本映画「山歌(サンカ)」の主人公は、杉田雷麟(らいる)くん演じる15歳の都会の少年・則夫です。
則夫役は今年4月にオーディションにて選出しました。
監督である私笹谷は劇映画ははじめてで、しかもオーディションなんて、何をどうすればいいのか検討もつきません。私もかなり緊張していました。
今でも初めて杉田くんと会った時のことを覚えています。私には彼がとてつもなく長い影を背負っているように見えました。上手く表せませんが、「何かを思わせる何か」を持っている少年でした。そしてもう1つは目つきでした。恥ずかしい話ですが、オーディションする側の私が逆に見られているような気がしました。それほどに、杉田くんの目は何かを見据えている目でした。
種明かしのようになってしまいますが、杉田くんの雰囲気はシナリオ上の主人公の像にはガッチリと当てはまらないものでした。しかし、私はシナリオの中身、そして主人公・則夫のキャラクターを変えてでも、杉田くんを撮りたいと思いました。そうすることでこの映画がもう一皮剥けるのではないかと直観しました。
結果、主人公・則夫の行動原理、心象風景、アクション、全てが杉田くん仕様になりました。変えることは苦しいことでした。しかし、賞を頂いた時よりもずっと深く、より最良な状態でシナリオが映画になっていく実感がありました。
杉田くんは近作では稲垣吾郎さんが炭焼きを演じ、渋川清彦さんもその親友役として出演された「半世界」、大杉漣さんの遺作となった「教誨師」など、16歳にして劇映画のキャリアをしっかりを積んでいます。(私が16歳の時なんてカプコンの格闘ゲームしかしていませんでした。この差は・・・)
だから、というわけではないかもしれませんが、とにかく物怖じせず、丁寧に、冷静に、しかし強大な熱をもって則夫を演じてくれました。「演じてくれました・・・・」という言葉では語りつくせません。これらのエピソードはおいおい書いていこうと思います。