今晩は。8月も終わり、いよいよ秋になりますね。withコロナの雰囲気もだいぶ浸透して、久しぶりの旅行にでかけた方も多いのではないでしょうか。古座川の川沿いも、沢山のテントが張られて賑やかな声が聞こえていました。いつも、いいなぁと思いながら買い物に行っています。
送り盆
8月後半、平井は送り盆から始まります。平井の送り火は天高く上げるのが特徴です。去年と同じく、研究林職員さんの家の送り火を見せてもらいました。 送り火でも、研究林のアカマツ材が松明に使われます。
長~い竹の先っちょに松明をくくりつけ、火を点けたら準備完了です。良い感じに燃えてますねぇ。生憎の天気でしたが、火を点ける瞬間は、なんとか小康を保っていました。
この竹を立てるのですが…
ムムっ。去年よりもかなり大きいです。対角線を使っても、準備していたレンズでは全体像を捉えることが出来ませんでした。
遠くに移動して、なんとか全体を撮ることができました。割箸を燃やすぐらいの送り火しか見たことなかった僕からすると、この大きさはやはり驚きです。 人と比較すると、その大きさが分かるかと思います。成人男性6人分ぐらいありそうですね。
あとは、倒れないように固定して完了です。この高さになれば、使う竹も腕より太いですね。
雲のかかった山と相まって、神秘的な雰囲気が醸し出されます。昔は、神社からの道沿いに松明が並んで、それはそれは綺麗だったとのことです。こんな大きな送り火が並んでいたら、今頃有名な地域行事になっていたかもしれませんね。
送り盆のもう一つの行事は精霊流しです。里芋の葉っぱにおにぎりを乗っけて平井川へ流します。去年、一昨年は、この存在を知らなかったので、写真を撮れる最後のチャンスでした。
まずは河原へ行って、お線香と蝋燭を立てます。この日も朝から土砂降りでしたが、雨脚が弱まった瞬間を見計らって一気に進めます。
ぽちゃんと着水しお供え物が流れていきます。すぐに沈んじゃうのかなぁと思って見ていましたが、葉っぱが大きいのでバランスを保って流れていきます。
川は連日の雨で、増水中。もはやウォータースライダーのように、とてつもない勢いでお供え物が流れていきます。精霊流しと聞くと、ゆったりと広々した川の上をゆらゆらと流れていくようなイメージがありますが、山間部はそう甘くはないみたいですね。ご先祖様も、さぞかし楽しく(?)帰れることでしょう笑。
地元中学校の職業体験
送り盆が終わって1週間ぐらい経ったころ、ふもとの中学校の2人が職業体験で和歌山研究林へ来てくれました。プログラムは3日間で、研究や森林管理、木工作業などを行います。
初日は、樹種同定の旅です。研究にしても木工のための伐木にしても、お目当ての木を探し出せないと始まりません…。と、偉そうに言いつつも、僕もまだまだ全然分からない木ばっかりです。いかんせん、北海道より種類が多いし、葉っぱが分厚くてツヤツヤしているので、全部同じに見えてしまいます。
それでも、さすが中学生です。教えてあげた種名どころか、説明まで一言一句覚えていたので本当にびっくりしました!中でも、すぐに覚えられていたのがヒメシャラです。樹皮が他の樹種と明らかに違い、暗い照葉樹林の中でも存在感を放っています。中学生の感性に言わせると、「ムキムキに見える」とのことでした。言われてみれば、たしかにボディービルダーの鍛え上げられた太腿のように見えてきました。血管も浮き上がってる??
