こんにちは、事務局の飯山です。今回は、12月1日に小田原商工会議所大ホールで開催された「小田原城天守閣特別展の講演会」のご報告です。定員200人がいっぱいという大盛況でした。
第1部の講師には黒田基樹さん。黒田さんは、駿河台大学教授で歴史研究者としてもたくさんの著書がありますその黒田さんの今日のテーマは「小田原北条氏百年の治世」
さまざまな話題を織り交ぜながらの歴史講義にひきつけられました。さすがNHK大河ドラマでも時代考証をしている経歴の持ち主だけに、大河ドラマ化を目指している北条五代に対する話がありました。大河ドラマの関係者が数年前に「北条早雲はない」と断言していたそうです。その理由は、北条氏の周囲にいる人物が一般に知られていないから、物語が作りにくい」ということだったとのこと。「でも、最近は様子が違いますよ、北条氏の周辺人物も知られ始めています」と語る黒田さん。その理由は「最近、北条氏が連載マンガの主人公になっているからです。マンガを通して多くの人が北条氏とその周辺人物を知るチャンスができていますから、関係者のみなさん、大河ドラマ化にむけてさらにがんばってください」と檄を飛ばしていただきました。
早雲から始まり、氏直までの五代の大名がどういう治世をしていたのかということを事細かに説明してくださいました。興味深かったのは「戦国大名の研究をリードしているのは、北条家の研究家」だということ。北条氏は戦国大名をよく表現しているのだそうです。それは100年もの長きにわたる統治の歴史があるからにほかなりません。ほかの大名で100年も続いたところがないのです。北条家の研究をすすめることで、戦国大名の研究が進展していくということになるのですから、黒田先生はまさに戦国時代研究の先鋒を走っていることになりますね。
去年、二代氏綱の新史料が出てきたそうです。内容も非常に興味深く現在はそれを紐解いているところとのことのでしたが「500年前の新たな史料を見つけた」という言葉に、歴史研究の奥深さと、500年という時間を越えたロマンのようなものさえ感じることができる講義でした。
続いて登場したのは、小田原城天守閣の諏訪間館長です。最近はテレビを初めとしたメディアにもたくさん登場し、すっかり有名人。講義も硬軟織り交ぜてとても楽しいものになりました。
諏訪間館長は、二代氏綱の話を中心に話しを進めていきました。黒田先生の文献の研究からのそれとは違い、発掘からわかったことの話が中心。現在と過去を比べる形になるところなど、非常に興味深い内容でした。現地を知る市民はより楽しめたのではないでしょうか。
研究を進めると今まで常識と思っていたことに対しても、認識が変わってくる。早雲を語る上で長い間語り継がれていた「火牛の計」にしても、江戸時代の創作であったように、後に創作されていた話というものが多く、真実を語りたいということが研究家の思いなのだという話しには力がこもっていました。
歴史の話はややもすると難解になってしまうこともありますが、諏訪間館長は親しみやすい話も随所に入れて飽きさせません。皆が知っている「勝って兜の緒を締めよ」という有名な言葉は、北条氏で代々家訓のように語り継がれていたものなのだ、という「へぇ〜」と思ってしまうことや、小柳ルミ子さんのデビュー曲「私の城下町」のジャケット写真は小田原城址公園内で撮られたもので「今撮影するとこんな感じですね」と、当時と同じ場所で同じポーズをした諏訪間館長の写真が投影されたときは、会場は爆笑。お茶目なところも披露していました。
そんな諏訪間館長も登場するテレビ番組が近々放映されます。それはNHK総合の「ヒストリア」。12月5日午後10時25分からの放送です。『戦国の扉はオレが開く 最新研究「北条早雲」』というタイトルです。お見逃しなく!
最後は、黒田さんと諏訪間館長の対談。お二人に小田原市の学芸員である佐々木さんが軽妙かつ自らの知識を披露しながらの司会。佐々木さんの司会っぷりが堂に入ったもので会場を盛り上げてくれました。
対談は佐々木さんの質問にお二人が答えるという形で進みました。
今、市が展開している「開府500事業」イベントの根源を揺るがす「開府500年は来年」という説を唱える黒田さんにその根拠を質問したり「早雲生誕の年は?」「今川氏と伊勢氏(北条氏)は、なぜうまくいかなくなったの?」「北条氏は近世大名?」などなど、濃密な意見交換が展開されました。
盛りだくさんの内容だった今回の講義を聞き、改めて「歴史はおもしろい」と感じることができました。
私は「改めて日本史を勉強しようかな」と思ったのですが、同じような思いを持った人もいらっしゃるかもしれません。でも、歴史の本って取っつきにくいからなぁと思ってる人、おすすめの本があります。
最近は歴史好きな芸人さんが本を著しています。これがおもしろいんです。さすがしゃべりのプロ。非常にわかりやすい、というか、笑いながら歴史が頭に入ってくるのですね。私が今読んでいるのは、房野史典さんが書いた「超現代語訳戦国時代」。日本史の裏話のようなものまであって、マンガを読んでいるような楽しさです。また、長谷川ヨシテルさんの「あの方を斬ったの・・・それがしです」」も読みましたが、これは歴史の裏にいた人物を取り上げたという視点の違いが楽しい歴史本。そうそう、このお二方は「北条早雲公顕彰500年事業」のイベントにもよく登場していただいています。だからというわけではありませんが、このお二方が書いた歴史本は楽しくて、わかりやすくておすすめです!
ずいぶんと長くなってしまいましたが、それだけおもしろかったということ。次回12月15日に小田原市民会館で開催される特別展講演会には、まだ席に余裕があります。先着順となっておりますので、ご興味のあるかたは、お問い合わせください。
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