7/8から、フライトに使うエンジンの試験を行っています。
フライトに使うエンジンは、これまでの全ての知見を総動員した、いわばなつのロケット団の集大成と言うべきものです。
ベースとなっているのは、今年3月に100秒間の燃焼に成功した1トン級エンジンと、今年春から開発を進めている新型インジェクタです。
機体全体の設計に合わせて推力を1.2トンに増大させたにも関わらず、以前に活動報告で書いた冷却の実験をベースに耐熱性を保ったまま、材料や設計の変更によりエンジンは大幅に軽量化されました。
また、点火システムを軽量化するため、下記動画のように点火の瞬間だけをテストする実験なども6月に行っています。
ちなみにこの実験はLEAP4の打ち上げ4日前に行っています。約1か月総動員でLEAPの打ち上げを行っていた昨年のことや、1週間に1回の1トン級のエンジン実験に全員を投入していた半年前から考えると、開発のスピードアップを実感します。
ロケットの強度設計について
フライトに用いるエンジンは、当然軽くなければなりません。
放っておくとどんどん重力に引っ張られて落下してしまうロケットは、他の工業製品に比べると軽量化の要求がものすごく高いのです。
機械の部品は軽くすればするほど強度が下がるため、どうしてもロケットの部品は「壊れないギリギリのライン」で作る必要があります。
例えばホームセンターで購入する棚などには耐荷重が設定されていますが、実際には耐荷重ぴったりで壊れることはまずありません。
想定される荷重の何倍まで耐えられるように作るか、という「安全率」という言葉があります。世の中の多くの工業製品が5倍や10倍という安全率を採用しているのに対し、ロケットは安全率が2を切る部品の方が多いくらいです。
つまり、実際にかかる荷重が想定の2倍を超えると、ロケットは壊れてしまいます。
しかしロケットも車や飛行機や洗濯機と同じ工業製品ですから、「かかる荷重を出来るだけ正確に想定する」「強度をギリギリにする分、使える回数や時間を限定する」「新しいことをやる時は、荷重が想定を超えそうな部分だけ頑丈に作る」などによって、低い安全率をカバーしています。
出来るだけ正確に、のレベルは開発期間やコストによって変わります。私たちのような民間のベンチャーは、国家機関と同じレベルのコストや開発期間はかけられませんから(ロケットが完成する前に潰れてしまいます)、バランスのよい「ほどよい」レベルでものを作ることがひとつのキーになります。
量産体制に入った後は、これらに加え「出来たものの品質を保ちつつ、製造コストを下げる」という項目も入ってきます。
フライト用エンジンの実験
このように、色々な部分の余裕をギリギリに削らないと宇宙に行くエンジンは完成しないわけですが、7/8に燃やしたエンジンは今までの知見を元に「削れるところを削り切った」エンジンでした。
当然、今までの1トン超級エンジンの中で一番壊れやすいです。想定できることは全てしたつもりでしたが、それでも点火の瞬間はこれまで以上に緊張しました。
無事に燃焼終了した瞬間の安堵感と達成感は素晴らしいものでした。ロケットを作る仕事をしている人の何割かは、このギリギリを責めた上での達成感を、次の開発のモチベーションにしているのかもしれません。
もちろん打ち上げの時の達成感は、燃焼実験の比ではありません。
というわけで、クラウドファンディング期間も残り少なくなってきましたが、モモの打ち上げ成功でパトロンの皆さんとこの達成感を共有するため、今週も実験に励みます!
支援ありがとうございます&今後の開発も応援よろしくお願いします!