3月の本番に向け、絶賛稽古中の『なんのこれしき2020』。今日は脚本家と演出家のこぼれ話を話半分にお聞き願いたいと思います。
唐突対談「脚本島川 × 演出大舘 語り出したらキリがNIGHT」
島川柊(脚本):ようこそ。と言うことで急に始まりました対談です。『なんのこれしき2020』感染症対策を徹底しながら稽古を進めていますが、演出、どんなところにこだわっていますか?
大舘実佐子(演出):"人力"です。VRとかプロジェクションマッピングとか否定しているわけではないんだけど、舞台で生身の人間が演るってことの意味、迫力をやっぱり見せたくて。今って、人の想像力が封じ込まれ気味になっちゃってると言うか。曖昧な部分が排除されていっていると言うか。似たような話が『なんのこれしき2020』の劇中歌にもあるんです。
『これから生まれる子供たちは』
作詞 島川柊 作曲久野飛鳥
これから生まれる子供たちはCDを知らないの
なんでもダウンロードの時代だから
音を波じゃなくて二進法で感じたり
音楽に始まりと終わりがあると
意識しないかも
これから生まれる子供たちは手紙を知らないの
どこでもオンラインの時代だから
夢や希望はAmazonとNetflixにある
人生に始まりと終わりがあると
気にしないかも
これから生まれる子供たちは圏外だと愛も囁けない
なんでもダウンロードの時代だから
言葉は声じゃなくて手のひらに乗って
呼吸に始まりと終わりがあるの
忘れちゃうかも
そして世界が四六時中
繋がっているのよ
大舘:この歌、デジタルな時代について良いとも悪いとも言っていない。「手紙知らないの」と言いつつ「それって悲しいよね」とは言わない。
島川:物質や習慣から離れるのは寂しいけれど、それは時が流れている証明だなと。私たちの子供の世代は私たちが死んだ後も生きて、私が見ることのなかった景色を見るんだなあ、と。当たり前のことなんだけど、ふと面白く、希望に感じる時がある。それを歌詞にしました。
大舘:微妙な、不思議な、曖昧な気持ちや考えをそのまま作品にするの、生々しくて良い。舞台って人と人のコミュニケーションを見せるもの。本当の会話ってわざとぼかしたり、矛盾したりする。それを作品にするのは難しいけど、人間らしくて面白いと思う。
島川:日々過ごしていると、物事に白黒つけることって本当に困難だよね。大人になるほど特に。複雑な現実を生きる上で、曖昧ってものは決して悪い意味だけではないなと。
大舘:高校生の頃とか思い出すと、私とても子供だった。(突然過去の恋愛を振り返る。)好きならすぐ告白しなきゃとか、相手にもはっきり気持ちを言って!って思ってた。曖昧にしておくという選択肢、なかったなあ。
島川:あえて言葉にしないけど、お互い完全に気持ちわかってる。っていうのが、ええ恋でんねんまんねん。
大舘:言うとりますけどね。『なんのこれしき2020』の登場人物たちも、もれなく矛盾し倒していて。コメディたっぷりダンスたっぷりの楽しい作品なんだけど、その奥にしっかりと人間らしさを描いていきたい。多面的で揺れている、正直な人間賛歌を生み出そうとしています。
島川:応援してくださっている皆さま、3月を楽しみに待っていてほしいです。
【コロナ禍でも、高いクオリティの作品を安全に多くの皆様にお届けしたいです。皆様からのご支援をお待ちしております。また、すでにご支援いただいた皆様には、心より感謝申し上げます。『なんのこれしき2020』スタッフ・キャスト一同】
ミュージカル『なんのこれしき2020』 2021年3月11日-15日 BOX in BOX THEATER
企画製作:東のボルゾイ