大分市の就労支援事業所「ジョイファーム大分」 冷凍生キクラゲ全国販売へ
生キクラゲを冷凍販売するジョイファーム大分の葛城さん
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大分市の障がい者就労継続支援事業所「ジョイファーム大分」(大分市賀来北2、TEL 097-578-8705)は5月から、自社で生産、加工している生キクラゲ「大分きくらげ ゆの華」の冷凍販売を始めた。賞味期限が短い「生」の保存期間を延ばす新手法で、代表の葛城修二さん(68)は「恐らく国内初の取り組み。プルプルとした鮮度の良い食感を全国に届けたい」と意気込んでいる。
生キクラゲを凍らせる「アルコール冷凍機」
障がい者に就労の場を提供する目的で、2012(平成24)年5月に葛城さんが設立。主な事業はイチゴ、ナシなどの栽培や販売、製パン店「ヨーイドン」の運営など。現在、従業員は16人で26人の利用者を受け入れている。農作業、パン製造補助、販売、室内作業など、障がいの程度に合わせた多様な作業を行っている。
キクラゲ栽培は、通年出荷による安定した売り上げと作業の確保、利用者の工賃アップなどを目的に2019年6月に開始。隣接する専用のハウスで温度と湿度を管理しながら、黒い通常種と白い希少種の2種類を栽培している。菌糸や菌床に使うおがくずは全て国産で、農薬は一切使っていないという。キクラゲ担当の利用者は3人で、収穫、石づきの除去、洗浄、乾燥、袋詰め、販売などの作業に当たる。
葛城さんによると、国内で流通しているキクラゲのほとんどが中国産の乾燥もので、初年度は「国産の生もの」「白い希少種」という強みが受け入れられ、別府や湯布院のホテルや旅館、レストランに納入することができたという。
滑り出しは順調だったが、生キクラゲの賞味期限は3、4日と短いことから、その後は販路を拡大できずにいた。自信作を広めたいと考えていた葛城さんは「乾燥以外の保存を考えたときに自然と『冷凍』にたどり着いた」と言う。当時、急速冷凍の効力も知っていたこともあり、民間企業の助成を受けて「アルコール冷凍機」を4月30日に導入した。
真空でパックした生キクラゲ(100グラム)を氷点下15度~30度のアルコール液に中に入れて凍るまでの時間を計ったり、解凍後の状態を調べたりして冷凍保存への手応えをつかんだ。「氷結点を速く通過させることで細胞へのダメージを最低限にとどめることができる」と葛城さん。生キクラゲは氷点下23度ではおよそ3分で凍るという。
解凍したキクラゲをすしや天ぷらなどで試したところ、食感が生のものとほとんど変わらなかったことから商品化。大型連休明けから試験的に事業所で小売り販売を始めた。
今後は全国を視野に入れた販売計画を立てる予定で、収量も1日20キロ以上をめどに年間2トンまでに増やすという。葛城さんは農業を通した障がい者の自立を目指しており「従業員と一緒に、利用者を支える仕組みになるよう頑張っていきたい」と話している。