動を今まで行わなかったのが大きいのではないかと考えています(この反省を踏まえ今後はそのような活動もしていくことを検討しています)。 とはいうものの、今回のプロジェクトを通じて、様々な意見をいただくことができました。特に、なかなかクラウドファンディングという体制で支援していただくのが困難な企業や研究・教育機関の方々からのソフトウェア開発に関する助言は非常に有益でした。ありがとうございました。 本プロジェクトが成功しない場合、支援金は全額支援者に返金されます。また、本プロジェクトページの更新も停止します。しかし、プロジェクトの成否にかかわらず、Flowsquare+の開発は継続する予定です。開発リソースは減りますが、一部機能の実装を次回のアップデートに回すなどし、公開時期を当初の予定からできるだけ遅らせないようにする予定です。 また、本プロジェクト終了後の情報発信の方法として、上図のような本ソフトウェアの開発状況や内容紹介などのページを近々公開する予定です。公開中のFlowsquareのサイトから、Flowsquare+のサイトへのリンクを設置する予定ですので、プロジェクト終了後はそちらをご覧ください。 それでは、本プロジェクト終了までの数日、本ソフトウェア公開までの数か月(?)、引き続きご支援、応援、コメント等よろしくお願いします。 もっと見る
リリースに向けたユーザーインターフェースの開発 (2)
2018/05/28 11:07以前投稿したインターフェースの開発状況の更新です。様々な要望を、Flowsquare+の手軽さを損なわない範囲で出来る限り組み込もうと考えており、まだ詳細な仕様は確定していないのですが、上図で示す、3次元モデル構築に用いるペイント画像読み込みの部分のインターフェースをアップデートしました。 まだ、若干の変更の余地はありますが、画像読み込み・3次元モデル構築に関する想定している機能の大部分の組み込みが完了しております。 今後は、シミュレーション・パラメータ設定に関するインターフェースの開発に取り掛かる予定です。 本Campfireプロジェクト日数も徐々に少なくなってきましたが、プロジェクト終了まで皆様のファンディングやSNSを通じたサポートや応援、ご意見等よろしくお願いします。 もっと見る
宮本様 急なご連絡失礼します。 北原と言います。 仕事の関係で、粘性の流体解析ができないか探しておりましたら、このプロジェクトを見つけ、 ぜひ、トライができないかとソフトのDLを行い検証を実施できないかと検討しているもので す。流体解析については、基本知識はあるもののソフトを扱うのは初めてです。 目的は、異形の形状の金型の間を流れる流体の動きの分析になります。 射出成型の流体解析に近いものですが、用途は異なります。 公開されているソフトで、どこまで検証可能か、ご教示いただけると助かります。 よろしくおねがいいたします。