はじめに
はじめまして。ムワンガザ・ファンデーションの事務局小林一成です。
私たちはタンザニア南部の町ソンゲアを拠点に孤児院の建設と運営、孤児たちの養育と教育を支援しているNPO法人です。
私は青年海外協力隊員としてタンザニアに赴任し視聴覚教育に携わった経験から、2011年より孤児たちの創造力や表現力、チームワークを育てようとビデオ制作を指導してきました。何よりも生きる希望と自信をもってほしかったからです。子どもたちは自身の体験や夢をストーリーに織り交ぜて、自らが脚本から撮影、出演もこなし、自分たちが社会とつながっていることを知ります。親や世間に見捨てられたと感じながら生き抜くことに精一杯だった小さな孤児たちは、今は大きな夢を抱く表現者です。
これまでに5本の短編を制作しています。子どもたちの手づくり動画は高い評価を受け、2019年は2つの国際コンペでグランプリを受賞、2020年も2本がそれぞれ入賞しています。これって、スゴイことです。
オリンピック・イヤーのはずだった今年、タンザニアの子どもたちは2020年に特別な関心をもって作品づくりに臨みたいと願っています。タンザニアの象徴であり、誇りでもあるキリマンジャロ山の万年雪が消えるかもしれないと知ったからです。
本当に雪が消えてしまうのか。それはなぜなのか。止められないのか。自分たちに何ができるのか。子どもたちはカメラとマイクを持って街から里へ、サバンナから森へ、答えを求めて山に登ります。
キリマンジャロ登頂ロケを通じて、タンザニアの子どもたちは人と自然が共生する未来を考えます。そして、私たちにどんなメッセージを発信するでしょうか。
アニメ『ノアの箱舟2020』とドキュメンタリー『キリマンジャロ2020』
タンザニアの学校では図工や美術の授業はありません。私たちはタンザニアを代表するポップアート ティンガティンガTINGATINGAの画家に依頼し、ソンゲアの孤児院で描画教室を進めています。当初の目的は孤児の自立支援でしたが、子どもたちの「この絵が動いたら楽しいね」という声からアニメ制作の提案がありました。
ティンガティンガは野生動物や人々の生活を独特のデフォルメと鮮やかな色彩で描きます。確かに、きっと楽しいアニメになるでしょう。たくさんの動物が登場する物語といえば、みんなが知っている『ノアの箱舟』がありますが、タンザニアでは ヌフの箱舟Safina ya Nufuといい、箱舟が漂着したのはキリマンジャロ山だったという伝説まであるとか。
子どもたちたちが考えたあらすじ
気候変動によって大洪水が起き、アフリカ大陸が海に沈む前に、神様が全ての動物たちに伝えます。「つがいでキリマンジャロ山に登れ」しかし、人間だけはその列に加わることを許されません。人間が地球の環境を破壊しているからです。動物たちは「人間の子どもは学校で学ぶ。未来をつくる力がある」と、一緒に行けるよう神様にお願いするのですが・・・感動的などんでん返しの大団円は、観てのお楽しみ。
赤道直下のキリマンジャロ山は標高によって気候、植生が違います。麓のサバンナから熱帯雨林のジャングルを経て、草原、砂漠、氷雪地帯へと環境が変化します。登頂はまるで地球を赤道から極地へ移動するかのような、あるいは四季の移ろいを1週間で体験するようなもの。貴重な映像が見られますよ。
キリマンジャロ登山のためにはガイドやポーターの同行が義務付けられており、登山道も山小屋も整備されています。急勾配も少ないため登頂は比較的容易と言われていますが、標高4000mを超えると高山病のリスクが伴います。安全のため10歳以下の登頂は許可されていません。
今回のロケには体力に自信のある中学生の男女2名を選抜します。それでも頂上まで登りきることができるか保証はありません。しっかりトレーニングし、いずれか1名でも氷河に辿り着けることができるよう願います。
もし登頂に成功したら、そして山頂に氷河が残っていたら、タンザニアの子どもたちはどんな映像を記録するでしょうか。
