3年前、長野県松本市で開業した本屋<栞日sioribi>が、この夏、数軒先への移転を伴うリニューアルオープンに向けて、コンテンツを再編中。その一環として、旧店舗を中長期滞在向けのホテルにしたい、と考えています。

プロジェクト本文

こんにちは。〈栞日sioribi〉店主の菊地徹(きくち・とおる)と申します。
この度は、数あるプロジェクトの中から、このページに目を留めていただき、ありがとうございます。

[ 栞日は、本屋です。]

栞日は、2013年8月に、長野県松本市で開業した本屋です。
松本駅東口からまっすぐ伸びる駅前大通り沿いにあって、駅から徒歩10分ほどの位置です。同じ道をもう少し進むと「まつもと市民芸術館」や「松本市美術館」があって、この道の突き当たりには「クラフトフェアまつもと」の会場にもなる「あがたの森公園」があります。

冒頭で「本屋」を名乗りましたが、栞日が何者かをひとことで説明するのは難しく、以下、少しお付き合いいただけたら、幸いです。

まず、本屋としては(古本屋ではなく)新刊書店なのですが、取り扱っている書籍の中心は、一般的な出版物の流通経路には乗りにくい、個人もしくは数人のチームが製作している印刷物で、「リトルプレス/ZINE」と呼ばれるジャンルです。詳しくは終盤に綴りますが、そもそも栞日は、この「リトルプレス/ZINE」のカルチャーに、日頃から触れられる場所を松本の街につくりたくて始めた店です。

 

次に、栞日は、その開業当初から、喫茶を併設しています。珈琲とトースト、ドーナツ、焼菓子が中心のシンプルなメニュー構成ですが、多くの人にとって馴染みの薄い(前述したような)本たちの文化を街に紹介しようと試みるとき、その入口を本そのものに絞るより、喫茶が目的で扉を開けてみたら本も視界に入ってきた、というルートもあった方が、可能性が広がるように思えて、はじめから珈琲を淹れてきました。

そして、開業から数ヶ月経ったころ、何人かのお客さまから「ここで展示/演奏をしてみたい」とお声掛けいただき、試み程度に始めてみたのが、ギャラリー/イベントスペースとしての空間利用です。幸い、初めての展示/演奏会のあとも、さまざまなアーティストの皆さまとのご縁に恵まれ、いまや企画展やイベントは、栞日にとって大切な要素のひとつです。

以上、本屋/喫茶/ギャラリー/イベントスペースの要素が詰まった栞日は、これまで、通りに面した4階建の小さなビルを1棟借りして営んできました。

いま「これまで」と記したのは、この度、栞日が移転するためです。

[ この夏、移転します。]

現在、栞日は、移転を伴うリニューアルオープンに向けて、一時休業中です。
移転先は、同じ通りの5軒先。これまでの店舗から徒歩数十秒の距離です。
7月上旬の営業再開に向けて、目下、移転先の改装が進んでいますが、今回の移転のきっかけは、1台の機械でした。

機械は「プラテンT型」という活版印刷機です。ドイツの老舗印刷機メーカー「ハイデルベルグ社」が西ドイツ時代に製造していたもので、現在は生産されていません。この機械を使って東東京で印刷工をなさっていた職人さんが、事業終了に伴い、愛機を引き継ぐ先を探している、という話を、以前、栞日で活版印刷を用いて製作した作品の展示販売をしてくださった作家さんが、教えてくださったのです。

普段から取り扱っている「リトルプレス/ZINE」の中には、そのデザインの一環として活版印刷の技術を活かした作品も多く、その独特な風合いや、手仕事としての美しさには、以前から魅了されていたので、ぜひ引き取って松本の街で稼動させたい、と意気込んだのですが、ある程度大きく、そして非常に重い機械なので、当時は適切な設置場所が頭に浮かばず、いずれ空間が見つかったら、とお返事するに留まりました。

と、それから暫くも立たないうちに、空き物件としての情報が大家さん自らによってもたらされたのが、今回の移転先でした。使い手が見つからなければ更地にして駐車場にする、というお話を伺い、ひとまず内覧させていただいたとき、ほぼ心は決まっていました。今回の建物は2階建てなのですが、1フロアあたりの床面積が広く、印刷機を置くスペースも充分に確保できそうだったのです。

 

▲ 1Fスケッチ drawn by 東野唯史(medicala

▲ 2Fスケッチ drawn by 東野唯史(medicala

かくして、これまでの店舗で展開してきた要素(本屋/喫茶/ギャラリー/イベントスペース)をすべて移した上で、活版印刷スタジオとしての機能も加え、栞日のコンテンツを再編集するという、今回のリニューアル全体の構想が定まったのです。

[ 旧店舗を、ホテルにします。]

移転に伴い、開業以来、約3年間お世話になったペンシルビルは、いったん空になりますが、必要な改装を施して、ホテルにできたら、と考えています。「ホテル」といっても、おそらく一般的なイメージとは異なる、やや風変わりな宿泊施設です。

 

まず、1回1組限定です。
1名もしくは2名を基本に、小さなお子さま連れで最大4名を想定しています。
そして、ご予約は、原則1週間以上でお願いします。

▲ フロアイメージ drawn by みやぎちか(山鳩舎

ご宿泊のお客さまには、2階から上の3フロアが貸し切りになります。2階にはキッチンとユニットバスがあります。3階はフリースペース(その意図は後述します)。4階をベッドルームにする予定です。お察しの通りこのホテルは、中長期滞在向けの宿です。

