●自己紹介

改めまして、SAPPORO POSSEと申します。札幌を拠点に「個人サイト」として活動しております。
音楽やカルチャー関連の記事をたまに公開し、ネット上で突如界隈をざわつかせることに定評があります。

昨年、札幌のイベントで90ページほどからなるZINEを販売し、完売しました。
その後、札幌の独立系書店、および東京のタワレコ数店舗で販売しましたが、そちらも即完売となりました。

少部数の頒布ではありましたが、当該号は高く評価され、『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『日本のZINEについて知ってることすべて』(野中モモとの共著)などで知られる「ばるぼら」氏からは、「2022年のベスト本」との評価を、『新蒸気波要点ガイド』への寄稿などで知られる「動物豆知識bot」氏からは、「商業刊行物も含めて2022年に国内で印刷された紙のベスト」との評価をいただきました。



2022年のベスト本はSAPPORO POSSE『HYPERTEXT』№0で。近年の『Spectator』のようなパソコン×ヒッピー文化へ接近しながら、アプローチの方法がまったく違う。リニアな入門編ではなくキーワードが過去現在にリンクしあうインターネット的編集。ゲーム、陰謀論、ストリートアート。1号が待たれる(*)

X (旧Twitter) - BAR B OR A @blogdexjp


商業刊行物も含めて2022年に国内で印刷された紙のベストはこれですね。

X(旧Twitter) - 動物豆知識bot @ykic_bot



今回のクラファンは、そのZINEの正式版となる「第1号」の資金となります。

再販(一般販売)はいつになるかも謎なので、興味を持っておられた方は、このクラファンで入手していただいた方が確実です。



●このプロジェクトで実現したいこと

昨年札幌のみで発売したZINE、『HYPERTEXT』の正式版となる『HYPERTEXT Vol.1』の制作・販売が目的です。

テーマは「カウンターカルチャーと陰謀論」。扱う内容は、音楽、文学、ボードゲーム、ストリートアート、パロディ宗教、ドラッグ・カルチャー等々と多岐にわたります。
これらが何名かの人物を通して、それぞれ独立した物語として展開しながらも、全体としては全ての物語が一つに繋がっており、それは「現代」に接続している……というような構成になっています。内容としてはこんな感じ。

■ロバート・アントン・ウィルソン特集
■イッピー特集
■スティーブ・ジャクソン・ゲームズ特集
■シェパード・フェアリー特集
■『サブジーニアス教会』特集
■『ディスコルディア教会』特集

上記が2022年10月に発売した『HYPERTEXT Vol.0(創刊準備号)』に掲載された内容です。これに加筆と修正を加えたものに、さらに以下の追加を予定しています。

■ティモシー・リアリー特集
■年表

……クラファンの達成状況によってはもうちょっと何か。
なので、このクラファンを拡散して頂けると内容が濃くなる可能性があります(笑)。

これらはそれぞれが独立した記事として構成されますが、全体として、それぞれがたがいに微妙な接点を持ちながら、すべての事柄がひとつにつながっています。1つの記事に対する、他の何かがその余談。その何かの余談が他の何か。そんな感じで、いわば「全部がメインストーリーで、同時に全部がスピンオフ」です。詳細は最後にまとめましたので、ご覧いただければ幸いです。



●仕様

・100ページ強(増える可能性あり)
・A4サイズ
・カラー
・15万文字くらいですが、エピソード単体としては1万5千字〜2万5千字程度で、図や写真なども入ってくるので、案外読みやすいと思います。



●プロジェクト立ち上げの背景

元々はインターネットで、とりわけ「個人サイト」という体裁にこだわって物を書いていました。それにあたって当初考えていたことは、音楽や映画、芸術、その他のカルチャーが、あらゆるジャンルを跨いで「相互に関わりながら」語られる、というものでした。
そしてそれはもしかすると、「インターネット」がもたらした画期的な機能、すなわち「ハイパーリンク」によって実現しうるのではないかそんなことを考えていました。つまり、「リンク」を辿りながら、あらゆる事柄に縦横無尽にぶっ飛びまくりながら展開する、というような構想のものです。

いくつかの記事は結構な反響を引き起こし、THA BLUE HERBやstillichimiyaなどの、日本のヒップホップに関するテキストなどは、かなり読んでもらえた上、対象となるアーティストを含む複数の関係者の方にも紹介していただきました。
実はこれ、自分の中では、それぞれの記事が内容・時系列的に相互に関連しているもので、レイヤー的に重ね合わせながら読んで欲しいな、みたいな気持ちがありました。

