日本に隠れている優れ美術を集め、ドイツで展示する日独文化交流です。日本の知られざる美術作品が、町工場の技術のごとく世界に通用しています。展示会の資金不足を私費で補ってきました。全国からのご支援で、これからも低廉な出品料で続けたいと考えます。皆様とともに活動の輪を広げたいと思います。

プロジェクト本文

1 最初の壁

私(河野)は日本の画家や造形作家の作品を、主にEU国へ送る活動を行っています。当初は自作品を託す側で、やがて託される側に回り、作品募集を担当しました。そこで壁に当たりました。日本の新進美術はヨーロッパ国で珍しがられ、しかしなかなか売れなかったのです。現地からも内容向上を求められました。美術の内外差を知り、抜本的な補強と底上げを始めました。


写真1 Thomas-Dehler-Haus(photo: G. T.)

2 もうひとつの壁

まず作品の選び方を変え、作品単位でパワーアップも行い、現地評価と売れる率を徐々に上げました。売れる作品の割合を10倍に上げる策が、マネージ・アンド・プロデュース作戦です。また売れて万歳で終わらせず、より独創的、芸術的、超越的な方向を目指しました。ところがやがて別の、次元の違う壁に当たりました。ジャパンマネーの縮小です。


写真2 Winkler画廊ペーパーアート2014企画(photo: G. T.)

3 アーティストの資金不足

私たちは2014年春にベルリンにアートギャラリーを構え、今は失っています。さらなる国内事情で、美術家には徐々に参加費が重い負担になっていきました。そんな中で出品料もじりじり下がり、活動資金難になりました。日本の内需事情が、海外文化活動のブレーキになってきた問題です。


写真3 JONES F. S. "Our funeral in the box"(photo: G. T.)

4 外国の人々は日本美術に期待

外国はインフレ基調で、物価も所得も毎年上がり、為替も円安ユーロ高が続いています。ニューヨークでもパリでも、現代アート作品は売れていて、日本の美術も外国からエールを送られています。日本の現代作品をもっと送るよう、ドイツからもリクエストが来ているのです。東日本大震災後の日本への支援で行われた各国の芸術文化事業で、その傾向は強まりました。しかし日本側は反応しにくい状態です。


写真4 BERLINER LISTE in Kraftwerk Berlin 火力発電所跡(photo: G. T.)

5 内外すれ違いの構造

余裕がある外国は日本の現代美術品が欲しい、しかし日本は不況でアーティストも動きにくい状態です。日本以外の先進国は経済成長し、アルバイト時給が下限1500円など物価も想像以上という現実もあります。案や才があれどお蔵入りという、日本の各分野によくある事態が美術にもみられます。このすれ違いを何とかしようと考えました。


写真5 URANIA Berlin e. V.(photo: Kayoko Tagami)

6 恒例行事の日本祭

毎年1月の恒例イベントに、「ジャパン・フェスティバル・ベルリン」があります。これは各国にある同名イベントのドイツ版で、会場に"Japan Exclusive"のゾーンがあります。私たちは在ドイツでなく、遠い日本国内からエントリーする数少ないチームです。会場には市民コレクターやアート関係者も訪れ、アーティスト紹介のよい場になっています。しかし遠征はトータル赤字。そこでご支援金を、主にドイツ側のエントリー料と運営費にあてます。


写真6 Japan Festival Berlin 2016ジクレー版画展(photo: G. T.)

7 リターン作品は主に日独製

ジクレー版画と、絵はがきが充実しています。ジクレーとは(転写でなく)インク吹付プリンターで出力した、デジタル版画の代表です。日本では値が張るドイツの高級美術紙に刷ったもので、現地で好評作が出ています。
もうひとつのJブランド絵はがきは、アーティストの作品をレイアウトした、ドイツで限定販売しているポストカードです。やや大型のサイズで、一点ずつに手をかけた美麗な色彩のシリーズです。こちらも人気作があります。


写真7 Japan Festival Berlin 2017 J art postcard(photo: Kaori SUZUKI)

8 ヨーロッパの美術展覧会の大きい違い

ヨーロッパ国の特徴に、アート作品を市民が判定する慣習があります。人々は音楽と同様の感覚で美術を楽しみ、現に各家庭に現代アートが飾ってあります。日本には現代アート作品を所有する人はごく少ないので、ここは大きい違いです。その違いが美術展の形式に表れ、アートフェアと呼ぶマーケット方式が展覧会の大半です。かしこまった緊張の場ではなく、くだけた雰囲気がヨーロッパの美術展覧会です。


