書類仕事で前回から間が空いてしまったんですが、開発進捗を報告します。
こんなことをやっていました。
1.アニスの白濁
2.アルコール度数測定の様子
1.アニスの白濁
前回の試作1号の欠点は「水を入れたときに白濁が生じない」ことでした。八角に比べアニスは同量入れても白濁しずらく何とかできないかとやっていました。
具体的には
・成分が出やすいようにすり鉢でする
・つける時間を長くする
の二つです。
結論はというと、うすく白濁はするのですが、「ザルでこしても細かい粉末が残りのどが以外がする」「茶色が濃くなるため緑が汚くなる」と微妙な結果でした。
すり潰す、ろ過すると工程が多くなる割には得るものは少なくあきらめるべきかもしれません。
2.アルコール度数の測定
リキュールの酒税はアルコール度数によって決まるため、酒造メーカーはアルコール度数を定期的に測定する義務があります(採尺といいます)。
こんな装置を使います。
▲手作り感あふれるFLFsの蒸留装置
左のフラスコに測定液を入れガスで加熱し、蒸気を化学実験用の連続式蒸留器に通します。それが水冷の冷却器で冷やされガラス管内を伝って右側のフラスコにたまるという仕組みです。
科学実験器具は高いのでなるべく100均で買えるものででっち上げました。左下の浮き輪用の黄色いポンプは冷却液の循環用に使っています。コレでも大体10万円くらいかかっています。
リキュールに含まれる油分・糖分・旨み成分・色素などは100℃程度では蒸発しないので元のフラスコに残り、水・アルコール・香り成分(エッセンシャルオイル)は揮発して抽出されます。
酒税法では残留する分を「エキス分」と呼んでいます。大部分は糖分です。
抽出液はアルコールと水の混合液ですが、アルコールは水よりも軽いのでアルコール分が多いほど液は軽くなります。比重を計ればアルコール度数が分かります(0%なら比重は1、95%なら0.8161)。
酒税法では比重は専用の浮標で計ることになっています。
▲八角リキュールの蒸留の様子
抽出液はエキス分を取り除いたものなので、ほとんどが水とアルコールです。アルコールは水よりも軽いのでアルコール度数が高いほど液の比重は軽くなります。専用のメモリつきの浮標を浮かべると比重からアルコール度数がわかる、という仕組みです。
100ccを蒸留し、得た抽出液に水を足し元の100ccに戻し浮標を浮かべます。
抽出液は高濃度のアルコール液で透明です。
香りが強いものは抽出液に水を加えると白濁します。白濁は高濃度のアルコールには溶けるが低濃度のアルコールには溶けない脂溶性の成分が析出するため生じます。抽出液に含まれるのは水・アルコール・100℃以下で揮発する成分。かつ脂溶性のもの、つまりこの白濁は香り成分(エッセンシャルオイル)と考えられます。
古典的なアブサンの製造法の中に蒸留が入っているのは「好みの色を着けるために色素は取り除きたいが、ハーブやスパイスの香りの成分は残したい」からでしょう。
蒸留で白濁成分だけ取り出せれば色が悪くなるという問題は解決するんですが、残念なことに日本の酒税法上蒸留工程はスピリッツ免許が必要で当社のリキュール免許では出来ません。どちらにしろ蒸留には燃料費もかかりますし小規模生産には向かないんですが。