ところが、どうにもそれはやはり、スマートフォンベースの現代でそれはちょっと難しいなとなりまして。そこで一周回って、「じゃあ物理的に  "一冊" だったらいいんじゃないの?」と思って作り始めたのがZINEでした。名前は、僕がやりたかった「それ」の実現を託して、「HYPERTEXT」としました。

自分としてはこの試みは成功で、Vol.0を読んだある人からは「ジェットコースターみたいだった」という評価をいただきました。まさしく、それがやりたかったのです。

2022年は札幌のみでの販売でしたが、そのうちの一部は僕の予想をも超えて、日本の各地に届いていたようで、そんな中に前出のばるぼらさんや動物豆知識botさんがいました。



●現在の準備状況

テキスト自体はおおよそ昨年の時点で完成しておりましたので、これに加筆修正を加えてゆく段となっています。後述しますが、前回(創刊準備号)掲載の記事に関連しつつも独立した、別個の記事を製作中です。

「ティモシー・リアリー特集」については確定しておりますが、ちょっと他はまだどうなるかわかりません。資料整理等はできているので、あとはこのクラファンでどの程度ご支援をいただけるかによって割く時間が決まるかな……という感じです。あと、支援額によって時期が早まったりということもありそうなので、その辺もご理解いただければと存じます。



●リターンについて

HYPERTEXT Vol.1を送付いたします。

書店卸向けに複数冊のリターンも用意しております。



●スケジュール

2023年10月末 クラウドファンディング終了
2023年11月末 校了・データ完成
2024月12月中頃 印刷完了
以降、順次リターン発送

※予定が前後する可能性がありますことをご了承ください。



●資金の使い道

印刷費:約300,000円
製作費:約201,000円
Campfire手数料:約99,000円


●掲載される内容

■ロバート・アントン・ウィルソン特集

元『プレイボーイ』誌の編集者で、のちに『イルミナティ』というベストセラー小説を(共著で)発表したことで知られる作家、ロバート・アントン・ウィルソン。とあるライターは彼をこう評します。「イルミナティが映画『トゥームレイダー』の悪役になったのは、ウィルソンとシェイの影響だ」。

いまや、世界を牛耳る謎の組織として誰もが知る――そして誰もがそれを漠然としか認識していない――、「イルミナティ」なる存在を、西洋史の陰謀史観の片隅から「ポップカルチャー」の舞台に引っ張り上げたのが彼でした。おそらく彼の存在がなければ、マーベルコミックスがスーパーヒーローの秘密結社の名に『イルミナティ』を関することも、ラッパーの2pacのリリックにイルミナティが登場することも、あるゲーム会社が、俗に『イルミナティカード』などと呼ばれるカードゲームを作り出すこともなかったでしょう。

「イルミナティ」がポップカルチャーに侵食する、それとあわせて、「イルミナティ」をめぐる陰謀論も増えていきました。そしてそれは、陰謀論がすっかりひとつの社会問題となってしまった現代に接続します。彼の作り出した物語はその後の陰謀論の「雛形」になってゆきました。

しかしウィルソンは、よくある陰謀論者のように「本気でそれを信じている」わけではありませんでした。かと言って、単純に「すべてがでっち上げだ」と開き直っているわけでもなかった。そこにこそ彼の皮肉と諧謔がありましたが、その含意は誤解されたまま、彼の死後もなお、「陰謀」のみが再生産され続け、それは現代に接続します。このZINEでは、そんなウィルソンの足跡を取り扱っています。


■イッピー特集

1960年代アメリカのカウンターカルチャーを、束の間、圧倒的な存在感と影響力を持って駆け抜けた集団、「イッピー」――Young International Party。「Party」は、「大騒ぎ」の意味に加えて「党」の意味でもありました。彼らは政治活動集団でした。

イッピーが特殊だったのは、彼らが「メディアの話題になること」にきわめて自覚的であったという点です。政治運動は主張である。しかし注目を浴びない政治運動には力がない。彼らはその点をよく理解していました。だから、彼らの行なった政治運動は、どれもこれもメディアがほうっておかないほどに過激で、同時に、爆笑を誘うものでした。

ある時は「豚」を大統領候補に擁立すると宣言し、シカゴの街中に豚を連れ込みました。会見の場でイッピーの一人はこう言い放ちます。「彼をホワイトハウスに入れられないようなら、朝食に入れたらいいし」

ある時はウォール街に潜り込み、証券取引所に金をばらまき、「これがここで行われていることのすべてだ」と叫びました。そしてある時は、世界の戦争の総本部たるアメリカ国防総省――ペンタゴンを、呪術によって「浮かせる」儀式を執り行いました。

