2019/08/27 23:00

発送遅延でご迷惑をお掛けしております。

これより皆様にSHIDOをより深く知って頂けるよう、また、分解してWEBで臓物を晒してくださる海外サイト様よりも先んじて我々の手で製品詳細を公開していきたいと思います。

犠牲者は、量産合格基準値の指標という大役を担ってきた完成品試作機1号 マサムネ君です。彼は量産基準値という役目を終え、開発者の愛機になろうとしていました。。。が、取り上げたのでバラします。

長文&駄文失礼いたします。

SHIDOのイヤークッションですが、細かな変更を除き、3度大きな進化をしています。

 一番左が1stです。今年の1月にCESで発表したときの物です。最早懐かしさすら感じています。このころはネイビーというよりはブルーでした。内部の黄色の模様もシナプス模様でした。なぜ内側をシナプスにしたのか、今となっては決め手が思い出せません。。。

 真ん中が2ndです。5月にONKYOBASEで展示をした時に装着していたものになります。色はネイビーになりました。1stの課題でもある、布素材特有の音抜けを改善するために裏側をコーティングしました。また、内側の黄色の模様はイヤークッション内の空気を撹拌させるため、規則性のある渦模様に凹凸を持たせています。厚い塗膜を作って内壁面の密閉性も高くすることで音質も良くなりました。賛否両論の阿吽の文字は音抜けが良すぎる生地からもう少し低域を出せる生地への変更に伴い、漢字の主張が強すぎない図形のような表現に変更しました。漢字直球はやりすぎました。

 一番右が3rd。最終仕様品です。さらに深いダークネイビーに色を変更しました。写真は黒く見えますが、黒ではなく、実物は濃紺になります。ここでの2ndからの変更は、内側の黄色の模様です。クッションはヘッドバンドの側圧で装着時に潰れます。2ndは模様を側面全体に施していました。結果、側圧で模様まで潰れ狙った効果が出せないことに気づき、3rdではその潰れる量を考慮に入れ、印刷面を下げました。素材は一貫して速乾性ファブリックになります。最大の利点は生地の薄さと柔らかさからくる付け心地の良さです。夏場着用する汗を逃がすインナーやユニフォームなどに採用されているLycraという繊維だと考えていただければと思います。

こちらは3rdを横から見た状態です。傾斜がございます。この仕掛けは1stからずっと施しているものです。人の耳は平行についているわけではありません。耳介囲後方は耳が持ち上がっているため、前方が後方と同じ高さである必然性はありません。ドライバーと耳の適性な距離を取るために、イヤークッション側に傾斜を設けました。また、イヤークッション後方を高くすることで、耳介後方に大きなスペースを設け、耳との干渉を少なくするようにしています。しかし、耳の大きさは人それぞれですので、ここは本当に難しいところだと思います。より多くの方に快適に使って頂けるよう検討を繰り返してきました。

イヤークッションの中の形状記憶フォームと冷却ジェルです。オーディオ用のヘッドフォンで採用している例は見たことはありませんが、音楽以上に長時間の連続使用を想定しなければならないのがゲームであり、そのために開発された素材でゲーミングデバイスメーカーでは採用実績多数ありました。

 今回、素材研究という意味も含めオーディオで使ったことのない素材の採用を試みました。初めて見た時は、ガリガ〇君かとツッコんだほど見た目ソーダでした。この冷却素材ですが、速乾性素材と相性も良く、付けた瞬間のヒヤッとする感じは癖になります。しかし、長時間着けると温くなりますので、その際は外してもらうとすぐに冷感が戻ります。左側が速乾性ファブリックの裏面です。布素材ですが、光沢があるのは、音抜けと浸水防止のためにコーティングをしているからです。

 ご注意頂きたいのは、布素材なので完全に水分の侵入をふさぎきれるものではありません。特に縫い目からは侵入が起きる可能性が高くなります。そのため、洗濯は可能ですが、お勧めはできません。理由は表面素材は乾いても、スポンジ内部に水分が残りやすいため、残った水分で腐食が起きる可能性があるためです。また、写真のようにバラしてしまうと傾斜を施している分、元の位置を探しだすのが難しく、位置を間違うと装着感が一気に悪くなります。そのため、皆様のお手元に届く製品はスポンジと布素材に接着剤で位置決めしています。乾かす際は布を脱がすくらいで、写真のように接着剤から完全に取り外すのは絶対におやめください。整髪剤などで汚れた場合は固く絞った布で拭いてくださいという常套句になりますが、洗濯するとしばらくゲームができなくなるので、拭いて掃除してすぐに練習に戻って頂ければと思います。そのために汚れが浸透しにくいユニフォームのような素材を採用しています。

 この製品をスタートしたとき、我々は全面を速乾性ファブリックで作っているイヤークッションは見たことがありませんでした。実際作ってみて感じたのは、生地が非常に薄いため縫製が難しく、音質チューニングや気密性のコントロールが大変で、単純にヘッドフォンに不向きなコストの高い素材だということです。音質だけを求めるならば、PUレザーで作る方がはるかに簡単です。ただ、PUレザーは圧倒的ムレという弱点もあります。PUも柔かさや厚みシボの設定で様々種類があります。ただ速乾性ファブリックほどの薄さはPUでは実現できません。

ゲームという長時間連続使用を前提としたときに、今回我々は、PUにムレ対策で音質を犠牲にして快適さを確保するより、布の優しい付け心地を維持して、速乾性ファブリックのクッションで音質をどこまで上げられるかに挑戦することを選択しました。