「お出かけ便利帳」を地域の力に
公益財団法人さわやか福祉財団
理事 丹 直秀
ある日、ボランティア団体に電話がかかりました。「ちょっと外出したいのですが、車をお願いします」。メンバーのAさんが車を走らせました。到着まで約10分。依頼者のお宅は、エレベーターの無い団地の5階でしたので、階段を登り、介添えしながら1階まで降りて目的地まで運んであげました。結局帰宅までをお手伝いして喜んでもらえ、ボランティアとしての充実感も体験したAさんですが、なんとなく割り切れない感じが残りました。なぜでしょうか。
依頼した人は5階。この5階から1階までの間に、ちょっとした手助けが出来る方は居ないのだろうか。1階から目的地まではボランティアの移送サービスを利用するにしても、1階まで降りるところくらいは、身近なお互いさまの助け合いで移動が可能なら、もっと動きやすくなり、暮らしの幅が広がるのではないだろうか。Aさんはこのように感じました。
お出かけ便利帳には、移動に関する多くの担い手情報が盛り込まれています。これが、専門的なサービス業者・団体の紹介だけでなく、地域住民によるお互いさまの参加も促すような内容になれば、さらに素晴らしいものになるでしょう。
介護保険の改正を機に、生活支援コーディネーターのテーマとしても移送は大きな課題です。各地協議体の勉強会などで、「お出かけ便利帳」が活用され、移送の面でもお互いさまの助け合いが広がることを心から期待しております。