幾度も逮捕と投獄と裁判を受けつつ、圧倒的な閃光を放ちながら、彼らは束の間の時代を駆け抜けました。アビー・ホフマンとジェリー・ルービンという二人の天才的な扇動家を中心とするこの集団の活動と、やがて発生する内ゲバ、終焉、そして現在への影響……などなどを書きました。


■スティーブ・ジャクソン・ゲームズ特集

先の、「ロバート・アントン・ウィルソンが『ポップカルチャー化』させたイルミナティ」のひとつと言えましょう。ウィルソンとシェイの小説『イルミナティ』に直接的な影響を受け、80年代初頭に生まれた傑作カードゲームが『イルミナティ:陰謀のゲーム』でした。これは元々、すでにある「陰謀論」をパロディ化して、カードゲームのシステムに落とし込んだ作品でしたが、2001年9月11日の世界貿易センタービルの事件をきっかけに、このカード自体がひとつの「陰謀論」と化してゆくことになります。いわく、「911以前に作られたカードに、なぜこの事件が予言されているのか」

以降、このカードゲームは(そのゲームとしてのルールすら知らない人々によって)「予言のカード」などとまつりあげられ、「世界のあらゆる事件が全てこのカードに予言されていた」などという、オカルティックな存在として扱われることに。それはやがて、遠く太平洋をはさんだ日本においても、ある凶悪事件に接続します。

……という、この記事は以前サイトの方で出したやつなんですが、これに注釈と加筆を加えたものが掲載されます。


■シェパード・フェアリー特集

ストリート・アーティスト、シェパード・フェアリー。1980年代に活動を開始した彼のアイコンが「OBEY GIANT」でした。

アートワークに記された文字は「Andre the Giant Has a POSSE(アンドレ・ザ・ジャイアントは軍団を組織している)」。当然ながら、プロレスラーのアンドレ・ザ・ジャイアントが私兵を組織しているわけがありません。これはフェアリーの仲間内でのジョークでした。

フェアリーが友人にステンシルのやり方を教えた時のことでした。フェアリーは、素材となる適当な写真を探して新聞をめくりましたが、そこにたまたま掲載されていたのがアンドレ・ザ・ジャイアントの写真でした。フェアリーはその写真を友人に勧めましたが、友人は「そんなの嫌だよ」と拒否します。しかし、フェアリー自身はこのアイディアを気に入りました。

のちにフェアリーは、アンドレ・ザ・ジャイアントとのこの出会いを「幸福な事故(happy accident)」と呼ぶようになります。そして、アンドレ・ザ・ジャイアントをモチーフに「偶発的に」生まれたこの作品を、彼はアメリカ中、もとい、世界中の壁という壁に貼りまくりました。「アンドレは軍団を組織している」という奇妙なアートワークと共に掲げられたメッセージはやがて、おびただしい数のパロディを産み出すことになります。そしてどうやら、このメッセージを半信半疑ながら「信じた」人もいたようです。

彼の行為は結果的に、彼をアメリカで最も商業的に成功したストリート・アーティストの一人に押し上げます。そんな話を、フェアリーの歩みと共に振り返る記事です。

陰謀論とインターネットはあまりに相性が良すぎることが実証されてしまった昨今ですが、インターネット以前の時代、「壁」はそれに似た機能を有していたと言えます。それがすなわち、「不特定多数の人に向けたコミュニケーション」でした。思うに、そこにこそグラフィティの本質はあります。そんなお話。


■『サブジーニアス教会』特集

「ボブ・ドブズ」という男を崇める、ある「宗教」に関する物語。パイプを咥えたその男の顔は、世界中の壁に紛れ込んでいました。行く先々でふと壁に目をやると、遠く離れた地で目にしたのと同じ男の顔がある。これは一体なんのメッセージなのだろう? そしてこれは、一体どれほど大規模な組織なのだろう?

「壁に絵を描いたり貼ったりするくらい、人目を盗んでどうにでもなるだろう」。多くの人がそう考えるでしょう――例えばフェアリーがそうしたように。では、この事実をどう説明したらいいでしょうか? Linuxソフトの文字セットにも、『スポンジ・ボブ』のワンシーンにも、子供番組『ピーウィー・ハーマンズ・プレイハウス』のセットにも彼の姿がある。いや、『パワーパフ・ガールズ』に登場するユートニム博士の姿は、全く彼そのものじゃないか!

