2020/08/03 07:00

中学生高校生が、富士山頂の「自然の事物・現象」に向き合い「科学的に探究する」理科の教材事例を開発しています。自然放射線に着目しました。その飛跡を初めて見たときの驚きを忘れません。霧箱を山頂へ運び、放射線源を入れずに観察します。霧箱は電荷を帯びた放射線が、過飽和状態のエチルアルコールの中を通過するとき、その道筋に沿って霧を残して進む様子を観察する実験装置です。観察容器の下面をドライアイスで冷やすタイプと、ペルチェ素子で冷やすタイプの2種類の霧箱を使いました。

霧箱に放射線源を入れないとき、低地の学校では飛跡をほとんど観察できませんでしたが、富士山頂ではドライアイスで冷やす霧箱内に、煙のような飛跡を沢山見つけました。またペルチェ素子で冷やす霧箱内には、白くて太く、変わった形の飛跡を複数個観察し記録しました。学校で放射線源を霧箱に入れたときのアルファ放射線の飛跡とは違った形状の飛跡が含まれていました。ベータ放射線の飛跡の数は低地より多く、似た形状の飛跡でした。

ペルチェ素子霧箱には交流100ボルトの電源が必要です。動画で撮影し、静止画を切り出して教材のタネにします。そして数年にわたり、ペルチェ素子霧箱は機器を交換しても山頂では正常に動作しない事態に見舞われました。原因を探りつつ次の手をどう打つか、検討中です。

地球環境は大海、大地、大気、宇宙へと繋がって変化しています。富士山頂特有の自然が微笑む現象を見つけ、中高生が観察、実験、観測等を通じてより科学的に探究し、自然を解明する営みを世代から世代へと繋いでいきたいと願っています。