2016/10/20 14:40

朝晩の寒さが身に染みる季節になりましたね。

駿河シャクジ能実行委員会兼、辻雄貴空間研究所アシスタントの武田です。


先日、シャクジ能で行われる照明の模型が完成しました!

光が透けているところが綺麗で、想像力を掻き立てられますね。

遠くから見るともわ〜っとして繭っぽく見えるかも知れません…。

見ていると愛おしささえ感じてきます!

早速、照明の配置と明るさの調整について、カメラマンの関谷さんと打ち合わせをしてきました。 

 

幾何学的で美しい照明が活躍する、駿河シャクジ能開催まであと1ヶ月を切りました!
クラウドファンディングはお陰様で80%を達成し、一般販売のチケットも残り僅かです。
静岡県のみならず、様々な地域からお問い合わせをいただき、皆様が駿河シャクジ能に興味を持って下さっていることを大変嬉しく思っております。
引き続き応援宜しくお願い致します!

 

さて、前回の演目紹介に続き、今回は演者と彼らの役割を見ていきましょう。

 

【いけばな】
「生け花」「活花」とも表記され、植物やあるものを組合せて空間に設える芸術のこと。
庭の手入れの際に落とされた植物や、山から採取してきた植物を床の間などの空間に据えることから始まったとされています。
現代のいけばなは、様々な国より花材を仕入れた花屋から購入し、その中の数種を生けるというのが主流になっています。
シャクジ能は、古来の手法と同様にその土地への感謝と畏敬の念を込め、山から採取してきた植物や木の根、そこに現存する素材を使用し、能楽の世界観を汲み取りながら空間に設え、循環させる試みです。

 

献花差立 辻雄貴


浮月楼で献花差立を行なった時の様子です。

 

 

【能楽】
能楽は室町時代に猿の滑稽さを表す藝能としてはじまり、当時は野外と神社の中にある能楽殿で行われていました。

室町後期から江戸時代に入ると織田信長、豊富秀吉、徳川家康など大名のファンがつき「江戸式楽」と名を変え、お城に能楽堂が作られる程に盛況したと言われています。

明治期に突入すると、徳川文化を排除する流れで能楽師達は仕事を失い、一部の支援者によって現代の能楽堂が作られました。
シャクジ能では、室町に行われていた野外で行う形式の能楽を、その地の歴史的背景を感じ取りながらいけばなの世界観と融合し、現代アートとして蘇らせます。

フェール城の公演で『土蜘蛛』を行った時の様子。

 

【立ち方】
シテ方
(僧・土蜘蛛)梅若玄祥 ウメワカゲンショウ
ツレ(
頼光)山崎正道 ヤマザキマサミチ
ツレ
(胡蝶)川口晃平 カワグチコウヘイ
ワキ
(独り武者)宝生欣哉 ホウショウシンヤ
ワキツレ(
独り武者の従者)大日方 寛 オビナタヒロシ
アイ狂言(
独武者の下人) 野村太一郎 ノムラタイチロウ

 

能楽師にはある役に扮する人達を、立ち方と呼びます。

主役を演じるシテ方
脇役を担当するワキ方
シテやワキにつき従って登場する役のことをツレ
能の間に狂言を行う人をアイ狂言

といいます

 

【囃子方】
竹市 学 タケイチマナブ
小鼓 大倉源次郎 オオクラゲンジロウ
大鼓 大倉慶乃助 オオクラケイノスケ
太鼓 大川典良 オオカワノリヨシ

 

囃子方は、シテや地謡を栄やす役割を担っています。

は「能管」とも呼ばれ、囃子方の中で唯一の旋律楽器です。
その音を聞いた時、昔の人々は風を感じていたと言われています。
素材は竹でできており、数十年から数百年間燻されたものを8つに割き、裏返して籐(とう)や樺(かば)を巻き仕立てられています。

小鼓と大鼓は大小とペアを成すものと言われており、両者共に桜で出来た砂時計型の胴を馬革で挟み、調緒(しらべお)という麻の紐で組み立てられます。

小鼓は、緩くかけた調緒を調節して微妙な変化をつけることにより、柔らかい水の様な音を表現します。
良い音を出す為には適度な湿気が必要とされ、唾液で革を湿らせたり、息を吹きかけるなどの工夫が凝らされています。

大鼓は鋭く燃える様な音が特徴的で、小鼓とは対照的に革を乾燥させる必要があります。
始まる前に革を2時間程度焙じ、調緒で革と胴とを力一杯締めて組み合わせます。

太鼓はケヤキを使用した桶型の胴で、革には牛皮が使用されています。
台に載せ、2本の撥(バチ)で打つことにより、地が鳴る様なリズムを刻み出すことができる楽器です。

 

【後見】

小田切康陽 オダギリコウヨウ
山崎友正 ヤマザキトモマサ

 

後見とは、能楽師のサポートをする人のことです。
主に、装束(演者が纏う衣装)の脱ぎ着や、道具を渡す等の作業を舞台上で行います。
一見役割が地味な後見ですが、舞台上でシテやワキが絶句してしまった時に替わりにセリフをつけたりすることもあるそうです!

 

【地謡】

山本博通 ヤマモトヒロミチ
角当直隆 カクトウナオタカ
小田切亮磨 オダギリリョウマ
梅若雄一郎 ウメワカユウイチロウ

 

地謡とは舞台後方に並ぶ斉唱団のことです。
真ん中にいる地頭に合わせて多人数で謡うことにより、声に強弱やリズムの緩急など変化ををつけながら、場面の迫力を増したり、感情や情景をより際立たせ、舞台を盛り上げる役割があります。
日本人が本能的に心地良く感じるとされる「七五調」を八拍に収め、上半句はゆったり、下半句は勢いをつけて謡うのが特徴です。
能独特の、軽く息を吸うことにより出される「ヨワ吟」と、深く息を吸い発せられる「ツヨ吟」には演目に込められた心情や情景の波を感じることが出来るはずです。
八拍の中に込められた、声の強弱や謡のスピード、息の吸い方等の変化にも注目したいですね。

 

能楽師大倉慶乃助さんと華道家辻雄貴さんのトークセッションを、11月に辻さんの地元である富士市にて開催致します。

2016年11月4日(金)19:00(18:30開演)
富士市交流プラザ(富士市富士町20番1号)
『能楽といけばなが混じり合う時』
大倉慶乃助(能楽師 大倉流大鼓方)× 辻雄貴(華道家)

 

講演者の簡単なプロフィールとシャクジ能については『いけばなと能楽の混じるところ』をご覧ください。

 

11月4日(金)のトークセッションより、地域の有志学生さんと共に制作合宿に入ります。

今回のレポートでお披露目した紙の照明「カガセオ」の制作過程や、竹林整備の様子等も投稿致しますので、お楽しみに。

 

シャクジ能Facebookページもどうぞ宜しくお願い致します。

 

駿河シャクジ能実行委員会 武田

 

 


参考文献:
『初めての能・狂言』
『能にアクセス』
『お能の見方』