■音楽を通じて、地域のみんなが参加することで街中を元気にしたい!
盛岡市で生まれ育った私黒沼には、常々「幼少期の頃は街中がもっと元気だったのではないか」という思いがありました。
2006年、縁あって、中心市街地活性化事業の一環で、文化を通じて街中を元気にするためのイベント「岩手公園開園100周年イベント 盛岡城いしがき文化祭」の運営を担いました。
上記のイベントを通じて「音楽は世代を超えて出来る文化の象徴」だということを痛感し、翌年の2007年からは仲間達とともに、音楽に特化したイベントとして過去10回にわたり、いしがきミュージックフェスティバルの運営を手掛けています。
続けることには理由があります。回を重ねるごとに、行政、警察、企業などを含め、関与してくれる人が少しずつ増えており、そういう人たちに支えられて運営ができるようになってきました。また、来場者も笑顔で来てくれます。今までの盛岡にはなかった関係性、光景だと思っています。
小さなエピソードですが、登校拒否だった子が「いしがきミュージックフェスティバル」の次の日から学校に行くようになったと聞いたことがあります。
また、若者の音楽とは無縁だと思われる高齢者の方から、笑顔で「元気で良いね!」と声をかけられたり、商店街の飲食店の方からは「今年も楽しみにしているよ」と言われたりします。そういった皆さんの生の喜びや温かさも自分たちの原動力になっています。
■震災で改めて認識した「いしがきミュージックフェスティバル」の役割
2011年は、運営側としても開催すべきかどうか迷いました。被災した方々のことを思うと、「いしがきミュージックフェスティバル」が笑顔であふれること自体、岩手県沿岸部と内陸の盛岡との温度差を助長してしまうのではないかと思ったからです。
しかし、沿岸の友人など、色々な方の意見を聞く中で、元気を分かち合える瞬間があって良いのだと思い、開催を決定しました。開催したことで、実行委員会内でも「いしがき」の重要性を再認識して結束力が高まりましたし、盛岡市だけの取組みではなく、岩手県全体として捉えるべきものだと思うようになりました。
いしがきミュージックフェスは今年で11回目を迎えます。音楽をツールとして中心市街地の活性化、賑わい再生を目的としてスタートし、2011年の東日本大震災以後は岩手の復興の象徴を担うイベントとして成長してきたという自負があります。
県内のアマチュアミュージシャンの創出を大きなコンセプトとしながら、各ステージに特色を持たせ様々なジャンルおよび年代の地元アーティスト、高校生、大学生、ゲストアーティストの競演等ユニークなコラボレーションを展開しています。
■岩手からたくさんの「元気」をお届けします!
本編でも書きましたが、今後は、岩手県全体を巻き込んだイベントにしていくとともに、文学、アートなど様々な文化活動を推進できる「芸術祭」という位置づけになっていくことを理想としています。夢はたくさんありますが、原点はやはり「県内の若いアーティストが成長する場」の創出を通じ「まちを元気にする」というコンセプトです。メジャーアーティストと同じステージに上がる機会を経て、若い子たちの夢が叶う場所、それをまち全体が応援するイベントであり続けたいと思っています。
2011年の東日本大震災以降、被災された皆様、そしてそれを支える多くの方々から、感謝と激励のお言葉をいただきました。音楽というコンテンツが街を、そして人を勇気づけ明るく照らすのだということを実感し、継続することの大切さを感じています。
未だ様々な試行錯誤はあるものの、この音楽イベントが城下町盛岡を、このような時代においても元気にしていくことが証明できる、岩手県にとって大切な事業だと確信しています!