写真8 Japan Festival Berlin 2018 Micro solo Exhibition(photo: Emiko Oeda)

9 日本へのフィードバックも視野に

作品を日本に輸入し国内活況がつくれたらと、出品アーティスト一同願っています。各国の美術が集まった激戦地でありながら、全く聞いたこともない初登場アーティストも区別なく買われるドイツでは、美術の評価軸も日本と違っています。それも活動のひとつのポイントです。私たちは海外遠征の思い出づくりに加え、独自作品が現地でどこまで行けるかに重心を移しています。攻略ノウハウも少しずつ積み上がってきました。


写真9 Quartier 205 shopping center, Berlin-Mitte(photo: G. T.)

10 ドイツ現代美術の未来

現代美術の情報発信地といえば、1番はニューヨークで、2番はパリとされます。ところが世界一を目指す宣言を、ベルリン市が行っています。まるでビッグマウスですが、シュプレー川にある博物館島(いわゆる中州の美術館、ベルリン美術館)を核として、現代アートの基地を結集する工事が続いています。有言実行がドイツ流。最近の竣工でひと区切りがつきましたが、ソフト面はこれからです。


写真10 ボーデ美術博物館・ベルリン博物館島(photo: G. T.)

11 ニッポンに期待するベルリン市民

この未来的な宣言が、ベルリン市から比較的新しく出された理由は、ベルリンの壁の崩壊でした。ベルリン市には中堅的な古都のイメージがありますが、冷戦で主要産業が去り、今は情報産業の道が画策されています。やるならとことんやろうぜ、という気分が私たちにもあり、出品者ともどもこの未来の芸術文化情報都市に投資しています。トーキョー以外の都市名も出しながら、私たちは現地で日本現代文化を広めていきます。


写真11 ベルリンの壁の部分遺構(photo: CHIHAYA NAKAGAWA)

12 関連リンク

ジャパン・フェスティバル・ベルリンの主催者サイト
http://www.japanfestival.de

ジャパン・フェスティバル・ベルリンの開催建物サイト
http://www.urania.de

 

13 リターン作品の諸元(選べる作品の詳細です)

ジャパン・フェスティバル・ベルリン由来として、実際の出品作から用意しました。日本のコンテストにはまず出ない作品ですが、内外の受賞作や雑誌掲載もあるようです。12ヶ月を過ぎて継続された場合は、一巡して24ヶ月にもリターン作品が選べます。そのために作品の種類を後で増やしていく予定です。

◆《大型絵はがきセットの仕様》◆◆◆◆◆

(1)日本のアーティストの秀逸作品をデザインした、高級絵はがきコレクション。(2)175x120ミリ、光沢厚手用紙260g/m2、オフセット印刷、紫外線防止コート、投函に必要な切手は82円。(3)5種5枚セットが複数あり、お好みの一セットをお選びいただけます(決定は後で)。(4)画像は理論値の裁断状態で、sRGB表示なので彩度が高めです。

・絵はがきセットA(20180401登録)
ドイツでのベストセラーが中心の図柄。当地で関心が高い日本文化伝承的な組み合わせ。

(上左から)
『Lucifer-air, closed』Meiya Y(2015)
『Futa-Hihiru』O.Souske(2012)
『A Game of Go., 600 Scenes of Genji, Scene452』Agameishi(2001)
『6th Heaven -eclipse』Meiya Y(2013)
『a dancer』Ritsuko(2014)

・絵はがきセットB(20180401登録)
ドイツで一目置かれた、ニッポンの不思議な造形。編集者推薦のディープな組み合わせ。

(上左から)
『Life Tree』Hiroyuki MIZUNO(2014)
『Animal Spirits』Miwako KOBAYASHI(2013)
『Snow flower』yukimushi(2012)
『A view from the garden, August』Miki Honjo(2014)
『"Kawaii" Lovely 01』Hiroko Ishii(2014)

