自己紹介

 私は20代のころは、版画も作ってはいましたが、基本的にはコンセプチャルな仕事をしていました。テーマは移ろいいくものの代表として「水」。様々な方向から水をテーマにしたインスタレーションを行ってきました。

 20代の後半、限られた期間、限られた画廊、美術館でしか見る(体験)ことができない形式に疑問を持つようになり同様のコンセプトを版画で表現できないものかと試作を続けてきました。

 30歳ころ「Water in the Box」シリーズでこの問題を私なりに解決することができました。

 版画は絵です。手で描かなければいけない部分は必ずあります。私の場合は水を表現するための装置として「葉」を使いました。日本人なら誰でもが思い浮かべるような葉、桜の葉をモチーフにしました。必要に迫られてデッサンをします。すると葉自体の豊さ美しさにやがて興味が移っていくことになりました。

 そうなると葉は色づいた紅葉に変わり、すぐに花に行き着くことになりました。

 この時期に文化庁派遣の在外研修員に選ばれて、アメリカ、ベルギーに半年ずつ留学をする機会を得ました。それまではアメリカの現代美術に洗脳されていた部分は、インスタレーションをやめて版画に移ってからも正直引きずっていました。しかし海外で生活してみて、アメリカの現代美術は、たくさんある美術の一部にすぎないということと、日本人がそれに迎合して作品を作ることの無意味さを痛感することになりました。

 しかし私がコンセプチュアル・アートで得た経験、とくに「うつろい」を表現するという方向は生かしつつ、日本人ならではの表現はどうしたらできるかが、帰国後の新しい課題になりました。その答えが、見る方向や時間によって見え方の違う金箔をバックに使うという方法です。

 花を描こうとすると、その花が美しく見えるポジションを考えます。そうやって描いていると花自体が物語を語っているように思えるようになりました。とくに花を女性に(時には自分に)見立てて花を選び、描くことになりました。30代も後半のことです。もちろん版画も続けていましたが、版画にすることは考えずに季節の花を200枚以上デッサンしました。その後の制作におおいに助けになったことは言うまでもありませんが、デッサン自体がいい経験だったと思います。

 デッサンと、それを元にした版画を作り続けているうちに、物語にはもっと可能性があるのではないかと思うようになりました。物語を見つけ出すのではなく、物語からインスピレーションを得る、という一歩進んだ試みです。

 考えてみればクールベ以前のヨーロッパの絵画は、肖像画や生活を彩る静物画などを除けば、物語をモチーフにしているものが多い。とくに理想的な人間の美しさを表現するためにはギリシャ神話を、人間を掘り下げるためには聖書を。

 では日本では、詩作、和歌や俳句にインスパイヤーされたものが多いですが、物語といえば源氏物語です。源氏絵という一つのジャンルを作っているほど、江戸時代まではたくさんありました。明治以降は、新政府の平安文化の否定、なかでも源氏物語を否定する空気からほとんど作られなくなっていました。戦後に源氏物語が文豪たちによって現代語訳が進められるのに合わせて何人かの画家、版画家が源氏絵に挑戦するようになりました。

 しかし、私が見るところ、すべての章に合わせて54枚を描き切った画家はいないようです。そこで私は、章だけあって本文のない「幻」を含めて全55帖を作ることを決めました。ここでは花だけでなく以前から挑戦したいと思っていた人体もモチーフにしました。完成までに10年を要してしまったのですが、我ながら充実した仕事になったと思っています。それは自分と花だけでは決して思いもつかないような表現を物語が求めてくるからです。そのために新しい実験もいくつも行いましたし、一旦完成したと思う作品に対して物語がダメ出しをして、作り直した作品も多々(3分の1ほども)あります。

 源氏が終わった後も数点は花と金箔の試みは続けましたが、私の興味は次第にメゾチントに移りました。それには二つの理由があります。一つは、具体的なもので老後も体力を必要とする銅版画から水墨を使った表現に移動したいという思い。もう一つは、物語です。物語は、作品をあくまで受け手に届けるための目的であり、表現を豊かにするものです。老後には、もはや受け手は意識しないのでもいいのではないか。そのため自分と作品の対話に絞って作品を作りたい。その目的のためには絵画という直接的な表現が相応しいと考えたのです。メゾチントは、水墨の表現にたどり着くための経過的なものだと思いました。

 が、メゾチントはそれほど甘いものではなく、それなりに私が納得できるレベルのものはまだ出来上がっていません。当然続けなければ答えは出ないはずです。

 また直接的な表現を考えた時、銅版画でも直接的な方法があることにも気づきました。ドライポイントです。メゾチントに至るまで、私の版画作品は1点仕上げるのに、集中してもひと月などという長い時間を必要とするものでした。このドライポイントでは版の大きさも小さく、頑張れば週に1点は可能なものだと思います。こちらは百人一首です。源氏と百人一首の両方を制覇できれば日本人アーティストとしては(自己)満足できるものになると思います。

