2017/05/15 12:03

本日は、プロジェクトの音楽監督を務める、東京音楽大学4年生の葛西竜之介さんにインタビューしました。葛西さんは前作「バーチャルハート」で音楽監督を務めていました。本題に入る前に、一度彼の手がけたオリジナル・サウンドトラックの一部を、お聴きください!(質問者・編集 岩田直之)

●前作でのオリジナル・サウンドトラック:バトル曲


●インタビュー

岩田 よろしくおねがいします!まずは自己紹介からお願いします。

葛西 東京音楽大学の作曲・映画放送音楽コース4年の葛西竜之介です。大学では、現場で通用する作曲の技術や、幅広いジャンルの音楽を学んでいます。個人的にはアンサンブルとかオーケストラとかのアレンジ・編曲をやっています。高校3年のときから作曲の会「Shining」に所属しています。

1.自分の譜面が「音」になった瞬間

岩田 作曲を始めたのはなにかきっかけがあったのでしょうか?

葛西 中学のときにシンガーソングライター講座っていう選択の授業があって、そこで作った曲が担当の先生から評価されたのがきっかけで、その先生から「(高校は)音楽科行きなよ」って言われたりもして!(笑)

岩田 でも普通科に行ったんですよね。

葛西 まだ将来のことを考えていたし、普通科には色んな人がいるので一旦保留にして高校受験のときは普通科に行くことにしました。

岩田 その授業を取るまでは作曲なんてしていなかったんですもんね。

葛西 まったくやってなかったですね。で、高校に入ってから、隣の高校で作曲している人と知り合って、その人と高校生の作曲家と演奏家を集めて作品展をやろうという話になりました。実際に全国から10人の作曲家が集まって、作品展が実現しました。中学のときに作っていた歌モノを除けば、この作品展で初めてナマの楽器で演奏するための楽譜を書いたんです。

葛西 そのときに自分の書いた譜面が音になる瞬間というのを体験して、とにかく感動しました。「これはすごい!」と。それから音大を目指すことにしました。

岩田 純粋な作曲ということではなく、いわゆる映画音楽といった分野に進もうと思ったのはなぜでしょうか?

葛西 その作曲展以来いろんなことをやってきたんだけど、フィルムスコアは映画という媒体を通じてちゃんとお客さんに聞いてもらえる届けられるという点にすごく惹かれました。当時フィルムスコアのそういうところに惹かれていたので、東京音大の映画放送音楽コースっていう学科を選択しました。

2.フィルムスコア(映画音楽)を書く

岩田 大学の話になってしまうのですが、放送映画作曲コースでは、映画音楽を作ってるんですか?葛西 いや、経験としては全然浅いです。それこそ、この岩田くんのプロジェクトがいい経験にはなってますね。

岩田 そうなんですね!それは何よりです。ちなみに前作の「バーチャルハート」の音楽監督をしていかがでしたか?

葛西 とにかく思ったのは、今まで純粋に音楽として楽曲を提供してきたから、自分の(作曲家として)やりたいことを出していけばよかったんですが、映画でそれをやると映像とぶつかるっていうのがまず学んだことですね。作った楽曲は映像と絡まないと全然意味がないです。意外と音楽が単純な方が映像作品が作品として成り立つなと思ったりも。

岩田 結構それって映画音楽というジャンルのトレンドだったりもしますよね。いざフィルムスコアを書くってなったときに、どこにいちばん時間を割くんでしょうか?

葛西 フィルムスコアはぱっと聞いたときに感じるサウンドの印象が大事だから、音の肌触りみたいな表面的な部分をまず大事にしています。バーチャルハートで作曲したバトル曲だと、新しい音源を実際に弾いて組み合わせてみて、違ったら消して、そういうのを繰り返すのに時間をかけましたね。やろうと思えば無限に時間がかかります。

3.音楽のイメージを「共有」する難しさ

岩田 そういうサウンドの「印象」って「言葉」にするのがすごく難しくないですか?

葛西 そうなんだよね(笑)それはちょうど最近考えていることなんだけどね。結局は語彙力がないと絶対に伝わらないし受け取れないから、語彙は多く持っておきたいと思ってます。あと、こっちの言葉を相手がどう捉えるのかっていうのをちゃんと汲み取る力も大事。要するにコミュニケーション能力ということですね。他人が音に関してどういう言葉で捉えているのかっていうのは千差万別なので、たとえば他の曲を相手に提示して、その曲について感想をきくことで、相手の音に対する捉え方をこちらが把握することもあります。

岩田 「バーチャルハート」のときも含めて、監督の提示する音楽の印象とか映像と、葛西君が作曲家としてやりたいことっていうのが葛藤することってありますか?

葛西 あります。オーケストラ団体にアレンジした譜面を提供する時にもあることです。そういうときは相手の言う範囲内で、いかに自分のやりたいことと折り合いをつけるかというのを考えますね。結構そういうせめぎあいが個人的には好きなんだけど(笑)。あと逆に、監督と音楽監督の間での齟齬をうまく利用して解決することもあります。監督とのミスコミュニケーションがきっかけで面白いアイデアを発見できたりもするので。

岩田 監督自身が気づかなかった部分を音楽監督が発見して、ってことですよね。

葛西 そうそう。

4.第2弾のフィルムスコアへの挑戦

岩田 なるほど。今回のプロジェクトを通じて音楽的にやってみたいことはありますか?

葛西 生演奏による録音ですかね。ちゃんと譜面として質の高い作品を生で録るっていうのはやってみたいことです。弦楽器って質の高い(シンセ)音源があるんだけど、どうしてもあの「情感」は出せないと思うんですよね。管楽器もそう。ちょっと音程がずれちゃうかもしれないんだけど、そういうところも人間味があったりします。人間の生の演奏じゃないと得られない微妙なズレがあるんですよね。そういうのがあって、生演奏やりたいです。

岩田 譜面を書ける人でないとできないことですね。

葛西 そうだね。最近はDTM(パソコン上での作曲)が庶民的にはすごく手が届きやすくなってると思います。ただ、そういう「方法」が単純になっても「譜面を書くスキル」という音楽制作のアカデミックな部分は依然と存在していて、そういう基本的なところをしっかり学んだ上で作曲に打ち込んでいきたいです。

葛西さんは所属する作曲の会「Shining」での楽曲発表やアニメ制作など、幅広く楽曲制作を行っています。そんなお忙しい中、インタビューに応じていただき、ありがとうございました!ではまた!

●プロフィール

葛西 竜之介

1995年千葉県生まれ。現在、東京音楽大学作曲指揮専攻(作曲/映画・放送音楽コース)在学中。劇伴用のオーケストラの作編曲をはじめ、アンサンブル団体への作品提供を多数行う。第11回弘前桜の園作曲コンクール高校部門第3位受賞。これまでに作曲を石田祥子、堀井勝美、後藤加寿子、藤原豊の各氏に、オーケストレーションを山下康介氏に師事。

(以下は映画音楽の作曲・演奏の例)(「バーチャルハート」音楽監督 葛西竜之介)


●本プロジェクトについて

本プロジェクトでは慶應義塾大学生・大学院生と東京音楽大学生、日本大学生が中心となり、アクション、特撮、音楽製作に特化したSF-アクション映画を製作し、国内外のコンペで競います。
それに伴い、現場で活躍する学生アーティストへのご支援をいただける方を下のウェブサイトで募集しています。ご賛同頂ける皆様、ご支援をよろしくお願いいたします!なお、3000円からご支援いただいた方には、充実した特典をご用意しております!是非詳細をごらんください。