2018/12/03 11:28

「こどもスタートアップ塾」のジェネレーターを担っていただく 市川力さん。長年こどもたちの学びの場を作って来た市川さんの考える「学び」って何だろう?に迫ってみました。






Q1 これまでのお仕事や活動の内容を教えてください。



大学・大学院時代には、認知科学という学問に出会い、人の知識がいかにつくられるかに深い関心を持ち、研究しました。1990年、先輩に誘われて、日本人駐在員の子どもを対象とする学習塾を設立するためにアメリカに渡り、それから13年間、日本語と英語をともに習得するのに苦労する日本人の子どもたちの学びを支える仕事をしました。


帰国して一年後の2004年、偶然の出会いから、東京コミュニティスクール(東京都中野区)という小学生対象の全日制オルタナティブスクール(いわゆるフリースクール)の立ち上げに関わり、校長となりました。といっても、校長室にでんと座っているのではなく、子どもたちからは「おっちゃん」と呼ばれ、日々、子どもたちとともに探究する学びに明け暮れました。と同時に、大人と子どもが一緒になって学ぶあり方を研究してきました。

2017年3月に校長を退任し、現在は、「探研移動小学校」という屋号で、決まった場を持たず、いつでも、どこでも、大人と子どもが一緒になって探究する「野」の学び場が作れるということを提唱し、実践を始めました。その活動の一環として、NHK for School のウェブコンテンツ『メタモル探偵団』ならびに NHK Eテレ高校講座『総合的な探究の時間』 に「おっちゃん」として出演しながら監修もしています。

東京コミュニティスクール時代。子ども達の表情に注目! 

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Q2 こどもの頃はどんなことに興味がありましたか?

絵を描くこととお話を作ることが両方好きで、わけのわからない空想絵本シリーズを作っていました。それを群馬に住む祖母に定期的に送って読んでもらったのを覚えています。

育った場所は八王子で、自然の野山がたくさん残っていながら、そこがどんどん宅地開発され、破壊されてゆく時期でしたので、友達と一緒に立ち入り禁止の場所に入り、日々探検という名の「抵抗運動(笑)」をしていました。自分たちが秘密任務を負っていて、敵に見つからないようにスパイ工作活動をしているというしょうもない遊びに熱中していたのです。

11歳。八王子の野山で探検に明け暮れる、イタズラ坊主全開の頃。 

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Q3 現在やっている探研移動小学校とはどんなものですか?


「探研」とは、自分が思いついたことを素直に「探索」し「研究」していくこと。「移動」とは、いつでも、どこでもそんな学びはできるということ。「小」学校とは、「小」人数のグループで、「小=ささいなこと」からスタートし、「小=ゆっくり」でも、しつこく追究し続ける。そんな学びを行うという意味です。

大人と子どもが一緒になって、好奇心の赴くまま、面白がり、表現し続けることが、大人にとっても、子どもにとっても深い学びを引き起こします。いつでも、どこでも、誰とでも、ともにたくらむ学びに没頭するのが探研移動小学校です。


Q4 こどもたちを取り巻く社会がこんな風になったらいいのに、と思うことはありますか?あればその内容を教えていただけませんか?

子どもたちが本来持つ感受性を生かす社会になったらいいですね。それは、変化することを「不安」ととらえずに「面白がる」感性を持つことで成し遂げられるでしょう。そんな感性を支えるのが好奇心。いつまでも好奇心を全開にして生きてゆく人たちが集まる社会にしてゆきたいですよね。そのためには、ゆったり、大らかな気持ちが社会にあふれていないといけません。

高校生となった卒業生と山梨のお寺で今考えていることやこれからのたくらみを自由に語り合う「すごすプロジェクト」の一コマ



Q5 「こどもスタートアップ塾」で開催いただく講座「学校かもしれない  ~学校を解体せよ」というタイトルは、元校長先生だった市川さんのどんな思いが込められているのか、気になる人も多いと思います。どんな講座にしたいか詳しく教えてください。

学校とは、本来、学びが起きる場所すべてを指すと私は考えています。なので、そもそも学校を文部科学省から認められた学びの場のみに限定するということ自体にずっと違和感がありました。もっと言うと、学校には教室があるとか、先生が教えるとか、学校の当たり前と思われていることを一つひとつ、本当にそうかな?とゼロベースで考えることが大事。それを私は「スクールフリー」と言ってきました。つまり、いわゆる「学校」に伴う常識にとらわれないということです。

今普通に学校と呼ばれている場所も学校かもしれないが、別にそこに縛られる必要はない。むしろ、すべての学びや教育を既存の学校に押しつけてしまっていることが、問題なのです。だから、安易に誰かのせいにするのではなく、どうしたらもっと面白くて、生き生きした学びの場をつくってゆけるか、自ら担い手になる覚悟で考える必要があるのです。

学校批判、他者任せとは正反対。子どもたちとともに、どんな学びを、どんな風にすると面白そうか、できる、できないとか、いい、悪いとかに縛られず、まずは存分にファンタジーの羽を広げて、大胆な学びの場を構想したいと思っています。