はじめに
はじめまして。九州大学21世紀プログラム2年の池山草馬と申します。生まれはアメリカ、幼少期は伊勢におり、その後は京都。大学は福岡に通っております。
現在僕は、大学を一年間休学して、本州最南端から少し北に入った秘境、和歌山県古座川町に滞在しています。
清流古座川をはじめとした深い自然と、高齢化率50%を越えるまさに少子高齢化の最前線とも呼べる現状、そして、司馬遼太郎も魅せられた豊かな地域文化が存在する古座川は、一年がなぜ一年で一巡りとされるのかを実感できる、とても魅力的な土地です。
(古座川の潜水橋。古座川町の中では一番開けた地域です)
田舎に移住するとはどういうことなのか。
自分にとって生活するということはどういうことなのか。
そんなことを考えてみたいという軽い考えから始まったこの一年でしたが、残り2ヵ月を切り、復学の準備も行いながら慌ただしい日々が過ぎています。
この一年、地元の獅子舞の稽古やお祭りにに参加させていただいたり、仕事としても小学校対象の塾の講師や、川下りのアシスタント、柚子加工の仕事、HPライティングなど様々なことをさせていただきました。
そしてそんな一年の最後となるこの季節に、落語会を企画しました。
場所は、古座川が誇る地域文化を継承してきた拠点のひとつ、大正時代から続く集会所「互盟社」です。
決してものすごく凝った建築であるというわけでもなく、すでにボロボロで建て替えすら検討されているような状態ですが、長く使われてきたこの雰囲気が僕はとても好きです。
この空間の中で落語会を開催することができれば最高じゃないか、そんなことを考えながら一年暮らし、ついにその計画が現実になりつつあります。
(互盟社の門)
落語会自体がはじめてのこの土地で、多くの人にその面白さに触れて欲しい。
塾で、お祭りで、いろんなところで仲良くしてくれた子どもたちに、生の芸能に触れる機会を身近に用意したい。
無理にでも見るべきだ、というつもりはありません。
ただ、僕が好きになったこの土地に、ちょっと落語を観に行ってみようかなと思えば行ける、そんな環境をつくりたかったのです。
「互盟社寄席」とは
互盟社、は正確には建物の名前ではありません。しかし、通称として通っているため、今回はその名前をお借りしています。
そして予めお断りしておきますが、今回の企画は互盟社の会館をお借りして行うものであり、互盟社さん自体が企画に関係しているものではありません。責任はすべて世話人会の側にあります。
互盟社は、古くから続く地元高池下部の青年会の名前であり、現在でもお祭りの時期には篝火や提灯が灯ります。子ども向けのそろばん教室や敬老会などのイベントも行われています。
屋根や壁がすでにボロボロであったり、数年前の大水害の被害を受けるなど満身創痍の状態ではありますが、入り口の木で彫られたギリシア風の門構えや、使い込まれた木の内装は、しっとりと落ち着いた空間を醸し出しています。
今回は、桂米朝一門より「桂米紫さん」「桂吉の丞」さんのお二人をお呼びして、本格的な落語会を開催いたします。本来であればお囃子も生で行いたかったのですが、予算の都合で断念しました。次回以降、運営方法を考えながら検討する予定です。
噺家さんはお二人とも、様々な賞を受賞するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの方々です。僕はこれまでもかなりの数の寄席に行かせていただいたという自負がありますが、その中でも特に好きな噺家さんで、遠い土地まで来ていただき本当に光栄に思っています。
古座川では、これまで落語会が行われたことがない、と聞きます。
さらにいえば紀南地域は本当にアクセスが悪く、近隣で行われているそうした文化活動の頻度も非常に少ないと言わざるを得ません。人口も多く産業も賑わっていたころには映画館や芝居小屋があったとも聞きますが、それもなくなって相当の年月が経ちます。
また、多くの講演会やイベントなどが無料で行われるため、こうした活動にお金を払うという感覚も薄い地域だと聞いています。
