昨日10月2日は、TOOLDカフェと称してミニ勉強会を開催いたしました。
テーマが、「原子炉容器は加圧熱衝撃(PTS)で壊れる!」ということで、ちょっと難しそうな印象のためか参加者は多くはありませんでしたが、その分、気軽にやりとりができてよかったと思います。
老朽原発で最も心配なのは、長年の運転で放射線を浴びた原子炉容器がもろくなっていることです。
緊急時に原子炉容器に冷却水が送り込まれた場合に、一気に冷やされて内面が収縮し、外面との温度差で強い引っ張り応力が生じます。
加圧状態のまま内壁が急冷される事象を加圧熱衝撃(かあつねつしょうげき)=PTSといいます。このとき内面にき裂があれば、き裂を広げようとする力を受けます。
き裂を進展させる力を示したものがPTS状態遷移曲線(せんいきょくせん)といって図の下の山形の曲線です。
図の左側の破壊靭性遷移曲線(はかいじんせいせんいきょくせん)は、原子炉容器の鋼鉄の強さを示しています。長年、中性子を浴びるともろくなり<中性子照射脆化(ちゅうせいししょうしゃぜいか)>、き裂に耐える力が弱くなると曲線が右側にシフトしてきます(この中性子照射脆化の問題もこれまでに裁判で主張してきました)。
この2つの曲線が交わると原子炉容器がき裂を進展させる力に耐えられず、破壊されることになります。
前回の準備書面で主張したのは、下の山形の曲線、PTS評価の前提となる式がおかしい、考慮すべきことがされていないということです。
例えば、考慮されていないプルーム(冷却時に生じる冷却温度の不均一さ)を考慮すると、次の図のようになり、原子炉容器が破壊されてしまいます。
関西電力の評価では交わらないから大丈夫とされているのに!
ここでは簡単なご説明で申し訳ありませんが、なんとなくイメージはしていただけますでしょうか。
ご関心のある方は、準備書面や要旨をお読みいただければと思います。
20190704 準備書面(44)
20190711 準備書面(44)要旨説明
どうしても原発の技術的なことは難しくなりがちなのですが、次回は文系のお話で、最近、原発裁判の判決でよく出てくる「社会通念」問題!に詳しい中野宏典弁護士にご講演いただきますので、ぜひご参加をお願いいたします!
2019年11月23日(土) 全国原発裁判の現状と老朽原発裁判の展望を語る