最愛のご主人にいつまでも生きていてほしかったばあちゃん。きっとばあちゃん子の孫娘もばあちゃんにいつまでも生きていてほしいんですよね。「お墓物語」Ⅲ~つながりのものがたり~に収録された作品の中から、いくつかの作品をご紹介します。 ―――――――――――――――――――――――――――「ばあちゃんと墓」(優秀賞受賞作品)「みきちゃん、墓ば建てたばい」ばあちゃんが私に言った「自分の墓は自分で作らんばね」母方の祖母は定年退職の年に亡くなった祖父の墓をどうしてもきれいにしてあげたいと思っており、一生懸命貯めたお金をお墓にした。本人は自分のためのお墓なんて言っているけれど、ずっと祖父のことを思っていたようだった。私はそんな祖母を見ていて、祖父のことを本当に愛していたのだなと祖父をうらやましく思っていた。当時はかかったら治らないと言われていた癌に侵され、あっという間に天国へ行った祖父。入院してから亡くなるまでの約一年間、祖母は一日も欠かさず、祖父の病室と家の生き来を繰り返していた。日に日に弱っていく祖父。相変わらず笑顔で祖父に話しかける祖母は偉いといつも思っていた。けれども時折、病室の窓の外を見る祖母の横顔はとてもさびしそうで、自分が先に参ってしまいそうだった。私はそんな祖母を励ます言葉を知らなかった。ただただ見守るしかなかった。介護の甲斐もなく亡くなった祖父に祖母は、「ばあちゃんもすぐ逝くけんね。待っとってね」と言っていた。葉桜になる頃、墓は建てられ、初夏のまぶしい陽射しが出来たばかりの墓をきらきらと照らしていた。「こいで、ばあちゃんもやっと死なるったいね」明るく笑うばあちゃんに私はやっと言葉をかけた。「墓は入るために、作るんじゃなか。入っとる人ば見守っための作るとよ」もっともっと長生きしてほしい祖母のために精一杯気持ちを込めて言った私の言葉に、「そんなもんかね」と笑って、祖母は墓前に手を合わせた。―――――――――――――――――――――――最愛の人との別れはつらいものです。大好きな人はいつまでも生きていてほしい。その想いは年齢とは関係ないのかもしれません。それぞれの人にそれぞれの「お墓物語」があります。「お墓物語」Ⅲ~つながりのものがたり~のクラウドファンティング実施中(9月5日まで)https://camp-fire.jp/projects/view/315325