 また同時に水墨を使った表現の実験も行っています。

癌をきっかけに、残された時間が長いのか短いのかわからない状態ですが、短くてもできるだけやり残した感が残らないよう、やれるものには手をつけておこうという思いです。

宮山広明 MIYAYAMA, Hiroaki

1955      東京生まれ 

1979      筑波大学大学院修士課程修了

1989-90   文化庁派遣芸術家在外研修員(アメリカ,ベルギー) 

 

マスター・クラス、ワークショップ

1997      国立台湾芸術学院(台北、台湾) 

1999      フランス・マセレール版画センター(カステルレー、ベルギー)

2008      クライペダ市文化センター(クライペダ、リトアニア)

2015      国立台湾芸術大学(台北、台湾)

2016  華梵大學(台北、台湾)

 

企画

2012      日本ルーム、ノヴォシビルスク・グラフィック・トリエンナーレ(ノヴォシビルスク、ロシア)

2013      日本ルーム、光州アジア現代版画交流展(光州、韓国)

2014      日本芸術フェスティヴァル(ホジチェ、チェコ)

2014      日本現代版画展、エカテリンブルグ国立美術館(エカテリンブルグ、ロシア)

2022    「ウクライナの人々と友たち」展、流通経済大学(松戸市、日本)


このプロジェクトで実現したいこと

今回の企画では、私の人生後半の10年間を費やした集大成として、源氏の55点と、メゾチント、ドライポイント、それに水墨を使った実験的な作品を何点か展示したいと考えています。これほど大規模な展示は日本では初めてのことです。ぜひ皆様のお力を貸していただきたいと願います。

プロジェクト立ち上げの背景

 私は約30年前に「源氏物語」のシリーズを始めた時には受け手を強く意識していました。「源氏物語」を共通の教養として持っている人に私のイメージ、解釈をしんでもらいたい。物語を知らない人でも、何か物語が喚起される作品を目指していました。60歳を迎える頃、自分のためだけに作品を作ってもいいのではないかと思うようになりました。シューベルトは最晩年、聴く人は全く想定できない中で、自分自身が散歩をできる森をつくりました。ソナタの21番です。何度散歩をしても新しい発見があるような豊な森です。私の作品の中を目で散歩ができる、そういうふうに見ていただければ幸いです。

現在の準備状況

源氏物語の作品に合った額を選んでいるところです。新作のメゾチントは制作中です。展示の成功を後押ししてくれるように、知り合いのピアニストやヴァイオリニスト、ソプラノ歌手の人たちがイベントを計画しています。

リターンについて

  3000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」

  3000円 +手数料(17%+税)

・図録「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」

  5000円 +手数料(17%+税)

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品 

10000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」(サイン入り)

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品 

10000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」(サイン入り)

・宮山広明 DVD「源氏物語・プラス」*展覧会終了後の編集となります。

30000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」(サイン入り)

・小作品(シート)¥20000前後

30000円 +手数料(17%+税)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品

・宮山広明 DVD「源氏物語・プラス」*展覧会終了後の編集となります。

50000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」(サイン入り)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥20000前後

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品

50000円 +手数料(17%+税)

・図録「詩歌の花」(サイン入り)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥20000前後

・宮山広明 DVD「源氏物語・プラス」 *展覧会終了後の編集となります。

100000円 +手数料(17%+税)

・図録 「詩歌の花」(サイン入り) 

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥50000前後

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品 

100000円 +手数料(17%+税)

・図録 「詩歌の花」 (サイン入り)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥50000前後

・宮山広明 DVD「源氏物語・プラス」 *展覧会終了後の編集となります。

150000円 +手数料(17%+税)

 ・図録 「詩歌の花」 (サイン入り)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥80000前後

・小作品(シート)¥7000   7.5×10cm メゾチント作品

150000円 +手数料(17%+税)

・図録 「詩歌の花」 (サイン入り)

・図録 「In the Garden of Genji 花見たて源氏物語」(サイン入り)

・作品(シート)¥80000前後

・宮山広明 DVD「源氏物語・プラス」*展覧会終了後の編集となります。

スケジュール
3月 広報活動_プレスリリース作成
       関係各所へ送付
4月末 クラウドファンディング終了
6月 リターン発送


資金の使い道

展覧会の運営や作品の保存・展示に活用、展示記録、資料作成などに使用いたします。
設備費:45万円
人件費:20万円
広報費:20万円
手数料(17%+税):16万円


最後に

展覧会では、宮山氏の10年にわたる創作活動の軌跡を辿り、宮山広明「源氏物語」作品を一堂に集めた展示です。「源氏物語」では伝統的な金箔地に花という装飾的な物語表現で各帖に合わせた全55点を展示予定。新たに始めた「百人一首」は和歌という短い形式に合わせ、即興的なドライポイント作品を数点。メゾチント作品では水墨画への道を探ります。彼の独創的な表現と情熱の後押しと、芸術の可能性を広げるために、老境を迎え病魔と闘いながらも自身のテーマを追求する宮山氏の芸術への情熱と創造性を支える一助をお願い申し上げます。(推薦団体:FEI ART MUSEUM YOKOHAMA)

<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

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