2日目は、覚えた樹種を使ってコースター作りです。樹種はヒメシャラ、カゴノキ、トチノキ、クリがありました。好きな一つを選んで切るところから始めます。こちらは、話題のヒメシャラを選んだようです。糸鋸を使って慎重に切っていきます。
このヒメシャラ、実はとっっても硬い木で、以前輪切りを作ろうと鋸で切った際は、翌日腕が筋肉痛になってしまいました。そんな木ですので、糸鋸で切るにしてもちょっとずつ進んでいくことになります。糸鋸と言えば、僕が小学生のころ、力加減が分からなくて頻繁に刃を折っていたのを思い出しました。
こちらはカゴノキを選んで、八角形に切っていくようです。樹種同定をするときに「カゴノキは切ったらソーダの香りがする」と言っているのですが、なかなか理解者が現れることはありませんでした。しかし、彼は「本当だ!」と同意してくれました!よき理解者が得られて嬉しく思います。
八角形と言えば、八角形の古墳は畿内の大王にのみ許された形といいます。それを考えると、近畿地方で1枚1枚丁寧に作られるコースターにふさわしい形と言えるでしょう。
3日目は、地拵え作業のお手伝いです。ユズリハだらけになっていた場所に、別の種を植えようという計画があるので、その準備をします。地拵えは、植林のための作業スペースや安全性を確保しつつ、土砂の移動を食い止める作業です。傾斜地に段々を作って、林地残材や枯れ枝を整理していきます。
写真は枝葉を堰き止めて、段々を作るための杭を打っているところです。職員さん達が見本を見せてくれます。ちなみに、使っているハンマーの頭の部分は例のヒメシャラです。ハンマーに使えてしまうぐらい硬いことがよく分かりますね。
午前中を使って作業を進めると、かなり整った感じになりました。枝葉で段々が作られているのが分かりますでしょうか。緩傾斜地なので、想像しづらいかもしれませんが、急傾斜地だと、この段々があるのと無いので安全性や効率が変わってくるそうです。
なかなか大変な作業ですが、急傾斜地の多い日本の林業では大事な作業ですね。
外来種と土壌微生物
前回は論文(Maron et al. 2014)のイントロと方法をご紹介したので、今回は結果と考察をご紹介していきたいと思います。ただし、著作権の問題で図表の画像を載せることが出来ないので、言葉のみの説明となります。ご了承下さい。
まずは、原生地と移入地におけるフィードバックの方向性(つまり、ある種を育てた土壌が、同種の実生の成長を促進するか or 抑制するか)についてです。ざっくりまとめると、原生地では有意な負のフィードバックが多かったのに対し移入地では、中立な反応を示しました。
※ここでいうフィードバックとは、殺菌処理をしたものに対する成長量(バイオマス)の増減をいう。
次に地上部のバイオマスについてです。原生地では対象となる6種のうち4種が、殺菌によって有意にバイオマスが増加していました。一方で、移入地では殺菌による効果が見られませんでした。地下部のバイオマスも似たような傾向となりました。
以上の結果から、PSF(植物ー土壌フィードバック)は原生地と移入地で強さや方向性が異なることが示されました。つまり、原生地では同種の存在が負の影響を及ぼし、移入地では同種がいてもあまり影響はないということです。
ということは、外来種は新たな地に侵入することで、負の効果から離脱し、成長しやすくなると考えれます。つまり、天敵となる菌から解放されることで、競争的優位が促進されるという「天敵解放仮説」を支持する結果となりました。
この論文の面白いところは、これまで種レベルで考えられてきたPSFが、より大きなスケールでも生じている可能性を示したところです。
従来の研究が示してきたように、同種密度が高いときに負のフィードバックが生じる場合、原生地、移入地に拘わらず、フィードバックは負の方向になるはずです。しかし、移入地では中立という結果になりました。ということは、原生地の土壌だけに負の影響を及ぼすような土壌微生物群が居たと考えられます。
では、どうしてより大きなスケールでPSFが生じるのでしょうか?従来の種レベルの負のPSFで考えられてきたドライバーは、その種だけに感染するスペシャリスト的な病原菌を想定していました。しかし、今回の実験では、原生地においても実験対象種が存在しない場所から土壌が採取されました。そのため、大陸間で異なるフィードバックの性質を示したことを考えると、このスペシャリスト以外にドライバーがいることが示唆されます。
著者はこのドライバーとして、ジェネラリストの可能性があると述べていました。ジェネラリストとは、特に好き嫌いせずに感染するものを言います(好き嫌いしないので、スペシャリストに比べるとジェネラリストの影響は広く浅いイメージです。そのため効果が見えにくい可能性があります。←これは僕の考えで、論文に明記されているわけではありません)。このジェネラリストの効果が、原生地で長い時間をかけて蓄積されたことで、原生地ではジェネラリストだけでも負のフィードバックが生じ得たのではないか、ということです。一方の移入地では、微生物群集の相違から、感染して負の影響を及ぼし得る病原菌が少ないと考えられます。
以上が、この論文の紹介でした。これまでは、スペシャリストによる種レベルのPSFばかりが注目されてきました。しかし、この論文によって、ジェネラリストがより大きなスケールでPSFを生じさせている可能性が示唆されました。
ここからは、私の考えです。ジェネラリストの蓄積によってPSFが生じるならば、天然林と人工林でも異なるPSFの結果が生じるのではないかと考えました。というのも、天然林には、人工林よりも多くの種が分布しています。そのため、広葉樹を好むようなジェネラリスト(専門性の低いスペシャリストともいえる)が居た場合、天然林の方が負のフィードバックを生じさせやすいと考えられます。その結果、広葉樹は天敵解放仮説に則って、天然林よりも人工林内の方が更新しやすいと言える可能性があります。まだ、結果は分かりませんが、来月以降の実験でこのあたりを明らかにしていきたいと思います。どうぞお楽しみに。
説明し損ねたので、最後に付けたすと、今回の報告のトップにあった画像は、アカメガシワの葉っぱです。虫くいが大量にあったので、太陽にかざしてみると、星が瞬くようにきらめいていました。