なぜ、日本人が遠いアフリカの国のダイヤモンド採掘者の実情を知らなければならないのでしょうか?
ダイヤモンド採掘労働者が直面している最大の課題は「貧困」です。貧困が故に、ダイヤモンドを採掘するライセンスを取る(更新する)費用が払えず、期限が切れたまま違法採掘をしている人が大勢います。
ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)がリベリアで行った調査によると、ある村ではMiner(採掘権所有者)と名乗る人は31名でしたが、そのうち有効なライセンスを持っていたのは4名のみでした。
紛争の資金源となることを予防するためキンバリープロセス認証制度の基準に則り、Minerは採掘したダイヤモンド原石をブローカーに販売する前にGovernment Diamond Office(GDO)に登録する必要があります。
GDOに登録すると登録票が発行され、販売時にブローカー(仲買人)やディーラー(輸出業者)も登録票の控えを受け取ります。
輸出する際、リベリア政府が登録内容を確認しキンバリープロセス証明書を発行します。この流れで輸出されるのが正規の輸出です。
しかし、GDOでは登録手続き時にMinerのライセンスを確認するため、有効なライセンスを持っていない人は登録しに行きません。
つまり、有効なライセンスを持っていない人がダイヤモンドを採掘した場合、すべてが密輸ルートに流れることになります。
DFPがリベリアで行った調査では、Miner及びDigger(採掘場で働く労働者)の多くが、「(GDOにダイヤを登録しなくても)ダイヤモンドを売るのは簡単だ」と答えました。
正規ライセンスを持たない闇ブローカーが多く存在し、正規ライセンスを持つブローカーもGDOに登録されていないダイヤモンドを普通に購入するのです。
リベリアで産出されるダイヤモンドのうち何割が正規ルートまたは密輸ルートに流れているかの統計はありませんが、正規ルートに流れているのは多くて5割程度ではないかと推察されます。
では、密輸されたダイヤモンドは、どうなるのでしょうか?
密輸なので、輸出後どこに流れ売上高が何に使われるのか追跡するのは困難ですが、過去の例として、アル・カイダの9.11同時多発テロ攻撃の資金源になっていたという報道もあります。
ダイヤモンドは換金性の高い商品です。テロだけでなくマフィア等の資金源になっていても不思議はありません。
「ダイヤモンドを買わないから自分には関係ない」と思っている人が、これらの問題について何も知らない、何もしないことが、テロやマフィアの活動を助長することにつながりかねません。
その意味で、私たちはアフリカのダイヤモンド採掘を巡る問題にきちんと目を向ける必要があるのです。(つづく)