はじめに・ご挨拶
2019年5月に製薬業界でブロックチェーンの導入案を検討するチームを立ち上げました。チームメンバーは複数の製薬会社、CRO、システム会社から合計8名で構成され、本業としては臨床試験に関するデータマネージメント、統計解析、IT業務等を行っております。各メンバーが専門性を持ち寄り、製薬業界におけるブロックチェーン活用をテーマに活動しております。
このプロジェクトで実現したいこと
現在、世界中で多くの臨床試験が様々な場所、組織で行われております。この臨床試験を行うには多額の費用がかかり、得られたデータは非常に貴重なものとなります。臨床試験は医薬品開発や医学研究を目的として行われておりますが、現状としてそのデータは臨床試験を実施した組織内で留まり、二次利用を目的とした他の組織とのデータ共有はあまり活発ではありません。今後の医学発展において臨床試験データを活発に共有し合うことは、低コストで医学的知見を得る為の重要な手段の一つといえます。
現在でも臨床試験データの共有の仕組みは幾つか存在しますが、いずれの場合も個人情報保護の観点で課題が残ります。現在の運用上、臨床試験データを匿名化した後にデータ共有が行われますが、この匿名化のプロセスには限界があります。例えば希少疾患等の場合は症例数が少ないため、匿名化処理を行ったとしても個人を特定し易い状態のままであり、このデータを被験者の同意取得無しに共有することは倫理上、法律上の観点で問題となります。データ共有毎に被験者からの同意の取得が可能であれば問題無いのですが、現状ではこのプロセスは存在しません。また、匿名化が完全であったとしても、各被験者は自身のデータがどこに共有されたのか知ることができず、各被験者が データ共有を拒否するプロセスも存在しません。個人的にはこの点についても改善すべきと考えております。
ここで我々は、ブロックチェーンを用いて臨床試験データを適正なプロセスで共有できるプラットフォームの案を検討致しました。ブロックチェーンで実現可能な主な特徴は以下の点です。
・臨床試験データのアクセス権をブロックチェーンで管理し、被験者の権限でデータ共有を拒否できる
・被験者が自身のデータの共有先を把握することができ、そのデータやり取りの履歴は改竄できない為、信頼できるものである
・データ共有において費用が発生する場合は、支払い管理を効率的にブロックチェーンで管理することが可能となり、被験者に対して報酬を分配することも可能となる
当プロジェクト案については日本および中国のカンファレンスで発表しており、以下のリンクに資料が公開されております。
PharmaSUG SDE 2019 Tokyo:こちら
Phuse SDE 2019 Shanghai:こちら
また、想定されるデータ共有プロセス の例を末尾の<参考>の項に記載致しました。
当プロジェクトを実用化させることにより、より被験者の立場を考慮したデータ共有の仕組みの構築が可能となり、また、データ二次利用の有効活用が推進されることを期待しております。
さらに臨床試験データのみならず、通常診療の臨床データ等にも範囲を広げる方法についても現在検討を進めております。
当案については2019年に米国特許仮出願を行っております。特許を取得する理由としては以下の通りです。
・同様の仕組みが乱立すると一元管理が出来なくなり、非効率になる
・当仕組みを極端な営利目的で独占してしまう団体が現れると、仕組みの利用が推進されず、医療発展の妨げになる
現時点ではまだ特許仮出願の段階であり、今後、特許権取得やシステム開発を進めていくには多額の費用が必要となります。
今回はまず、当仕組みの特許権取得についてご賛同、ご支援を頂きたく、当クラウドファンディングを立ち上げさせて頂きました。
これまでの活動
当プロジェクトチームリーダーである新井は、2019年2月に経済産業省主催のブロックチェーンハッカソンに個人参加し、そのイベントで知り合ったエンジニアと協力して臨床試験をテーマにブロックチェーンの仕組みを考案、プレゼンを行ったところ、最優秀賞を頂きました。
https://www.meti.go.jp/press/2018/02/20190228004/20190228004.html
その後、製薬業界へのブロックチェーン技術導入に関する講演等も行っております。
https://aisum.jp/speakers/recbrKMEcCRljNcqn/profile/
この流れで、次のステップとして、製薬業界で本格的にブロックチェーン導入へ向けて検討していくことを目的として、製薬会社、CRO、システム会社からメンバーを集め、現在8名のメンバーで活動しております。各メンバーのバックグラウンドとしては製薬業界を中心とした、統計解析、プログラマー、データマネージメント、IT等の知識を有するメンバーがおり、互いの専門性を持ち寄り、プロジェクト案の検討を進めております。また、随時新規メンバーも募集、拡大も検討しております。
今回の案について、東京と上海のカンファレンスにて発表を行う機会等もあり、業界内でのディスカッションやコネクション作りを着実に進めております。
