今回はパパ恋ドラマCDの台本冒頭をチラ読みしてください!
ノア 「やあ、可憐、マサムネ。よく来てくれたね! ボクの会社が手掛ける新規事業の内覧会にようこそ!」
可憐 「ナイランカイってなあに? ノア」
ノア 「一般公開する前に、特別な人だけ招いて行う完成お披露目会だよ。可憐、君はボクの特別だからね。愛しいボクの娘……」
正宗 「親権は養親である僕のものなのだけどね。ところでなんだ、このお菓子の家みたいな建物は……。可憐のような小学生の女の子ならともかく、四十路の男には居心地が悪すぎる」
ノア 「みたいじゃなくて、本当にお菓子の家だよ。常に時代の最先端を行く弊社のアミューズメント部門が、技術の粋を尽くして築き上げた『謎解き脱出ゲーム・ヘンゼルとグレーテルの迷宮』の舞台なんだ!」
可憐 「とっても可愛い建物ね! 気に入ったわ、ノア」
ノア 「そうだろう、可憐。君のためだけにデザインしたんだ! マサムネ、君には謎解き部分を評価してもらおうと思ってね。本職だろう?」
正宗 「それで僕まで呼ばれたのか……。あいにく、僕はクイズ作家じゃない。しがない小説家ではあるがね」
ノア 「どっちも作家だろう。まあ硬いこと言わずに、まずは楽しんでよ! ボクが案内するよ」
可憐 「私、脱出ゲーム初めて! 一般庶民の間で、すごく流行ってるって聞いたわ」
ノア 「そうなんだ。きっと可憐も興味があると思ったよ。だけど大事な可憐を、庶民と一緒にするわけにはいかないだろう。本当は可憐専用の施設にしたかったんだけど、社員の猛反対にあってね……」
正宗 「御社の社員が、良識のある人間でよかったよ」
ノア 「CEOはボクなのにー!……とにかく、近いうちに一般にも開放して、経費を回収しないと」
正宗 「それにしても、よく短時間でこんな建物を作ったな。たしか先日まで、御徒町にこんな施設はなかったぞ」
ノア 「金の力って偉大だよねー。さあ、入って入って!」
物陰。BGMやや遠く。
隠れて可憐たちを見守るアルフレッドと地味子。
SE:スマホのシャッターを連射する音
アル 「ああ可憐様……! なんとお可愛らしい……まるでおとぎ話のヒロインのようです!」
SE:執拗なシャッター音
アル 「それにしても、脱出ゲームの舞台だったのか……。てっきりSNS映えを狙った激安量販店かと……」
綾 「はあ……八尋先生……。メルヘンとおっさん……これがギャップ萌えというものなのですね! なんて尊い……無理……」
アル 「ん?」
綾 「んん?」
顔を見合わせる二人。
アル 「あなたは可憐様の担任の、地味子……いえ、半村先生ではありませんか。なぜここに?」
綾 「そういうあなたは、可憐ちゃんのストーカー……いえ、押しかけ執事の……セバスチャンさん」
アル 「アルフレッドです」
綾 「そうだったかしら。ごめんなさい、若い男性にまったく興味がなくて……」
アル 「誤解があるようですが、自分は押しかけ執事ではありません。本職です。代々可憐様のご実家にお仕えする由緒正しい執事の家系で、可憐様がご幼少のみぎりより実際にお世話をしてまいりました」
綾 「中学生なのに? 労働基準法違反では?」
アル 「ははは、セレブの世界では日本の法律など意味はありません」
綾 「ちょっと何言ってるかわからないです」
アル 「とにかく、自分は執事としての責務を全うしようとしているだけです。可憐様の安全をお守りするのが自分の役目。ストーキング……いえ、見守りは当然の仕事です」
綾 「そうですか。それでは私と一緒ですね」
アル 「え、先生もマサムネのストーキングを?」
綾 「ちちち違います! 担任として、生徒の見守りを……! あなたストーキングを認めてます!?」
アル 「はっ! 可憐様が建物の中に入ってしまう! 早く追いかけないと!」
可憐たちを追いかける二人。
SE:パタパタという速めの足音