はじめに
今から約100年前、まだ東京都大田区が「大森区」と「蒲田区」に分かれていた時代より少し前のお話です。現在の大森~馬込一帯に、『馬込文士村』とよばれる地域がありました。
川端龍子、小林古径、伊藤深水などの画家、萩原朔太郎や北原白秋といった詩人、そして尾﨑士郎、宇野千代、川端康成、村岡花子などの作家たちが居を構え、お互いの作品に影響を与えながら暮らしていました。このような文士村は、ほかにも田端や、阿佐ヶ谷にも存在しており、現代のようにネットも携帯もない時代、若かりし文士達が近所に住まうことによって交流を深めていた事がうかがえます。
「文学史上の作家の話?」と思われるかもしれません。でもお金は無くても自由な精神を持ち、異性問題で泣き笑い、時には朝まで飲み明かし、新しいことに興味深々だった彼らの暮らしぶりは、今の若者のそれと全く変わりません。
『馬込文士村演劇祭』は、そんな彼らの作品を演劇やダンスといった実演芸術をとおして皆様に紹介し、文学の魅力を感じてもらうとともに、地域文化振興への貢献を目指した地域密着型の企画です。
ご挨拶
こんにちは。公益財団法人大田区文化振興協会と申します。
このプロジェクトをご覧いただき、ありがとうございます。
私どもは、昭和62年に東京都大田区における文化振興を目的に設立されてから、30年以上にわたり活動を続けてまいりました。指定管理者として、大田区の文化施設の管理・運営を行うほか、音楽、演劇舞踊、伝統芸能、美術など、様々なジャンルの主催事業を実施し、区民の自主的文化活動の活性化や、多くの方々に文化芸術の鑑賞機会を提供する事業を行ってきました。
近年は、地域の貴重な文化資源を活用するための事業として、「OTAアート・プロジェクト」と題し、地域に点在するさまざまな文化芸術に関わるヒト・モノ・コトを資源として紹介し、未来に向けて新たに共創していくための創造プロジェクトを開始いたしました。その1つが『馬込文士村演劇祭』です。
『馬込文士村演劇祭』立ち上げ企画と映像作品『空想舞台』の制作
2019年度、大田区文化振興協会と大田区池上に稽古場と拠点を置く劇団 山の手事情社は、馬込文士村や大田区にゆかりのある作家の作品をする企画『馬込文士村演劇祭』を立ち上げました。
アートディレクターには、同劇団主宰で演出家の安田雅弘氏を迎えました。
2019年度『馬込文士村演劇祭』プレ企画「リーディング公演&トークイベント」
2019年11月20日 「馬込文士村」の記憶も薄れつつある地域の方に、当時文士達に愛された地元の古書店「山王書房」の店主関口良雄氏の名著「昔日の客」を介して、あらためて当時の話を紹介する対談や、馬込文士の代表格 尾﨑士郎の原作『空想部落』の一部と、翻訳家・児童文学者の村岡花子翻訳の『しあわせな王子さま 』を公演として鑑賞していただくという企画を行いました。
地域の方、特に「馬込文士村」を知らなかったという方にもたくさんお越しいただくことができました。
ところが、2020年度の第一回開催に向け、順調なスタートを切ったと思った矢先、コロナ禍に苛まれる事になります。開催を予定していた大森周辺の劇場での公演は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため全て中止となりました。
それでも少しでもピンチをチャンスに変えたい!
そんな想いから演劇祭に参加予定だった俳優や劇団の協力により「映像」という形で文士村の魅力、演劇祭の可能性を感じていただくための作品を制作することにしました。
こちらは当協会のYouTubeチャンネルから無料でご覧いただけます。
(小一時間ありますが、意外にもあっという間です。ぜひご覧ください!)
文学の魅力、演劇の面白さ
近年、活字離れが叫ばれて久しい上、100年近く前の小説となると、その多くが今や古本屋、インターネットでも入手困難です。
けれど、「古くさい」というイメージだけで避けてしまうには、あまりにももったいない! 現代の私たちが抱える悩みや苦しみに向き合う作品や、ささいな日常を表現豊かに描いた魅力ある作品も多く存在します。
そうは言っても、忙しい現代人にとって、なかなかじっくり小説を読む機会は少ないですよね・・・。
そんな方のために、プロの演出家の視点でご紹介することで、その面白さを感じていただければ実際に本を手に取るきっかけになるのではないかと思っています。
このプロジェクトで実現したいこと
[第一回目の開催予定について]
開 催 日:2021年12月3日(金)、4日(土)、5日(日)
実施会場:「大田文化の森」(東京都大田区中央2-10-1)
「大田文化の森」のホール、多目的室、会議室、展示スペース、広場など、複合施設を最大限に有効活用し、演劇だけでなく、リーディングや講座、ワークショップなどの企画を盛り込み、どなたにも楽しんでいただける内容を検討しています。
①居酒屋をはしごする「ちょい飲み」ならぬ、「ちょい観演劇祭」
気軽に複数の作品を楽しんでいただくため、公演時間は30分以内という短い作品を複数個所で上演します。
②『馬込文士村』をまちあるき
地域のまちあるきガイドさんと連携し、当時の暮らしぶりやエピソードを交え、馬込文士村のあった場所をご案内します。
③活字の魅力を再発見
今は多くが絶版となってしまった書籍などを集めた古書市を期間限定でオープンするほか、当時の印刷技術「活版印刷」を体験できるワークショップを開催します。
④VR(ヴァーチャルリアリティ)で鑑賞
