2013/05/14 22:38
 福島の子どもたちといっしょに会場入りしてバスを降りた瞬間、関係者でありながらちょっぴり戸惑い驚きました。ギターに合わせた歌声に迎えられ、スタッフ総出の手でつないだアーチの下をくぐり抜ける。歓迎のセレモニーと言うより、まるで賑やかなお伽の国にでも迷い込んだ雰囲気だったのです。このキャンプには不思議な力が宿っています。初対面だというのに、みんなすぐにリラックスできるぬくもりがあるんです。もちろん恥ずかしがり屋さんも引っ込み思案な子もいますが、それもそのまんまでOK。だれからもなんにも強制されない自由を気風としています。  *****  この春休みキャンプでは、出発地のいわきでひと騒動がありました。直前になって高熱を出したミクのおかあさんから電話が入り、「本人はどうしても行くと言って聞かないんです。どうしましょうか」と言うのです。(えっ?いくら主催者だとは言え、行くか行かないかをこの赤の他人が決めるの?)と返事もできずにたじろぎました。「出られそうならとにかく集合場所まで来てください」となんとか答えてはみたものの、当の本人の表情を見た瞬間、これは無理しない方がいいに決まっていると、当然のように感じました。  ところが、ミクと来たら、一人残されたなら一生後悔すると言いたげにダダをこねるように身をかしげました。「インフルエンザだったらみんなにうつるわよ」、「回復したらあとから追っかけたらいいじゃない」とおかあさんたちからたしなめる声が出る中、数分間迷ったあげく何を血迷ったものか「ミクを連れて行きます。いいですか?」と宣言してしまいました。なんの勝算があったわけでもありません。ミクと一緒に、ほかのみんなとも力を合わせて乗り切ろうと思っただけのことでした。  幸いなことにミクは徐々に回復し、翌日には里山の軽登山にさえ参加することができました。「治るまでますやんには服従だぞ」と釘を刺しておきましたが、結果がよければそれでいいと思っているわけでは決してありません。この先症状がどうなるものかと計ることができないなら、今の気持ちを大切にしてあとはとことん応援してやろう。責任を取る取らないというようなことでもなく、一緒に泣いて一緒に笑おう。ただそれだけのことだったように、今思い返しています。