◆《ジクレー版画の仕様》◆◆◆◆◆

(1)油彩、ペン画、CGなどを原画として、高級紙に刷ったジクレー版画コレクション。(2)インク吹付出力、ドイツ製美術紙、テクスチャー紙質あり、仕上がり寸はタテxヨコ。 マテリアルは原画の仕様。ドイツ用のプリントサイン。(3)複数の中から1点をお選びいただけます(決定は後で)。(4)画面では濃度などが異なって見えることがあります。

・ジクレー版画1(20180401登録)

『red ogre』Meiya Y(2010)Pigment ink, digital software
古代日本の民話とSFスペクタクルを行き来して、近未来世界を表す超日本画。アナログとデジタルを混成した、精緻な現代おとぎ話の人物画シリーズ。水彩紙厚手、300x300ミリ。

・ジクレー版画2(20180401登録)

『From the garden #0965』Miki Honjo(2014)Oil
これは具象画かとイリュージョンを誘う新興伝統造形。ヨーロッパ感覚の中にまだ定着していないと思われる、日本の様式美を感じさせる推奨作。水彩紙厚手、300x390ミリ。

・ジクレー版画3(20180401登録)

『SAKAKI』O.Souske(2012)silk, Japanese traditional pigments, silver leaf
さかき(榊、学名Cleyera Japonica)は古来、神が宿る葉。巫女(みこ)装束の少女がそれを手にした図は、清楚な癒し系日本画の新感覚。水彩紙厚手、300x312ミリ。

・ジクレー版画4(20180401登録)

『Time of Fertility』Kaori SUZUKI(2016)Acrylic, Pen, Color Pencil
ドイツに支持者が多く、具象画を超える評価がある純粋抽象画。全体と部分に別軸の表現があり、細部にも仕掛けが多い複雑系。長方形。キャンバス目紙厚手、400x300ミリ。

・ジクレー版画5(20180401登録)

『Lovely little girl』Yoko Matsuura(2017)Photo, OLYMPUS PEN-F (14mm, f5.6, 1/2500s)
ドイツ鉄道、DBベルリン中央駅のひとコマ。ドイツではアートフォトグラフの地位が高く、絵よりも写真が先に売れるほど。高級写真光沢紙厚手、400x300ミリ。

・ジクレー版画6(20180401登録)

『Clover』Emiko Oeda(2015)Acrylic
洋画、日本画、サブカルなど在来と異なる独創的画風。背景と同柄の衣服で、不思議な活気と憩いをもたらす植物シリーズの代表作。キャンバス目紙厚手、361x300ミリ。

・ジクレー版画7(20180401登録)

『Light and darkness』Mari Nishimura(2017)Oil, Acrylic
ニューヨークや東京ですでに話題の抽象系新進。龍伝説の幻視体験を思わせる会心作。売却後に再発見し、記録を発掘して版を起こしたもの。キャンバス目紙厚手、394x300ミリ。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
表紙写真 ブランデンブルク門、旧東独側から(photo: Hideki MATSUSHIMA)

  • Default image l
    活動報告

    日独アートのこぼれ話による論説サイト

    2018/08/31 23:24

    夏の間は参加者が案を出したり制作中ですので、こちらは手空きになり、論説などを書いています。今回の新作は「アートの本格解説」という出版宣伝サイトです。 内容は、普通なら本に書けないことが多くなっています。書いてはまずいことがアートにあるのかと疑問も起きるかも知れません。その多くは、日本が現代ア...

  • Default image l
    活動報告

    物語メモ4☆リーディング・ミュージアム構想案

    2018/07/18 05:16

    5月に日本政府案「先進美術館(リーディング・ミュージアム)」が出されました。目玉は、国内美術館の学芸員が美術作品の売人役となり、職場の収蔵作品を売り出して運営費をつくるというもの。一見おもしろい攻めの姿勢に思えますが、学芸員は反対声明を出しています。 学芸員は担い手だから、Noを言えば揚げ足...

  • Default image l
    活動報告

    物語メモ3☆日欧美術の内外差

    2018/05/31 04:56

    活動は美術展あっせん業にみえますが、重要な作業に日欧アートの内外差への対処があります。日本とドイツで美術が多く売れるのは、圧倒的にドイツです。日本だと美術は概して特殊な分野で、高尚さで気後れが生じやすいものです。逆にドイツでは美術は一般化して身近で、つまり現代アートを所有する人が多い傾向です。...

このプロジェクトの問題報告やご取材はこちらよりお問い合わせください