しかし、そうした中で開催するにあたって、これまで落語に親しんで来られなかった方にも生の落語の面白さを知ってほしい。ましてや、こどもたちにはぜひ聞いてもらいたい。そんな思いから、かなり値段設定を低くして運営することとなりました。
大人は実質1000円。(お弁当つきです)
子どもは、高校生まで無料です。
ただでさえ都会から遠いこの地域で、この値段設定にしたため、本当にギリギリの運営になっています。
幸い多くの方にご協賛や予約をいただき、なんとか黒字に持っていく算段が見え始めましたが、本当に低予算で来ていただいている噺家さんに、ほとんどボランティアで手伝っていただいている友達や地域の方々に少しでもお返しがしたい、そんな理由からこのクラウドファンディングははじまりました。
このプロジェクトをはじめるに至ったきっかけ
この企画をはじめたきっかけは、ずいぶんと昔に遡ります。
京都に住んでいたころ、親が落語会を主催していました。まだ小学生の頃から、一年に一回か、二回ほど。準備から片づけまで手伝い、噺家さんを交えた打ち上げに顔を出すまでがあたりまえの生活でした。
それから月日が経ち、大学に入学して京都を離れると同時に、落語を聞く機会が少なくなってきました。もちろんyoutubeで探せばいくらでもありますし、テレビでも放送はしています。しかし、生で落語を聞くことからはいつのまにか遠ざかっていました。
そんな中、休学をする直前、京都に帰り久しぶりに親の主催する落語会に顔を出した時、小さい頃からずっと来ていただいている「桂米紫さん」と顔を合わせる機会がありました。
その際、「小さい頃からずっと聞いてくれているこどもたちが、大人になってまた聞いてくれる、こんなにうれしいことはない」と言っていただいたのを覚えています。
僕は落語を聞いて育ちました。
そのことが普遍的に良かったとか悪かったとか言うつもりはありません。
しかし、僕を育んでくれたこの芸能に、僕なりに恩返しがしたい、そう思ったのです。それが落語会を企画するに至る経緯のひとつでした。
その後休学が決まり、僕は古座川町へやってきました。
そして互盟社を観た時、それまで頭の片隅にあった落語会の計画がいきなり現実味を帯びてきたのです。落語をこよなく愛する地元のお兄さんとの出会いもあり、この企画は少しずつ進みはじめました。
僕の無計画さゆえ多くの方にご迷惑をおかけしながらではありますが、本番まであと2週間に迫り、落語会を企画する面白さと難しさを感じながら走り回っています。
頂いたお金の使いみち
①:噺家さんへのギャラの積み増し
初回ということもあり、噺家さんのご厚意で正直かなり安い値段設定で来ていただいております。しかし大阪から車で高速を使っても3時間以上。高速代、ガソリン代を入れて片道5000円の土地です。電車を使えばもっとお金がかかってしまいます。
以上の理由から、せめて交通費分だけでも別にお渡しできればと思っています。
②:手伝っていただいた方へのお返し
当日まで本当に多くの方に、ボランティアでご協力を頂いています。本来お仕事としてやっていただくべきものに関しても、応援という形でお願いしていることもあり、せめて少しでもお礼ができればと考えています。
リターン
ファンディングを頂いたお礼として、以下のリターンを考えております。
プラン3000円
・お礼状
・当日のレポート
・本番の落語を収録したCD
CDはどうしても素人録音となるため、高品質のものとはなりませんが、ご容赦いただければと思います。映像なども付け加えながら当日の雰囲気の味わえるものにできればと思っております。
終わりに
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
短い期間で突っ走ってきたこの企画も、もう本番まで残り少ない日々となってしまいました。多くの方に笑っていただいて、2月の一番寒い時期を楽しく乗り切っていただければ、こんなにうれしいことはありません。
もしこんな企画が今後も続いていけばいいな、と思っていただければ応援いただけると幸いです。
2017年2月12日 古座川のほとりにて。
池山草馬
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