2019/01/12 19:53

笠原早希です。今は看護師として働いています。新潟市西区の内野駅前にツルハシブックスがあったとき、わたしは大学生でお客さんでした。わたしはお店の近くの新潟大学ではなく市内の他の大学で看護の勉強をしていました。

元々おとなしい性格で、あまり自分に自信がありませんでした。勉強そこそこ、運動もそこそこ。少し変わっているところと言えば岡本太郎が好きなところ。大学生になって自分の好きに旅行できるようになったら太陽の塔を見に行こう!と意気込んでいた大学生でした。

友人の紹介でツルハシブックスを知り、ときどき通うようになります。初めはなかなか輪に入れなくて、まわりの会話に耳を立てながら本棚を眺めて帰る感じ…。でも少しずつ、イベントで自己紹介する機会があったり、店主の西田さんに話しかけてもらったりしてお話できる人が増えていきました。

ツルハシブックスには様々な人たちが出入りしていました。出身地、学んでいること、職業が異なっている人たち。一言では説明できない職業…?をやっている大人たちなどなど。

新潟市出身の両親のもと、新潟市で生まれ育ったわたしは、それまでは自分の家族、親戚、地元、クラス、同じ部活というような限られたカテゴリーのつながりしか知りませんでした。これまでに会うことのなかった多様な人が行き交う空間はかなり新鮮でした。

それに大人って会社に勤めて給料もらって、家族を養うために生きていくものだと思い込んでいて、このことももちろん大事なことなのだけど、それだけじゃないんだということを知ったのです。いろんな生き方の人生の先輩たちに出会えて、自分の世界がぐわーっとすごい勢いで広がっていったのを覚えています。

ツルハシブックスで出会う人は、わたしが「岡本太郎好きなんです」というといいねいいね!と言ってくれました。あまりわかってもらえないだろうなと心に秘めていた好きなものを受け止めてくれる人たちがいるということがわたしの自信にもなっていきます。学校や職場にはない、自分という人間を総体で見てもらえる感覚がありました。

ツルハシブックスは本屋さんとしてありましたが、本を買ったのはほんの数回でした。いつもツルハシブックスや2階にあるイロハニ堂で行われるイベントに参加したり、店員さんであるサムライの人たちやお客さんとおしゃべりしたり、だべったりしていました。そんなやりとりがわたしにとってはとても心地よいものでした。

また、テレビでツルハシブックスが取り上げられたときに利用者のひとりとして密着取材されたことも思い出です。保健室の先生目指して看護系大学に入学したものの、急速に広がっていった世界の中で他にも自分がやりたいことがあるのでは…?と苦悩してる姿が映ってます。

看護系の学校では看護師の資格を取ることが必須です。でも当時のわたしは看護師という職業に強い憧れや関心があったわけではありませんでした。そんな自分が看護師という人の命に関わる仕事の勉強をしていていいのだろうかと悩んでいました。そんな悩みをツルハシブックスで出会う人や本に相談してぐるぐるぐるぐる考えながら生活してたように思います。人や本によって発信されることは違ってきます。たくさんのやりとりの中で自分はどうしたいかなって考えたり、わたしはこういうことをしてみたいと誰かにアウトプットすることで自分はこんなこと考えていたのかと気づいたりすることもありました。答えらしい答えは見つからないように思います。今社会人2年目であるので、まだまだ人生模索中です。

ツルハシブックスのようなサードプレイスがあったらなぁと思いながら過ごしています。馴染みのお店とかもあるけれど、サードプレイスはいくつあってもいいかなと思います。まだまだいろんな人生の先輩たちに会いたいし、社会人になった今、高校生や大学生と影響し合えたら楽しいだろうなと思います。