2018/11/18 17:47

クラファン終了4日前に投稿するレポートを個人FBに投稿して、こちらにし忘れる失態。。

いまさらですが。

 

『社会的健康と未病への挑戦』

 

 約2000年前に出版された中国最古の医学書『黄帝内経』によると「聖人(名医)は未病を治す。」と書かれています。つまり、病気になってからではなく、病気になる前(未病)の治療こそが重要であるということです。この考え方はまさに予防医学の原点です。

 

 予防医学という言葉は良く知られています。野菜中心の生活、運動、節酒、体重減量、塩分は控える、納豆食べたら健康?乳酸菌が免疫に効く?みんな何となく知っています。実際に、喫煙をなくせば肺がんはほとんど全て予防でき、がんの3分の1が食事で予防できるとも言われています。心臓病もただ発作を待って治療するよりも、生活習慣で予防したい、脳卒中も食事と高血圧治療で予防すべきものです。ですが、こんなこと何百回と言われても極々一部の人以外の生活は変わらないでしょう。

 

 問題はそこではないのかもしれない。もっと深層にあるのだと沸々と実感してきたのは医学部6年生の時でした。医学部6年生の時に台湾・ハワイの病院に計2ヵ月間臨床実習を行った際に、社会が変わると患者さんの見え方が変わってきました。衝撃的だったのは、ハワイで出会った34歳の退役軍人、シェルター暮らし、無職、うつ病の男性です。高血圧や糖尿病の生活習慣病も同時に抱えていました。蜂窩織炎という皮膚感染症で入院し、それ自体は抗菌薬で造作もなく治すことができました。暗い顔でトボトボと病院を後にする彼の後姿を眺めながら何かがスッキリとしない気持ちを覚えました。今回の身体疾患然り、うつ病の温床である社会に戻っていくことに対して疑念が生じたのです。

 

 精神疾患のある人の平均余命は、それが無い人と比較して10年~20年ほど短いという研究結果があります。こころの問題は、身体の問題や死へと多大な影響を与えます。更に、心の問題は、人々が生まれ、育ち、暮らし、働き、老いる環境に依存します。つまり、社会です。

世界保健機構によると、健康は「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義されています。ここでも「社会的健康」が健康の要素として組み込まれています。「聖人(名医)は未病を治す。」を本気で実践しようとする場合は、食事、運動はもちろんですが、それを動機付ける精神、そしてその基盤となる社会にまでフォーカスを当てる必要があります。

 

 みなさんはこの例に挙げた方が「自己責任」で病気になったと思いますか?私は思えません。確かに、少々極端な例かもしれません。しかし、この事実は日本も対岸の火事ではないと考えます。その話はまた後日に。