↑東京のカンファレンス https://www.pharmasug.org/sde/tokyo2019.html
↑上海のカンファレンス https://www.phuse.eu/shanghai-sde-2019
資金の使い道
2019年10月に自費で当プロジェクトに関する米国特許仮出願を行っております。この後、特許出願を進めるにはさらなる費用が必要となります。直近では特許仮出願後の本出願の費用が50万円~100万円が必要となり、この費用を募集致します。
予定額より多く集まった場合、特許の適応国を増やすための費用(国ごとに50万~100万円程度)や特許審査請求(国ごとに50~100万円)の費用に充てたいと考えております。
さらに予算が集まった場合、場合によってはシステム開発の外注費に充てる可能性があります。
纏めると、資金利用のプライオリティは以下の通りです。
1. 特許仮出願に対する本出願の費用:50~100万円
2. 特許審査請求、特許出願国追加:50~250万円
3. システム開発費用:費用未定
また、プロジェクトを進めるにあたり資金が不足した場合、第二回目のクラウドファンディングを行う可能性もございます。
リターンについて
・500円の枠の場合
特許出願完了時にお礼のメールをさせていただきます
・3000円の枠の場合
当プロジェクトの活動情報を各イベントの進捗毎にメールにてお届け致します。(学会参加報告、システム開発進捗状況等)
・10,000円の枠の場合
当プロジェクトの活動情報を各イベントの進捗毎にメールにてお届け致します。(学会参加報告、システム開発進捗状況等)
当プロジェクトの説明会を提供致します。東京での開催を想定しておりますが、遠方の方の為にWebでの参加も可能なものを考えております。内容としては、プロジェクトの概要説明、関連技術の解説、業界の動向説明、質疑応答を予定しており、2時間程度の想定となります。
実施スケジュール(現時点での目標)
2020年6月~2021年末:日本、アメリカ、ヨーロッパへ段階的に特許出願(場合によっては出願国を絞る可能性もあります)
現在~2021年3月:システムプロトタイプ作成、検証
2022年3月:実運用のシステムテスト版をリリース、検証
2022年12月:実運用のシステムをリリース
最後に
昨今、COVID-19に関する臨床試験が各国で行われており、臨床試験の結果についてニュースで耳にすることが多いかと思います。しかし、特殊なコネクションや公的な要請等が無ければ、タイムリーに実データへアクセスすることは難しく、臨床試験結果の妥当性の検証や各データの統合等も容易ではありません。もし、本プロジェクトのようなプラットフォームが存在すれば組織間でのデータ共有が活発化し、より正しい医学的知見にスピーディーに辿り着ける可能性があります。これに限らず、臨床データを共有し合った方が有用な様々なケースが考えられ、今後の医学発展には必要な仕組みであると考えております。
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、特許出願の計画を実行致します。
<参考>
当プラットフォーム想定されるデータ共有プロセスの例としては以下のような流れです。(あくまで考えられる一例です)
データ共有が行われない状況下では、被験者は自身のデータのみ閲覧可能、臨床試験実施機関は行った臨床試験データのみ閲覧可能、その他のユーザーは閲覧不可の状態となります。
データ共有依頼後のフロー例は以下の流れです。(①~⑤の番号は図の番号に対応)
①データ二次利用を行う研究者が臨床試験データを持つ組織に対して、ブロックチェーンを通じてデータ共有のリクエストおよび支払いを行います。
②ブロックチェーン上に組み込まれたプログラム(スマートコントラクトと呼ぶ)により 自動的に被験者にデータ共有先の情報が通知されます。ある程度期間を設けて、被験者がデータ共有の拒否を出来る機会を与えます。
③被験者がデータ共有の拒否を行った場合、スマートコントラクトのロジックが走り、臨床試験データから該当被験者のデータが除かれた上でデータ共有が行われます。この場合、有効性データ等で臨床試験の解析結果に重要かつ個人情報に当たらないデータは残されます。残すべきデータの仕様は臨床試験毎に設定可能です。
④臨床試験実施機関においても、データ共有の拒否権を持ちます。ここでデータ共有が許可された場合、スマートコントラクトのロジックが走り、データの匿名化処理が行われ、二次利用を行う研究者にデータ共有が行われます。ここでの匿名化処理のロジックについてはAIで行うことを検討中です。
⑤費用が発生した場合、各被験者への報酬分配も可能となります。
この仕組みを用いてやり取りを行うことによりデータの流れがブロックチェーンに記録され、被験者はデータ行き先を把握することが可能となります。また、これまで行われていなかった、データ二次利用における被験者の同意撤回のプロセスや被験者への報酬分配等もスムーズに行うことが可能となります。
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