2017/02/21 05:51

 

伝統300年の火 CFでつなぐ

葛黒火まつりかまくらで、大木を立ち上げる様子(北秋田市教委提供)
 
 『河北新報』2017年2月16日付けより 

 秋田県北秋田市七日市の葛黒(くぞぐろ)集落で19日にある小正月行事「葛黒火まつりかまくら」を運営する住民らが、市の補助金に代わる運営費をインターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)で集めた。運営費不足に悩む地域の伝統行事や祭りは全国的に増えており、ネットを通じた資金調達は新たな解決手法として注目される。
 火まつりかまくらは約300年の歴史がある。人手不足などで1999年を最後に途絶えていたのを、同集落を含む北秋田市小猿部地域の市民団体「おさるべ元気くらぶ」でつくる実行委員会が2014年に復活させた。約30万円の運営費のうち約20万円は市の補助金で賄ってきた。
 市の補助が16年で終了したため、実行委は他団体の補助金申請を検討したが、条件を満たさないことなどから断念。メンバーの一人が知人から紹介された、秋田県信用組合の県域版CF「FAAVO(ファーボ)秋田」で資金を調達することにした。
 1口当たりの金額は1000~1万円に4段階を設定し、目標額は20万円にした。実行委事務局の住職佐藤俊晃さん(56)は「知名度が高くないので目標額に達するかどうか心配だった」と振り返る。
 昨年11月に募集を始め、締め切りの1月26日までに秋田県内や仙台市、静岡市などの62人から計約24万円が集まった。その後も現金での支援の申し出があり、計30万円に達した。資金の提供者には金額に応じて、祭りを題材にした絵本や切り分けた神木などを送る。
 佐藤さんは「一集落の行事に、全国から支援が寄せられた」と反響の大きさに驚く。
 今回の試みについて、寄付行動を研究する日本学術振興会(東京)の佐々木周作特別研究員は「大きな目標金額を掲げたCFが注目される中、少額を募った地域の祭りでもCFを活用できたことは、行事の存続に悩む他の地域の参考になるはずだ」と話す。
 火まつりかまくらは午後3時開始。連絡先は元気くらぶ事務局の長岐賢一さん090(6101)8906。

[葛黒火まつりかまくら]近くの山から切り出した高さ約13メートルのクリの大木に稲わらを巻き付け、約1時間かけて直立させた後に火を付け、新しい年の無病息災や無火災を願う地域行事。江戸時代後期、暴れ者の「権五郎」を懲らしめようと、大木を権五郎に見立てて燃やしたのが始まりとされる。