――パイプを加えた笑顔の男の顔は、古い電話帳から切り取られた、単なる「挿絵」でした。フィロ・ドラモンドとアイヴァン・スタング――皮肉屋で、筋金入りの無神論者であったテキサスの二人組は、この男の絵を「預言者」に据え、 “パロディ宗教” 『サブジーニアス教会』をでっち上げました。

この男「ボブ・ドブス」には、「怒れる狂った宇宙人――神から預言を託された」という設定が与えられています。

彼らはこう考えていました。キリスト教徒は、もとい、あらゆる一神教徒は、本質的には自分たちの存在を否定し得ないはずだ。彼らは誰一人ヤハウェを見たことがない。神の存在を証明できた者は誰一人としていない。にもかかわらずそこに「信仰」はある。ならば、全知全能の神が「イカれた宇宙人でない」ことは証明のしようがないし、それを我々が信仰することは、――それがどんなに馬鹿げた儀式であっても――否定しようがないはずだ、と。

彼らは手で喉を震わせながら「神」、すなわち宇宙人とのコンタクトをとる儀式を行ったり、某宗教団体にならって「集団結婚式」を執り行ったりしました。――もっともこの「集団」は、カップル1組に対して牧師が数百人いるというものでしたが。

彼らの、バカバカしくも、カルト団体を痛烈にこき下ろす活動は、たちまちにサブカルチャー気質な皮肉屋たちの共感を呼び、「ボブ・ドブス」の肖像は「わかる人にはわかるモノ」としての――まさしく「不特定多数のコミュニケーション」としての――性格を帯び始めます。そしてその中にLinuxソフトの開発者や、テレビ番組の制作スタッフなどが紛れていました。そしてそれはもちろん、『サブジーニアス教会』の伝説を強化しました。

サブジーニアス教会は、「ポップカルチャーとしての陰謀論」における、もっともポップな到達点であると言っていいでしょう。そんな同団体の発生から、彼らがやがて辿ることになる「笑えない」末路までをご紹介します。


■『ディスコルディア教会』特集

ギリシャ神話における女神エリスを崇拝する「宗教」、ディスコルディア教会。彼らが作った“聖典”、『プリンキピア・ディスコルディア』には、こんな一文が掲載されています。

ディスコルディア協会は、「不和」という共通の絆を持つ人々の集団である。もっとも、すべての人は不和の体現者である(そして同時にすべての人は秩序の体現者であり、その二つは永遠に対立し、それ自体が不和である)。番人が不和の体現者であるが、ディスコルディア教会は限られた者のみから成り立つものであって、誰もがその構成員というわけではない。

ケリー・ソーンリーとグレッグ・ヒルという二人の人物によって、1960年代初頭に作り出された「ディスコルディア教会」は、『サブジーニアス教会』の先輩筋にあたるパロディ宗教です。

彼らは「マインドファック作戦」という活動を通じて、あらゆるメディアや団体に誤情報を送りつけました――「バヴァリアン・イルミナティ」と書かれた便箋を使って。彼らの活動に共鳴し、協力したのが、先のロバート・アントン・ウィルソンでした。

と、ここまでは「(悪質な)悪戯」の話。ところが、ディスコルディア立ち上げの一人、ケリー・ソーンリーは、「偶然の連続で」ある事件の容疑者となってしまいます。彼らがでっち上げた「混沌の女神」への信仰は、やがて実態を伴った混沌の渦中へ彼らを巻き込んで行くことに。これは混沌の女神の悪戯だったのか? 果たして本当に――これは「パロディ」と言えるのか? 信仰とは、陰謀論とは、人間の精神とは。世にも数奇な彼らを巡る、そんなお話です。


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と、ここまでが2022年10月に発売した『HYPERTEXT Vol.0(創刊準備号)』に掲載された内容です。これに加筆と修正を加えたものに、さらに以下のテキスト掲載を予定しています。


■ティモシー・リアリー特集←NEW!

60年代におけるLSDの伝道師、ティモシー・リアリー。ハーバード大学講師という華麗なるキャリアから一転、時の若者にLSDを広め、逮捕と投獄、そして脱獄を繰り返し、80年代にはコンピューターの分野に返り咲いた、稀代の扇動家の生涯を辿ります。1964年、ハーバードを追われた彼にインタビューを取り付けたのが、当時、雑誌編集者であったロバート・アントン・ウィルソンでした。そんなお話とも繋がってきます。


■年表

関連する項目の細かな年表の付録を予定しています。
「1957年5月13日 LIFE誌に『SEEKING THE MAGIC MUSHROOM(マジックマッシュルームを探して)』という記事が掲載される」「1973年8月28日 アビー・ホフマン、コカインの販売と流通を企図した容疑で逮捕」などなど、微に入り細に入り作っています。本文とあわせて年表を読むと面白いです。


<募集方式について>
本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございません。未達成となった場合、支援額は全額返金されます。

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