2016/01/31 09:45


僕が子どもの頃には、セクハラやパワハラという概念がありませんでした。
問題がなかったわけではありません。悪しき習慣として、被害者はいるけれど、みんなが当たり前と見過ごしてあきらめていたわけです。

社会を変えるイノベーションは、誰かが声を上げることによって初めて世の中に認知されるのだと思いました。

痴漢は明らかに犯罪です。犯罪はなくなってほしいというのは、誰もが願っているけれど、一方で「仕方がない」と諦め、ある意味、あるのが当たり前と受け入れていたのです。
根絶ができないまでも、犯罪発生の確率を下げることはできる。このプロジェクトは、僕達にイノベーションの可能性を示してくれました。
単に、いい取り組みというのではなく、社会を変革する実証実験的なチャレンジだと考えています。

イノベーションは誰かが発言し、いろいろな人を巻き込み、みんなが認知したときに、大きな波が生まれます。

セクハラも、個人の尊厳や人生を踏みにじる問題だと声をあげた人達がいて、問題が明らかになり、賛同する人が増え、社会に認識されました。痴漢抑止バッジも、同様のプロセスを踏む必要があるでしょう。

女子高校生から声が上がったのも、大人だったら「仕方がない」と諦めがうまれた問題に対して、鋭い感受性が反応したからでしょう。当たり前で済ませられない、深い傷を心に負ったのではないかと思うと、娘を持つ父親として胸が痛みます。

僕は、田舎育ちなので、混雑した電車での通勤通学風景というものが、ピンときませんでした。もちろん、痴漢問題は電車内だけの問題ではありませんが……。
もし地方出身の子が、大学進学で初めてラッシュ時の電車で痴漢被害にあったら、カルチャーショックを受けるでしょう。

痴漢抑止バッジを社会に普及させるためには、継続が何よりも大事です。1回のクラウドファンディングで、スパイクが立つかもしれませんが、それを段階的に高くしていく取り組みが必要です。
継続するためには、資金が必要です。そのための組織を構築しなければ、活動の継続はできません。
公共事業が、いいプロジェクトを見つけて声をかけてくれるわけではありません。自ら、企業のコミットを得て、国内の大きな組織からの支援を得ていくアグレッシブな姿勢が必要です。

女性に近いポジションの企業にスポンサーになってもらい、メディアに広げていけば、国につながり、公共性が高くなり信頼が増します。そうなれば、他の企業からの支援も受けやすくなり、公的なセクターにコミットできるでしょう。大手鉄道にもつながれるようになります。
女性のために社会活動をしている企業とのコラボができれば、そこから活動が広がるでしょう。そういう拡大の方向を目指して、社会全体に痴漢問題の認知を広げていってください。

僕の娘が成長した時には、全ての女性が安心して生きていける世の中になるように、この活動を応援していきます。

角 勝(Filament Inc 代表)