ガチャっと鍵を閉めた。
最後のゴミ袋を車の後ろに投げ入れると、すぐにエンジンをかけ、
古墳公園近くの家に行き、ドアをガラガラっと開けた。
「こんちはー!」
大声で叫ぶと、顔見知りの管理人のおじさんがでてきた。
「終わったかね」
「はい、終わりました」
「今年も雨やったね」
「はい、雨でした」
「残念やったね」
「いえ、雨でもいいフェスになりました」
鍵を渡し最後に深々と頭を下げ
「ありがとうございました!」
とお礼を言った。
フェスが終わり、その三日後の9/25日に古墳公園管理棟の片付けがやっと終わった。
フェスに来てくれた人ならわかると思うけど、古墳公園の受付に向かって
階段を上っていく時、背後の道向こうにあった建物だ。
そこを、フェスの一週間前からその後まで、延べ10日間くらい借りていた。
何をしていたのかって?
「フフフフフフ~、
秘密のジェット宇宙美人ガールの制作だ!」
っと何をわけのわからないと思われるかもしれないが、
その通り、わけのわからないまま、段ボールを切り刻み、
考えるより切れ、貼り付けろ!とばかりに、もう鼻息荒くして、勢いのみで、
バッタバッタ!
もうやるしかないとばかりに、フェスで飾るデコレーション・看板・ゲートを制作していた。
実をいうとオレはこのデコレーションに賭けている。
海外で経験したとんでもない発想のフェスに負けたくない!
だが、いつも具体的なアイディア何てありゃしないのだ。
頼みは、小さいころから好きだった不思議な話・UFO・怪獣・お姉ちゃん・バイク・革ジャン、そしてロックンロール!それをどれだけ愛して、どれだけ楽しんで、どれだけ笑ってこれたかって事なんだが、それでもアイディアが浮かばない!
そしたらもう最後は、こんな感じだ。
頭の中に魔法使いの杖を突っ込み、それをぐちゃぐちゃにかき回して
フワ~っと上がってくる蒸気みたいなヒラメキを徒手空拳でつかみ取り、
後は、気合いと勢いで作る!
主な働き手は、自分とスタッフ2人だ。
他のスタッフはみな、昼間に仕事を持っている。
しかも、彼らは差し迫ったジェットフェスの事もやっているので、みんなオレ以上に大変だった。それでも、時間を見つけ段ボールを持ってきてくれたり、顔を出してくれたりでフェス前のあの時間は、結構楽しかった。
さてと、管理棟の鍵を返した後、車に詰めたゴミを松江市のごみ処理場に持って行った。
自分は今日の夜に東京に帰る。
そこでもう一度、古墳公園に上がった。
いい天気だ。
今日は宍道湖にいい夕日がかかるだろう。
去年も雨だった、あの時は雨を想定していなかったせいで、真ん中のステージは中止になり、自慢の古墳ビアガーデンもガラガラだった。
だが今年は違う。
音楽は最後まで鳴りやまず、要所に設置されたテントで、雨の中でも賑わいを見せていた。
来年は晴れるだろうか?
晴れるともちろんいいが、雨でも楽しめるフェスを作れたじゃないか!
これもすべて、一緒に作ったスタッフのおかげだ。
オレはまた今年気が付いたことがある。
最初は、世界中にこの松江、特に宍道湖をみせたい、そしてここで、オレの頭の中をひっくり返したようなフェスをやり、この町を盛り上げたい!
そんな一念だったが、フェスを作り上げていくうちにもう一つ思ったことがある。
この素晴らしい仲間を、世界中の人達に自慢したい!
フェスを催した古墳公園は、名前通り古墳があってちょっとおもしろい公園だが、普段は、近所の人達が散歩を楽しんだり、数人の子供がキャッチボールなんかしている場所で、いつもいたって静かで、時間がゆっくり流れている。
だがあの日は違った、この場所が、あり得ない場所になっていた。
水前寺清子さんが365歩のマーチを歌ってくれて、神楽のオロチが火を噴いた。
ウルフルケイスケさんが走る一畑電車の中で歌ってくれた。
すべてのバンドが最高で、石野卓球さんも来てくれた!
あり得ないよ、あり得ない!
仲間たちと一緒に、こんな体験ができるなんて、やっぱりフェスって素晴らしい!
そしてその素敵な仲間に入ってくれたみんな!
そう、クラウドファンディングで応援してくれた君たちだ。
本当にありがとう!
みんなのおかげで、素敵なフェスになりました。
またみんなに会いたいゼ!
By ギターウルフセイジ