「私はこの人をよく知っている」と信じていた人の結婚式やお葬式などに参加したとき、ご家族や親しい友人が彼のことを語るのを聞き、「本当はこの人のどれだけを知っていたのだろう」なんて考えさせられた経験はありませんか?
写真展の準備をしながらプリントを吊し、会期中は来場してくださった方々と言葉を交わし、終了後には撮影の現場で、また応援をいただく中で、私はずっとその気づきの最中にいます。
それは感傷的なものではなくて、「ああ、この人がけいちゃんが話していたあの時の人ね!」とか、「けいちゃんがあれをするようになったきっかけはこの人だったんだ!」と、輪っかと輪っかがつながって、実行委員の皆ともより親しくなれたし、自分まで世界が広がるようなお得な気持ちです。
1年前、世の中は得体の知れない疫病のせいで重苦しい雰囲気でした。私もまた大切な誰かを失くしたらどうしようと不安で落ち込みました。
そんな中、ご近所のお母さんたちと続けているイシノマキモノの活動をお休みにしようと決めた時期に、仲間たちの玄関を遠慮がちに訪ねたことがあります。しょげた様子の私に皆が口々に言ったのは、「今度は電気も水もあるし、あったかい布団もある。家だってあるんだよ。」「海の仕事なんかいつも想定外なことばっかだったよ。きっと大丈夫。」励ますつもりが励まされてしまったのでした。
あれだけの被害を受けて、できることと思いやりを持ち寄り、歯を食いしばり、泣いて、笑って、なんとか皆でやってきて、あっという間に10年。
けいちゃんが撮り続けたある家族。赤ちゃんは小学生になり、お姉ちゃんは自分で車を運転して会いにきてくれるようになりました。
皆、忘れないよ。お空の可愛い子たちのことも。
支援を受けてきた人たちって、立場上お礼ばかり述べがちです。
もちろん感謝は大前提。
でも、ちょっと立ち止まって、けいちゃんの写真を眺めて、あんなこともこんなこともあった、もちろんダメダメな日もあったけど、頑張ったよねー、私たち!と言い合える機会があっても良いのではないかしら。被災者と支援者の境目なんて見えない今、それを意義のあることだと感じてくれる人も多いのでは?
そう思った1年前の私は、気づけば『果たし状』を書きなぐり、けいちゃんの家にダッシュしました。
1年後。願いは叶い、頼もしい仲間と一緒に濃厚な写真展を堪能することができたのでした。
あと1日でクラウドファンディングが終了です。びっくりするほどたくさんの応援をいただいていることに毎日感激しています。クラファンは終わるけれど、写真集の撮影と制作は続きます。けいちゃんの写真にまつわる話ももっともっと聞きたいし、ぜひ写真撮影の予約もしてほしいです。
実行委員長としては、そろそろリターンの『果たし(た)状』を書かなければいけません(お礼のお手紙は果たし状スタイルになる予定なので)。ページをめくりながら、あの時こんなことがあった、この人がこんなこと言ってたよね、といつでもちょっと立ち止まって眺められる、
そんな『10年の幸福』が詰まった写真集をつくって、必ず届けるから、待ってろよ!
おねがい。
実行委員長 遠藤綾子