こんにちは、ありまつ中心家守会社の浅野です。ゆあんのパンツに使われている生地がストックしてあり、パンツ用に染色加工していただいている野々山絞りさんにお伺いしました。今回はフォトレポートという形式で、加工の現場やリターンにある染色体験の環境をお伝えします。有松から北東へ車で走ることおおよそ30分、愛知県みよし市に野々山絞りがあります。染色工場に足を踏み入れると、もわっと湿気や薬液の独特な匂いに包まれます。有松・鳴海絞りでは素早く堅牢な染色加工ができるスレン染料が好んで使われており、加工のために温度を加えた染液や特徴的な匂いのある助剤が使われているからです。浴衣など有松・鳴海絞り製品の染色加工・卸販売をおこなう野々山絞りも例外ではありません。工場に到着すると社長の野々山元春さんとスタッフの方が染色加工をされていました。糸でくくられたブラウスを大きなステンレスの鍋に入れ、ゆっくりとかき混ぜながらネイビーに染め上げているところでした。水を吸い込んだ生地はとても重そうです。大きな鍋もそうですが、染色工場には普段目にすることがない設備がたくさんあります。「僕が働き始めた20年以上前から現役の機械ばかりだよ」と野々山さん。ガッシャンガッシャンと大きな音を立てながら余分な染料を洗い落とすための機械や、回転速度でモーター音が変わる脱水機も年季の入ったものばかりです。シャープな見た目をした現代の生活家電とは違い、ぼってりとした形状やシンプルな機構をした年季の入った工業用設備に愛着を僕は感じてしまいます。よく使う染料が整理された染料室も、家庭にはない一斗缶に入った洗剤も野々山さんたちには当たり前の風景です。でもデスクワークが多いわたしにとって、目に映るものが新鮮に写ります。工場は『生きた現場』です。ものが生まれる環境に触れると毎回、とても刺激を受けます。染色加工が一段落した野々山さんに工場をご案内いただきました。先にご案内いただいたのは浴衣など絞りの柄をデザインする作業場です。ゆあんのパンツとは異なる図案ですが、同じように「縫い絞り(ぬいしぼり)」をしている生地や図案をお見せいただきました。「つくった図案の中には、もうつくれなくなっているものもいくつかあるよ」とお話されていたことが記憶に残っています。人の手でチクチクと非常に細かいピッチで縫い上げる加工を受け入れてくれるところは、くくり職人の高齢化と需要減少による離職などによって年々少なくなっているようです。いくつか繊維産地を回って聞いている限り、どこでも生産する予定の数よりも多く糸や生地を仕入れます。生産途中でエラーが起きることを想定して、保険をかけておくのだそうです。その中でも有松はくくり作業と染色工程でエラーが出ることもあり、特に仕入れの数が多いのだとか。他の産地が100つくるのに120仕入れるところを、有松では140ほども仕入れることもあるのだそうです。くくられた状態でストックしておき、必要なときに求められた数だけ染めて卸すこともあるそうです。かつてはそれだけリスクのある仕入れをしても利益があるくらい売れていたのでしょう。また、絞りまつりなどで僕のような素人が見てもほとんどその失敗がわからないような傷や染めムラのあるAB品は手頃な価格で直販されて資金回収できたそうです。しかし、売れなければ当然、在庫は積み上がっていきます。新型コロナウイルスの影響で夏祭りが相次いで中止となり、浴衣の販売先が買い控え、野々山さんだけでなく有松・鳴海絞りに携わる事業者は誰もが頭を抱えている状況です。わたしたちが出会ったゆあんの生地は、在庫の山の中にあったことはクラウドファンディングのページでお伝えしたとおりです。ゆあんのパンツ・ドット柄は眠っていた絞り生地の特徴を再度読み解き、別の用途として再生させる取り組みです。最高額のリターンでは普段は入ることのない染色工場で、支援者が自らゆあんのパンツを染色することができる体験が含まれています。有松・鳴海絞りの工程を体験し、時間の積み重ねで育まれたものづくり文化に触れる内容になっています。ぜひ『生きた現場』でものが生まれる瞬間に立ち会ってみませんか。みなさんのご支援をお待ちしております!写真|近藤大芝