企画会議ではこんな声が聞かれました。もし、まだ氷河が残っていたら‥‥「解けていく氷に触れてみたい」「僕たちを待っていてくれたんだ。『ありがとう』と言いたい」「もし、すごく小さかったら悲しいし、人間のせいなら謝りたい」もう完全に解けてしまっていたら‥‥。「 確かめに行こう」
孤児だからという理由であきらめなければいけない夢はない
タンザニアでは本来、孤児の多くは親戚の元で養育されますが、労働力として扱われたり、性的虐待を受ける子たちも少なくありません。里親の元を逃げ出して、路上で物乞いをする子たちもいます。夢を尋ねられると、学びたい、食べたい、生きたいと答えていた子どもたちが、毎日学校に通うことができるようになると将来は医師に、保育士になりたいと夢を抱くようになります。親をエイズで亡くし、自らも母子感染している子どもたちも、目標をもって生きようとする気力を奮い起こすのです。
私が孤児たちとビデオづくりを始めたのも、夢を叶えようとする自分に自信をもってほしいと思ったからです。企画、制作、上映という過程の中で、子どもたちは社会の中の自分を意識し、協調性と表現力を育みます。自分たちにも、誰かの心を動かす力があると気づきます。
私たちNPO法人ムワンガザ・ファンデーションは、タンザニアのNGO・SWACCO (Songea Women AndChildren Care Organization)と提携して、孤児院の建設と運営のほか、里親への経済的支援も積極的に行っています。とりわけ就学にかかる経費は全額を負担してきました。孤児たちの自立支援に教育が不可欠と考えるからです。
より多くの方々からご協力をいただき、孤児たちには自分たちが世界とつながっていることを感じながら作品づくりに臨んでほしいと思っています。
どうか、皆さんのお力を貸してください。
資金の使い道
登山費用:約30万円(大人2名子供2名)
撮影経費:約20万円(機材借用、取材謝金ほか)
描画教室:約15万円(講師謝金、画材代ほか)
作画経費:約10万円
諸 経 費:約10万円
ご支援額が目標金額を大幅に超えることができましたら、可能な限り多くの子どもたちが登頂撮影隊に参加できる機会をつくりたいと思います。
実施スケジュール
天候が安定している乾季の12月下旬から3月上旬がキリマンジャロ登山のベストシーズンです。3月中にも実施したいところですが、タンザニアにおける新型コロナウィルスの感染状況を注意深く見守る必要があります。ロケには孤児院のスタッフと撮影助言者が引率し、日本からはリモートでサポートしていきます。
当面はアニメーションの制作を先行して、描画教室と原画制作を進めていきます。
動画2本の完成は2021年5月の予定です。
施設の中は3密状態ですが、手づくりマスクで感染予防
孤児たちのフィルモグラフィー
Dada Mama 鶴川ショートムービーコンテスト2017 町田市文化・国際交流財団理事長賞
キミハルシネマ・フェスティバル2020 優秀賞
『ダダママ』はスワヒリ語で母親代わりの姉、『かかねえちゃん』という意味です。両親をエイズで亡くした少女が、弟と様々な困難に立ち向かい、夢を追いかけて生きていく物語です。
普通の日々 パナソニックKWNグローバルコンテスト2019小学生部門グランプリ
第1回石垣島・湘南国際ドキュメンタリー映画際国際コンペ部門グランプリ
東京ビデオフェスティバル2020アワード
電気も水道もない孤児院と、学校と畑が自分たちの知っている世界。日常の営巣と現場オンを積み重ねることで、ノンバーバルでシンプルなメッセージを伝えます。普通の日々を生きるための作業や学び、遊びの一つひとつを素直な目線で撮影した子どもたちに、知らない世界への憧れや好奇心が芽生えています。
※他の作品もYouTubeにアップする予定です。活動報告欄をチェックしてください※
新型コロナ感染症が世界的に蔓延する中で、本プロジェクトをより実施しやすいようアップデートしての再チャレンジとなります。どうか、よろしくお願いいたします。
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