コロナの影響で、舞台の鑑賞方法も大きく変わってきました。この演劇祭では、まるで実際に舞台を鑑賞しているかのような体験ができるVRを導入し、様々な都合で直接会場に来られない方にも、ご自宅で楽しめる機会をつくります。また、会場にはVRがどんなものなのかを試していただける体験ブースを設けます。
資金の使い道
2021年の12月は、まだこのコロナ渦から完全に抜け出せていない可能性が十分あります。
安心してお客様に来ていただくため、客席数を減らしたり、感染予防の対策も必要になることが予測されます。そのような状況でも十分に楽しんでいただける充実した企画内容にしたい。
そんな想いからこの度このプロジェクトに挑戦することにいたしました。
ご支援いただいた資金は、主に企画の運営費に使わせていただきたいと思います。
■クラウドファンディングの目標金額:50万円
■ご支援いただいた資金の用途
・企画の運営費(主にVRでの録画費用や、ワークショップの企画運営費など)
・リターン品の準備資金や発送費
・手数料・・・9%+消費税
<All-in方式で実施します。>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
実施スケジュール(予定)
・ 5月 リターン品の準備~順次発送 、開催に向けた企画の準備、出演団体との交渉
・ 6月 企画の概要を「馬込文士村演劇祭」Facebookページや当協会HP上で告知
・ 8月 公演スケジュールおよびチケット発売日等のお知らせ
・ 9月中旬 チケット販売開始
・12月頭 『馬込文士村演劇祭2021』開催
リターン品のご紹介
①1,000円 『お気持ちコース』
■当協会からのお礼メール
■「馬込文士村演劇祭」のアートディレクターを務める安田雅弘氏(劇団 山の手事情社主宰・演出家)からのメッセージ動画
②3,000円 『馬込文士村 知りたいコース』
■当協会からのお礼メール
■「馬込文士村演劇祭」のアートディレクターを務める安田雅弘氏(劇団 山の手事情社主宰・演出家)からのメッセージ動画
■大田区立郷土博物館発行の「馬込文士村ガイドブック」1冊進呈
■『馬込文士村演劇祭』特製「活版しおり」3枚セット
③5,000円 『演劇で文学を楽しむコース』
■当協会からのお礼メール
■「馬込文士村演劇祭」のアートディレクターを務める安田雅弘氏(劇団 山の手事情社主宰・演出家)からのメッセージ動画
■大田区立郷土博物館発行の「馬込文士村ガイドブック」1冊進呈
■「馬込文士村演劇祭2020映像編 空想舞台」全上演作品の完全収録版DVD
④10,000円 『とにかく演劇祭全面応援コース』
■当協会からのお礼メール
■「馬込文士村演劇祭」のアートディレクターを務める安田雅弘氏(劇団 山の手事情社主宰・演出家)からのメッセージ動画
■大田区立郷土博物館発行の「馬込文士村ガイドブック」1冊進呈
■「馬込文士村演劇祭2020映像編 空想舞台」全上演作品の完全収録版DVD
■『馬込文士村演劇祭』特製「活版しおり」3枚セット
■2021年度の開催時、当協会のホームページ、公式パンフレットにご芳名を掲載
〜2021年12月、大田文化の森での演劇祭開催時に当協会のホームページと、作成するパンフレットにご支援者としてお名前を掲載させていただき、送付させていただきます。
(ご希望の方は支援時、必ず備考欄にご希望のお名前をご記入ください。)
推薦の言葉
終わりに
2020年、全世界がコロナウィルス感染症の影響を大きく受けました。舞台芸術業界もその1つです。舞台業界に携わる多くの人が、これからの活動に不安を感じ、今後の在り方を考える機となりました。
私たちは、今回「映像」での演劇公演にチャレンジしたことでとても大きな手応えを感じた一方、やはり生の舞台を見ていただきたいという気持ちを強く持ちました。そして文学を演劇で紹介するという今回の取り組みによって、演劇のもつ可能性を探ると同時に、文士村のあった場所、大森・馬込の歴史と魅力を、全国に発信する機会にするため、精一杯取り組んでいきたいと考えています。
どうか皆様にご賛同いただき、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
公益財団法人大田区文化振興協会
最新の活動報告
もっと見る「活版印刷のしおり」サンプル公開!
2021/04/29 12:30お待たせしました~。しおりのサンプルが出来ました!!画像だとちょっと分かりにくいのですが、活版印刷ならではの凹凸ある文字が集めの用紙に押されて鈍く輝いています。色は詩のイメージに合わせて選びました。デザインについてはいろいろ検討した結果、馬込文士村の企画らしく文士達の作品から1文お借りすることにしました。用紙は3色。それぞれの色にも一応、意味があります。■ 深い青色:北原白秋 『ペチカ』雪の降る夜は 楽しいペチカ ペチカ燃えろよ お話しましょ昔 昔よ 燃えろよペチカ■ 鮮やかな赤色:萩原朔太郎 習作集第九巻 『少女よ』色の色なるくれなゐ れいしの核なるくれなゐひとのひとなるむすめ たましひのみやなる少女よ■ 薄い緑色:室生犀星 動物詩集 『鶯のうた』春はいいね 枝からすべつても いたくないね。朝から鳴いてゐると 声がだんだんよくなる。ひと声鳴くと 隣近所の庭が明るくなる。 印刷は、大田区鵜の木に制作工房をかまえる「オールライト」さんにお願いしました。カッコいい看板。後ろにはたくさんの活字。この立派な活版印刷機は、ドイツのハイデルベルグ社 のものだそうです。こちらが印刷機。重厚感ありますね。こちらのリターンは、3,000円以上ご支援の方にお届けします。読書のお共にぴったりです! もっと見る
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