学生と社会人が主体的に行動し、地域の方々と協力しながら中学生・高校生と主に「食と学び」の場を作っている団体「池袋テーブル」代表であり、WAKUWAKUの活動にも深く関わって下さっている國井紀彰さんから、活動に関わって感じていることをうかがいました!
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先日、豊島区の福祉作業所のパン屋で、社協などが主催の「第3回いけぶくろなかよし音楽隊」がありました。
そこに、NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークの学習支援に来ているネパールの子たちと学生さんたちと参加。「きらきら星」をネパール語で歌ってきました。
サラリーマン(30歳)にとって、ネパール語で「きらきら星」を歌うことは人生のプランに全くなかったので(笑)緊張しましたが、とてもカジュアルで良い雰囲気だったので普通に歌うことができました。
この雰囲気の良さを、8月にあった國分功一郎氏と斎藤環氏の対談で知った言葉で表現すれば、「ポリフォニー」だと思います。
ポリフォニーは、多声音楽、多声性を意味するのですが、ロシアの思想家ミハエル・バフチンがドストエフスキーの作品を批評したときに用いた言葉であり、オープンダイアローグという統合失調症やうつ病、引きこもりなどの治療に成果をあげている対話療法の中では、重要な概念として位置付けられてもいます。
そんなポリフォニーについて、オープンダイアローグをフィンランドから日本に持ってきた精神科医の斎藤環氏は次のように語っていました。
(《中動態×オープンダイアローグ=欲望形成支援》「第2回オープンダイアローグの衝撃―」斎藤環 http://igs-kankan.com/article/2019/10/001199/)
「バフチンは、他者の視点と自分の視点は絶対に相容れないことを強調します。相容れないがゆえに、他者の視点は、自分の視点と同じくらい尊重されるべきである、と。そして、自分と他者は決定的に異質であり、それゆえに対話が可能になるとも述べています。この異質性を尊重する姿勢が『ポリフォニー』です。」
「対話にとっては、ポリフォニーが大事なんです。みなさん、ポリフォニーの対義語ってわかります? モノフォニーですね。実はもう一個あって、これは精神科医の森川すいめいさんの指摘ですが、シンフォニーです。シンフォニーとポリフォニーは対立する。つまり調和じゃないんです、ポリフォニーは。」
要するにポリフォニーとは、異質な他者が互いにその異質性を尊重しながら共存できる状態、なのだと思います。
今回のイベントは、(便宜的に使いますが)障害のある人・ない人、ネパール・中国・日本の人たちが歌を通して自分たちの存在を表現し、その複数性が尊重され、共存しているものでした。
NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークは、地域の様々な背景を持つ親や子ども、地域の方々と、ポリフォニーを生み出すような活動をしているなと、毎週の学習支援に参加しながら感じています。