松本での暮らしを体験しながら、この街への移住を検討したい方や、働く環境を変えてリフレッシュしたい方に、ご利用いただくことを主に考えています。滞在中も創作活動に取り組みたいクリエイターやクラフトマンの皆さまが、集中して仕事に取り組める環境を整えるべく、3階はアトリエとして広く空けております。

▲ 松本MAP drawn by みやぎちか(山鳩舎

朝起きて、5軒先の栞日でモーニングを食べ、レンタサイクル(移転先で始めます)で街へ。散策を愉しんだら、公園でひとやすみ。近所の八百屋で旬の地物を買い求め、宿に戻って料理するもよし、再び街に出てランチを満喫するもよし。仕事に没頭したい午後は、3階のアトリエへ。隣町までドライブしてみてもいいですね。夕食の候補は、枚挙に暇がありません。山国・信州の大地の恵みに舌鼓を。ときには夜の街に繰り出して、バーでリラックスしてみたり、銭湯文化が残る城下町で、ゆったり湯船に浸かってみたり。あとはお部屋でゆっくりとお休みください。

たとえば、そんな数週間をご提案できたら、と考えています。

自らのクリエティビティを発揮する地の候補として、信州・松本の名前が挙がっている方にとって、判断材料を増やす(もしくは不安材料を減らす)きっかけの宿になれたら、この上なく幸せです。

今回のプロジェクトで皆さまにお願いしたいことは、このホテルのオープンに向けて必要となる諸経費のサポートです。

1週間以上、ひとつの建物に滞在していただくからには、ひと組ひと組のゲストにとって、できる限り快適な空間をご用意したい、と考えております。

具体的には、ご提供いただいた資金は、以下の内容に使用させていただく予定です。

▼ 改装作業全般
▼ 自動火災報知設備、避難梯子、消火器の購入、設置
▼ 建物全体ならびに各フロアの、出入口の鍵の新設
▼ 設備や家具の購入、造作(ベッド、ソファ、デスクなど)
▼ 備品、アメニティの購入
▼ 台所道具、調味料などの購入 etc. 

どうぞ、よろしくお願いいたします。

[ 街の文化を、耕します。]

ここまで、冗長な駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
最後に、少しだけ、店主の話と、松本という街の話を添えさせていただけたら、と存じます。

私は、静岡県静岡市の生まれ育ちで、高校卒業後、大学進学のため、茨城県つくば市に転居しました。約5年半、その街にお世話になったのですが、その大半をコーヒーショップでのアルバイトに費やしました。そこで接客業の醍醐味を覚え、いつか自分なりに、こんな場所をつくろう、という夢の大枠が定まりました。卒業後、サービスについて深く学ぶため、ホテル・旅館業への就職を志します。結果的に、採用してくださった旅館が、長野県松本市にあったため、この街に移り住んで参りました。その旅館で、妻となるパートナーと出会い、ふたりで店を開くことを目指し始め、いったん私が単身で軽井沢のベーカリーに転職します。家族経営の規模感に触れておきたい、と考えた末のことでした。1年間、軽井沢で過ごしましたが、松本の街の心地よさが頭から離れず、結局、舞い戻り、栞日を開けたのが、2013年の夏です。

「自分が暮らしたい街がみつかったら、その街に(いまはないけれど)あったら(自分も、自分の周りの人たちも、きっと)愉しくなるような場所をつくろう」というのが、私の夢の根幹だったので、そもそも土地にこだわりはありませんでした。就職の関係で、偶然たどり着いた松本は、暮らせば暮らすほど、日常が豊かな街でした。

 

街から望む雄大な北アルプスの山並み。自転車や徒歩での移動が愉しいコンパクトな中心街のサイズ感。市街地から車を10分も走らせれば、田畑や草木の風景が広がる、街と自然との抜群の距離感。民藝、クラフト、音楽、演劇、現代アート、といった多様で肥沃な文化的素地。そして、程よくドライで実は情に厚い、ユーモア触れる個人店主たち、などなど。その魅力を挙げれば切りがありませんが、何とも風通しがよく、居心地のよい街なのです。

私は、松本の文化的な独自性を、より一層深めたら、日本に唯一無二の、世界に誇るクリエイティブな街になる、と信じています。だからこそ、まだ余り気づかれていない街の文化的な可能性を掘り起こし、耕してみたいと考えています。
そのために、まず、「リトルプレス/ZINE」を主軸に据えて、本屋を始めました。松本は、その文化度の高さの割に、本屋の多様性がいま一歩だったので、独立系出版物を中心に扱う書店ができたら、面白いことが始まるのではないか、と感じていたためです。
本屋を始めてから、さまざまな方とお会いして、お話を伺う中で、この街には外からの刺激(新しい価値観、視点、世界観)や、その刺激をもたらしてくれるキーパーソンたちが、もっともっと必要だと感じることが多くなりました。そこで今回、移住の一歩手前の「仮暮らし」を試せるような、ホテルをつくってみたいのです。

日本のあちらこちらで、古くて美しい家屋や商店が取り壊され、駐車場になったり、全国チェーン店や大型ショッピング施設が忽然と現れたりして、気づいたら同じ風景の街が増えています。こんな時代だからこそ、個性が輝きを放つ街が点在し続けることは、心豊かに暮らしたい個人の選択肢を保つためにも、大切なことではないでしょうか。そして、この先の未来を明るく切り拓く術は、案外、そういった個人と個人の小さくとも確かな繋がりの中から、見出すほかないのではないか、とも感じています。私は、まず、縁あっていま住まわせていただいている、愛おしい松本の街への恩返しから、この挑戦を始められたら、と考えています。

皆さまのご支援、どうぞ、よろしくお願いいたします。

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