2019/08/24 20:19

今回はパパ恋ドラマCDの台本冒頭をチラ読みしてください!


ノア 「やあ、可憐、マサムネ。よく来てくれたね! ボクの会社が手掛ける新規事業の内覧会にようこそ!」

可憐 「ナイランカイってなあに? ノア」

ノア 「一般公開する前に、特別な人だけ招いて行う完成お披露目会だよ。可憐、君はボクの特別だからね。愛しいボクの娘……」

正宗 「親権は養親である僕のものなのだけどね。ところでなんだ、このお菓子の家みたいな建物は……。可憐のような小学生の女の子ならともかく、四十路の男には居心地が悪すぎる」

ノア 「みたいじゃなくて、本当にお菓子の家だよ。常に時代の最先端を行く弊社のアミューズメント部門が、技術の粋を尽くして築き上げた『謎解き脱出ゲーム・ヘンゼルとグレーテルの迷宮』の舞台なんだ!」

可憐 「とっても可愛い建物ね! 気に入ったわ、ノア」

ノア 「そうだろう、可憐。君のためだけにデザインしたんだ! マサムネ、君には謎解き部分を評価してもらおうと思ってね。本職だろう?」

正宗 「それで僕まで呼ばれたのか……。あいにく、僕はクイズ作家じゃない。しがない小説家ではあるがね」

ノア 「どっちも作家だろう。まあ硬いこと言わずに、まずは楽しんでよ! ボクが案内するよ」

可憐 「私、脱出ゲーム初めて! 一般庶民の間で、すごく流行ってるって聞いたわ」

ノア 「そうなんだ。きっと可憐も興味があると思ったよ。だけど大事な可憐を、庶民と一緒にするわけにはいかないだろう。本当は可憐専用の施設にしたかったんだけど、社員の猛反対にあってね……」

正宗 「御社の社員が、良識のある人間でよかったよ」

ノア 「CEOはボクなのにー!……とにかく、近いうちに一般にも開放して、経費を回収しないと」

正宗 「それにしても、よく短時間でこんな建物を作ったな。たしか先日まで、御徒町にこんな施設はなかったぞ」

ノア 「金の力って偉大だよねー。さあ、入って入って!」


物陰。BGMやや遠く。

隠れて可憐たちを見守るアルフレッドと地味子。


SE:スマホのシャッターを連射する音


アル 「ああ可憐様……! なんとお可愛らしい……まるでおとぎ話のヒロインのようです!」


SE:執拗なシャッター音


アル 「それにしても、脱出ゲームの舞台だったのか……。てっきりSNS映えを狙った激安量販店かと……」

綾  「はあ……八尋先生……。メルヘンとおっさん……これがギャップ萌えというものなのですね! なんて尊い……無理……」

アル 「ん?」

綾  「んん?」


顔を見合わせる二人。


アル 「あなたは可憐様の担任の、地味子……いえ、半村先生ではありませんか。なぜここに?」

綾  「そういうあなたは、可憐ちゃんのストーカー……いえ、押しかけ執事の……セバスチャンさん」

アル 「アルフレッドです」

綾  「そうだったかしら。ごめんなさい、若い男性にまったく興味がなくて……」

アル 「誤解があるようですが、自分は押しかけ執事ではありません。本職です。代々可憐様のご実家にお仕えする由緒正しい執事の家系で、可憐様がご幼少のみぎりより実際にお世話をしてまいりました」

綾  「中学生なのに? 労働基準法違反では?」

アル 「ははは、セレブの世界では日本の法律など意味はありません」

綾  「ちょっと何言ってるかわからないです」

アル 「とにかく、自分は執事としての責務を全うしようとしているだけです。可憐様の安全をお守りするのが自分の役目。ストーキング……いえ、見守りは当然の仕事です」

綾  「そうですか。それでは私と一緒ですね」

アル 「え、先生もマサムネのストーキングを?」

綾  「ちちち違います! 担任として、生徒の見守りを……! あなたストーキングを認めてます!?」

アル 「はっ! 可憐様が建物の中に入ってしまう! 早く追いかけないと!」


可憐たちを追いかける二人。

SE:パタパタという速めの足音