「発表会は鬼頭さんに赤いドレスを着ていただきたいんです」
2020年上旬――。
プロジェクトマネージャーの千田翔太郎と僕(川野優希)がクロエ役・鬼頭明里さんのマネージャーさんに出演交渉した時から、発表会で着用した赤いドレスの物語は始まっていた。
ゲームシステム、ストーリー、ビジュアル、音楽。
『ALTDEUS: Beyond Chronos(以下、アルトデウス: BC)』」のプロットやスタッフが確定していくにつれて、これは「大作になる」と直感的に感じていた。子どもの頃であれば、確実に心を揺さぶられ、大人になってからは「お!面白そうじゃん」と反応してしまう。そんなイメージだ。
社内でのキャスティング会議がはじまったのは、全キャラクター設定とデザインが仕上がった頃。確かまだ肌寒い時期だった。キャスティング経緯やアフレコ裏話についてはまたの機会にしっかりとお伝えしていくので、その点も楽しみに待っていていただきたい。
僕は主人公のクロエを鬼頭明里さんにオファーすることが決まった時点で、発表会に「赤のドレス」を着ていただくことを計画していた。夢に出てきたから。それが昔からの夢だったから。そんな理想めいたものじゃない。
直感的に彼女が「赤のドレス」を着て『アルトデウス: BC』のお披露目に登場するのが当たり前のように思ったためだ。
当初考えていたリアルからライブ配信にイベント形式が変わったとしても、そういった最初のインスピレーションだけは変えたくなかった。
人は情報の90%を視覚から受け取っているという話をどこかで聞いたことがある。
僕は『アルトデウス: BC』は発表時からインパクトと大作であることをアピールしたかった。そのためにはパッと目に飛び込んでくるインパクトが欲しかったのだ。
提案の結果は皆さんご存知の通り。マネージャーさんや鬼頭さんご本人も快くオッケーを出してくれた。
当日、メイクルームから登場した瞬間に圧倒的な華を感じた。目の前にいた僕たちの“座長”はとても綺麗だった。
そして、今日が我々にとって運命の日であり、勝負の日であること改めて実感できたのだ。
『東京クロノス』と『アルトデウス: BC』をつなぐ看板女優
『東京クロノス』に二階堂華怜役として出演していた石川由依さんが、本作で続投することはかなり早い段階で決まっていた。
正確に言えば、キャスティング会議の初日にアニマ役は石川由依さんで確定していたのである。
その理由はオンライン記者発表会で『アルトデウス: BC』は柏倉晴樹監督が話したとおり。これまでにない石川由依さんの芝居を見たかったこと。
そして『東京クロノス』を通じて、もう一度彼女と仕事がしたい。そうスタッフが感じたことが大きかった。
数ヶ月にわたって行われたキャスティング会議。専用のスプレッドシートが何度更新されても「アニマ役・石川由依」の項目だけは一度も書き換わることはなかった。
MyDearestの看板女優。だからこそ、オンライン発表会で司会のオファーも打診した。
そう、石川由依さんにオンライン発表会の司会を任せたいとマネージャーさんに提案したのは、ちょうどアニマの収録タイミングだった。
「『アルトデウス: BC』は『東京クロノス』のシリーズ作品。役柄的には全くつながりはないのですが、キャストとして作品につながりを作れるのは石川さんしかいません」
オンライン発表会のスタート時点では『アルトデウス: BC』の出演キャストは未発表。完全にそこだけはシークレットを貫いた。
『東京クロノス』から『アルトデウス: BC』へ。“クロノスシリーズ”の美しいつなぎを実現できたのは、石川由依さんの存在があってこそなのだ。
司会らしくシックなドレス。二階堂華怜も少しだけ意識した黒のドレス。看板女優は今日も輝いていてた。
発表会直前。2つのお願い事
2020年7月22日。当日の天気は生憎の雨。実は『アルトデウス: BC』の収録中も雨の日が多かった。僕はそのことについて自分が“レインメーカー”であると語り、全て恵みの雨であると強調していた。
足下の悪い中、司会の石川由依さんとサプライズゲストの鬼頭明里さんが会場入り。
忙しいスケジュールの間を縫って、本作の発表会に参加してくれたことに対して感謝の気持ちが膨らむと共に、宣伝活動を成功させねばと襟を正す気持ちになった。
本番直前の打ち合わせ。僕はここで2人それぞれに相談した。まずオンライン記者発表会冒頭で実施したツイートの練習。次に鬼頭明里さんが登場した時のツイートである。
クラウドファンディングのテーマにもあるように、『アルトデウス: BC』は日本中に「VRムーブメント」を巻き起こすことを目指している。
そのためには1人でも多くの協力が必要なのだ。インターネットの発達に伴い、4マスの広告を駆使して、お金を使えば何とかなる時代じゃない。
夢中にさせてくれるコンテンツ。自分の時間を使うに相応しい体験。この2つが揃っていなくてはならない。何よりもまず、ポジティブな認知を生まなければならない。
そのために考えた施策を2人は快く承諾してくれた。
「(ツイートの)練習ですか? あはは(笑)いいですよ」(石川さん)
「大丈夫です。多くの人に配信を見ていただきたいですもんね」(鬼頭さん)
役者として普段のキャラクターやブランドもある中で、私たちに歩み寄ってくれたこと。本当に心から感謝してもしきれない。
本当に素晴らしい役者たちと一緒に仕事ができている。この恩を返すために僕たちができることは、作品を多くの人々に広げることだけなのだ。
僕が制作共犯者の方々に、本当はリアルな場で見せたかった景色。あの日のライブ配信は楽しんでいただけたのだろうか。
いつか、いつかきっと制作共犯者の皆さんとリアルの場でも会うことを期待しつつ、今回の開発レポートを終了としたい。
文・川野優希(『アルトデウス: BC』宣伝プロデューサー)