2016/02/20 09:45

光喜がここまで生きることができると誰も思っていませんでした。 611gで生まれた小さないのち。明日には死んでしまうかもしれない。「今日元気でも明日はないかもしれない…。」 光喜が体調を崩す度に、苦しそうな姿をみては不安と罪悪感で苦しみました。「こんな状態で産んでしまってごめんね、ごめんね。」と何度も何度も心の中で叫んでいました。 そんな私の心とは裏腹に、光喜は受けた『いのち』を精いっぱい生きてきました。

1歳になる前、少しずつ、体調がよくなり、呼吸器を外すことができた時期がありました。「もしかしたら元気なお子さんに追いつけるかもしれない」と希望をもつこともありました。どこかで障がいをもつ子どもに対して偏った見方があったと思います。障がいをもつ子は劣っていると。劣っている分、早く成長してほしいと願っていました。「今は大変でも、きっと良くなる!」しかしそのかすかな希望はすぐに崩れました。その年に重い肺炎になってしまったのです。 「少しずつ良くなってきてここまできたのに…。」

肺炎を患っている期間、筋弛緩剤を使い寝たきりになりました。光喜の姿を見ているのが苦しかった。夢であってほしいと願い、このつらさから逃げ出したかった。しかし、現実は厳しく、一命はとりとめたものの「呼吸器を外すということはもうできない」と医師から言われました。光喜に会う日は足取りも重く、病院に入る前まで泣くこともよくありました。しかし、よく見ていると光喜は何かにすべてを委ねているように見えました。その姿は苦しがっているというより、落ちついていて、今この瞬間に存在しているように見えました。何かわかりませんが、大切なことをこの子は伝えようとしているのではないか。寝たきりの光喜を見ながら「もう、普通の子どもになってもらいたいと思うのはやめよう。何があっても光喜の人生を受け入れよう。他のお子さんと比べたり、嘆いたりすることをやめよう。」と決心しました。

今は慢性肺疾患により心臓にも影響が出てきているため、体重が増えないよう(7kgで維持するよう)薬の使用や水分制限をして管理しています。2年前に「余命あと6か月」と診断され、ターミナル期とも言われていましたが、この2年間は病状悪化せずすごすことができています。今このようにいられるのは、たくさんの医療スタッフの手助けがあったからです。医療スタッフの皆さんには、光喜の病状のことも含め今後のことなどについて真剣に話してきました。光喜が幸せにすごすためにはどのようにすればよいか、医療スタッフの想いと私たち家族の想いに違いがあり、何度も話し合いをもつこともしてきました。スタッフの皆さんは、仕事とはいえ、光喜のことを真剣に考えてくださっています。毎日の生活そのものを安全安楽にしてくださり、またあたたかい言葉をかけてくださいます。光喜が笑顔でいられるのは、あたたかい医療スタッフがいてくださっているからといっても過言ではありません。今回お礼をすることはできませんでしたが、言葉では言い表せないほど感謝しております。

光喜は、自ら不自由であることを予め決め、何か私たちに全身全霊をかけて伝えているような気がすることがありました。今まで病気のことを恨んだり、私に怒ったり、悲しんだりしたことは一度もありません。 「どんな状況でも今この瞬間を大切に生きること。どんないのちも守られている。だから、精一杯生きなさい。苦しみも悲しみも喜びもぜーんぶひっくるめて生きていきなさい。おきることすべてに愛があるんだよ。生きていることが奇跡なんだよ。」 今も光喜からそう言われている気がすることがあります。

12年間入院している中で、光喜はのりものに興味をもちはじめました。電車や新幹線、バスやタクシーに「乗りたい!」「運転したい!」とジェスチャーで伝えてくるようになり、私も「いつか光喜とのりものに乗ってどこかに連れて行きたい。のりものに乗って出かける楽しさを教えてあげたいな。」と思うようになりました。しかし、現実はそうはいきません。病状により、外出をすることは難しい状況…諦めかけていた夢でした。そんな時に、病院にいてもこういう方法で光喜くんに笑顔になってもらうのはどうですか?と AnniBirthColorの藤田さんに提案していただきました。それを叶えることが出来るかもしれない…病院にいながら光喜の夢を叶えてあげられるかもしれない!

私たちとっては夢物語であった光喜の長年の夢「電車を運転してみたい」が皆さまのご協力をいただくことで、病院にいながら叶えることができます。プロジェクト内容はとても素晴らしく、私たち家族にとっても光喜にとっても貴重な楽しい幸せな体験につながると思います。一日のほとんどをベッドで過ごす光喜に卒業のお祝いとして思い出に残るような体験をさせてあげることが出来ると思います。そのご報告は感謝の気持ちを込めまして、改めて皆さまにお伝えしたいと考えております。

もしこの夢を叶えることができましたら、他に入院されているお子さんやご家族にも、難しいと思っていた夢を叶えるためのお手伝いをしていきたいと考えています。 そのお手伝いとは、入院されているお子さんやご家族が、もし目の前にあることに精一杯で苦しみや悲しみの中にいたら、その体験をお話しする機会をもちたいと思っています。私自身、自分が現状を受け止めきれず苦しくつらい時にたくさんの方に話すことで、自分の気持ちを整理したり受け止めることができました。思いをそのまま「語れる場」つくっていくことが大切だと感じています。

具体的にはお茶会などを催し、ご自身の体験や叶えたい夢をお話しすることができるような機会をつくっていくことです。 ご家族が語りたいことや、叶えたい夢の実現にむけて、できることを一緒に考えていく。 「どのような状況にあっても夢をもつことができ、それを叶えたい。みんなで一緒に叶えていこう。」 このプロジェクトを通して、自分の夢も人の夢も応援でき、それが叶うことができる社会になるよう、私にもできることを精一杯お伝えしていきます。ご支援・ご賛同していただけましたらありがたいです。