ページをご覧いただいた皆さま、既に支援してくださった皆さま、ありがとうございます。「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」の日野です。
台風21号によって被害を受けた大阪の銭湯を支援するクラウドファンディングをはじめてから、一ヶ月半が経ちました。
まずはプロジェクトの肝となる「支援先」の銭湯が大阪府・高槻市にある『ひかり温泉』に決まりましたので、みなさまにお知らせいたします。
本気で廃業を考えていた『ひかり温泉』。支援プロジェクトの話を聞き、再開を決意
大阪府高槻市にある『ひかり温泉』。今回のクラウドファンディングで集まった支援金の送り先に決まった銭湯です。
店主の宮田さんは石川県の出身。大阪で銭湯を経営する人には、石川県出身の人が多いとのこと。以前は東京・大田区、品川区の銭湯でも働いていたそうですが、昭和57年に『ひかり温泉』を買い取って以来、40年近くこの地で銭湯をやってきました。
『ひかり温泉』は台風21号が襲来する以前にも、2018年6月に発生した大阪北部地震によって被災し、休業状態にありました。
屋根瓦が落ち、浴場内のタイルや外壁のブロックにもヒビが入った状態の『ひかり温泉』を、立て続けに台風20号と21号二つの台風が襲ったことにより、ヒビ割れなどの被害はさらに広がったのです。
大阪北部地震で被災した時、すでに「廃業」の二文字が宮田さんの頭には浮かんでいたと言います。そんな状況に追い打ちをかけるように台風被害が重なり、「再建はもう無理だ」と思っていたとのこと。
そのため、風呂桶やロッカーキー、ドライヤーのコインタイマーなど、ほかの銭湯で再利用できそうなものはすべて譲ってしまい、隣接する駐車場スペースもほかの業者に貸し渡していました。
秋口には相当つらい状況だった宮田さんは、すでに解体業者にも見積もりを頼んでいましたが、大阪の解体業者は震災の影響でどこも忙しく、費用も高騰している状態。見積もりの解体費用は1500万円、さらに解体できるのも1年以上先ということがわかり、宮田さんはさらに苦悩することとなります。
そんな折にクラウドファンディングによる支援の話を聞き、宮田さんは工務店に「修繕して再建する場合」の見積もりを依頼しました。あがってきた見積もりは概算で1500万円。「解体費用と再建費用が同じなら再建をしよう」と考えた宮田さんは、「再開するなら手伝うよ」という娘さんの後押しもあり、営業再開を決断しました。
再開決定後は、工務店の協力もあり急ピッチで再建に向かっています。
『ひかり温泉』の被害は地震と台風両方によるもの。大阪では、ほかにもこういった状況にある銭湯は多いようです。
すでに最低限必要な部分の改修は済んでおり、温水器やエアコン設備、地震で断線したと思われる電気風呂の改修などに200万円ほど、工事に必要な資材や人件費も含め、おおよそ500万円の費用がかかっているとのこと。
それ以外には、浴場内のタイルや外壁のブロック部分の補強工事を施せれば、現状必要な工事は終わる予定です。
ロッカーキーの取り付けなど自分でできる作業は自分で行い、一度は手放してしまった風呂桶もすでに大浴を通じて購入済み。新しく近くの空き地を借りて駐車場を確保するなど、その準備は着々と進んでいます。
半年の休業を経て、早ければ3月22日(金)にも再開の見通しとなっている『ひかり温泉』。
『ひかり温泉』はまずは自己資金で再開を果たします。
ただ、実際に営業を再開してみないことには、ほかにも修繕が必要な箇所が出てくるかもわからないような状態です。
銭湯のなかには100年近くの歴史があるものが多く、そういった銭湯では不具合がでるたびに設備を補修し、継ぎ足しを繰り返しているため絶妙なバランスを保って稼働しています。半年稼働していなかったとなると、どこに不具合が出てもおかしくないのです。
営業再開後、さらなる修繕が必要になってくるかもしれません。
【宮田さんが補修していた水タンクの柱】
すこし話は逸れますが、去年番頭さんの急逝により休業していた銭湯に東京銭湯から番頭を派遣し、営業を再開したことがあります。
休業していたのは1ヶ月程度だったにも関わらず、水タンクやろ過器の不具合が発生し、それらの修理には2ヶ月を要しました。休業期間の倍以上の時間をかけてようやく再開を果たしたのです。
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このように、自然災害による煙突の倒壊などがなくとも、一度休業をして設備を動かさない状態がつづくと、さまざまな不備が出てきます。
今回の支援金は、まずは自己資金で改修した費用を補填しながら、補強工事に費用の捻出できればと考えております。
そしてまだこれから出てくるであろう改修費用のため、引き続き支援金を集めることにより費用面での心労を軽減し、精神的なケアにもつながればと思います。
『ひかり温泉』が再開した後も、まだトラブルがあるかもしれない。それでも浴場の清掃には一切手を抜かず、キレイさを保つ姿には営業再開への意気込みを感じました。
災害による大阪の銭湯の廃業を止めたいとの想いで始めた今回のクラウドファンディングですが、支援を始めたこと自体が再開を考えるきっかけになり、さらには支援者の皆さまのおかげで金銭的な支援にもつなげることができました。
こうして実際に再建にまでたどりつけたことは、もしかすると「『ひかり温泉』が廃業する」という未来を変えた一つの要素になるかもしれません。
人が考え、気持ちを行動に移せばきっと何かが変わる。それは災害支援という難しいテーマの中で、『ひかり温泉』から学ばさせていただいたことです。