2020/01/06 06:00

<プレイワークから世界のとびらを開く!>

はじめまして。一般社団法人TOKYO PLAY代表理事の嶋村です。

今回、私たちの団体が主催する「もっと遊べるまちをつくろう!第4回イギリス・スタディツアー」を主催しています。そこに参加する廣川さんのチャレンジを応援するためにメッセージを書きました。これからの廣川さんの世界の広がりにもつながればと、少し長くなってはしまいますが、私が海外で子どもの遊びに関わる仕事をすることになったきっかけを書かせてください。


私の最初のきっかけは、1999年にポルトガルで開催されたIPA(International Play Association・子どもの遊ぶ権利のための国際協会)世界大会への参加でした。

そのとき、私は東京・世田谷区にある「羽根木プレーパーク」という冒険遊び場にて、常勤プレ―リーダーという仕事をして4年目のことでした。3年毎に開催されるこの世界大会には、40か国を超える国々から、研究者や専門職の人、行政の人やNGOの人たちが集まります。分野は、都市計画や公衆衛生、教育、福祉など多岐にわたり、政策や環境設定、大人の在り方や危険管理まで様々なテーマの発表やワークショップがあります。

この大会で日本の冒険遊び場の実践発表を申し込んだところ、不用意にも初日の基調講演直後の基調報告者に選ばれてしまい、大会の前日に徹夜で原稿を何回も書き直し、何度も読み直したのを覚えています。

発表は、冒険遊び場でダイナミックに遊ぶ子どもたちのようすを見せたのですが、結果的には、発表の後に話しかけてきてくれた各国の人たちとのご縁が、それから20年後の今まで続いてきました。今、香港での遊び場づくりと職員研修を手がけているのも、そのときの出会いが始まりでした。

そのうちの一人が、故ジミー・ジョリー氏です。彼は、世界を渡り歩くプレイワーカーでした。故郷アメリカは訴訟社会の嵐で、子どもの遊びといっても、管理責任の追及ばかりできゅうくつな状態だったことに嫌気がさし、アメリカを飛び出して、世界で生きていこうとしていた人でした。それは、カナダ、ドイツ、イスラエル、インド、タイ、香港など、訪れる国々で、子どもの遊び場の立ち上げのためにその地元の人たちと数か月を共に過ごしては、別の国へ向かっていくというスタイルでした。

その後、私自身は翌年にジミーが香港の「冒険遊びフェスティバル」で2週間の仕事で来るというので、日本から押しかけの4人で訪ねていきました。その香港での遊び場で発見だったのは、言葉はあまり通じなくても、プレイワーカー同士で現場での動きを見ていれば、そのスタッフが子どもや遊び場の何を感じ、どう動きたいのかが理解できたように感じたことでした。それは、「プレイワークは、世界の共通言語なんだ」という感触を得た瞬間でもありました。

今、日本でもプレイワークとそこに携わるプレイワーカーの専門性が少しずつ語り始められるようになりました。イギリスでは、プレイワーカーは国家職業資格として位置づけられ、政府にも認定された倫理綱領を持っています。冒険遊び場や「プレイバス」「プレイレンジャー」と呼ばれる移動型の遊び場、放課後児童クラブはもちろん、子どもホスピスや子ども病院などの医療現場、難民キャンプや収容施設、刑務所の面会室など、子どもがいるあらゆる現場で活躍している仕事でもあります。

日本語に訳された文献もわずかに出てきましたが、社会的な認知はあまり高くありません。そのため、プレイワークの仕事に就いても、非常勤雇用の人も多く、不安定な生活を長く続けられる人は少ないのが現状です。続けている人たちにしても、何を学び、どちらの方向に行けば自分は向上できるのかという光が見えづらい状況にあります。そのためにも、日本国内でプレイワークを学び、教え、広げられる人が増えるのは、急務の仕事です。

私自身もこの仕事を24年続けてきましたが、人の一生はあっという間に過ぎてしまいます。私が一人だけでできる仕事はとても限られています。だとしたら、私にできるのは、「遊びとプレイワークは世界の共通言語だ」と信じて自分の実践を高め、地元はもちろん、日本全体や世界にも飛び出していける人を増やすことと考えました。そのひとつが、このイギリス・スタディツアーです。廣川くんにもどこかで、この同じ絵を見られる瞬間を共有してもらえたらと思っています。

これまでにツアーに参加した34人のうち、その後も学びの場を求めて海外に出ていった人は、14人。そのうちの初海外だった6人が同じく話していたのは、「外に出ていくのが、怖くなくなった」という言葉でした。子どもは、いつもどこかで未知との出会いを重ねて、自分の世界を大きくしていきます。だとすれば、子どもの遊びに関わる大人も、未知との遭遇に飛び込む子どもの感性を自分の実践の中で体現しつづけるということが、きっとどこかで欠かせないのだと思います。

廣川さんの感性が、何に出会い、何を感じるのかは分かりません。けれど、今回のツアーの内容も、いろいろな現場の最前線の人たちと出会う、とても濃い内容になっていると思います。それに加えて、一緒に参加する仲間や遊び場の子どもたちとの化学反応の中で、廣川さんなりの何かをきっとつかんでくると考えています。みなさんも、その報告を楽しみにしていてください。