2021/05/19 19:24

にんじん湯復活に関わってくださった地元の協力メンバーをご紹介します。

今回ご紹介するのは、にんじん湯のクラファン告知映像を始め、記録映像を制作してくださった舞台映像作家の山田晋平さん。にんじん湯店長の大武との対談形式でお送りします。(以下、敬称略)


プロフィール
山田晋平  舞台映像作家

http://yamadashimpei.com/

愛知県豊橋市在住。演劇やコンテンポラリーダンスを中心に、オペラ、コンサートなど、様々な舞台芸術で使用される演出映像の製作を専門とする。近年では、劇場や美術館にとどまらず、まちなかの建物や生活空間にまで表現の場を広げ、サイトスペシフィックなアートプロジェクトの企画・監修なども行っている。2020年6月、水上ビル(大豊商店街)内に、アトリエ兼住居「冷や水」をオープン。地域に対する芸術普及活動も積極的に行う。


― 人蔘湯の映像制作のきっかけは?

山田 改装の様子を残しておきたいという話を大武さんから聞き、2月ごろから人蔘湯を撮影するようになりました。来てみたら本当に作業が面白い。大武さんや湊さんが自分たちで、ほこりまみれになりながら釜の搬出や配管などの作業をやっているのを見て「これはすごいわ」と、ちゃんと撮りたいと思いました。

大武 自分たちでやる理由は色々ありますが、一番大きいのはコスト削減。もう一つは、スタッフのスキルアップのためです。銭湯自体が減っており、関連する業者もだんだん少なくなっているので、自分たちで修理できるようにしておかないと、店を残していけなくなってしまう。ですから、なるべく自分たちでやっています。

山田 頼もしいです。映像はロビーに展示してもらい、「人蔘湯がこんな風にできていったんだ」という様子を皆さんに見てもらえたら面白いかなと思っています。

クラウドファンディング告知映像より


― 現在、近くの水上ビルにアトリエ兼住居「冷や水」を構えている山田さん。以前から人蔘湯の常連さんだったと聞きました。

山田 「冷や水」の改修工事中はお風呂がなかったので、1カ月半ほど定休日以外は毎日入りに行っていました。お風呂ができてからも、たまに行っていましたが、昨夏に長いこと東京へ出張していて、帰ってきたら人蔘湯が閉まったと知って、めちゃくちゃショックでした。


― 人蔘湯での思い出は?

山田 刺青の人が多くて、最初はとまどいましたが、わりとすぐに慣れましたね。ある時、6人中4人が刺青を入れている男たちで、入れていないわたしの方がマイノリティになったときには驚きました(笑)

大武 そこは少し気にしている部分でもあります。銭湯が多く、そこへ行くことがカジュアルな京都に比べ、銭湯がほとんど残っていない豊橋ではスーパー銭湯しか知らない若者も多い。ここで初めて刺青の人に出会う可能性があり、怖い思い出にならないかなと心配しています。

山田 目的を考えてみれば、外見がイカツい人もお風呂にリラックスしに来ているわけなので、他のお客さんに絡んだりしないだろうと思うんです。どこの銭湯に行っても刺青のある人はいますが、一緒に気持ちよくなれてるといいなと思っています。

大武 若い人たちには、過剰に怖がらないでほしいと思っていて、今みたいな心持ちでいれば大丈夫なんだ、というお手本のようなエピソードです。スーパー銭湯ではお断りをしている所が多いですが、銭湯はもともと、公衆の衛生のための場所なので、刺青が入っていることでお断りをしないというスタンス。分け隔てなくお客さんを受け入れているというだけです。最近は刺青やタトゥーをファッションとして楽しむ人も増えていますし、マナーを守っていただける方であれば、受け入れていきます。

山田 人蔘湯がリニューアルして雰囲気が変わって、そういう人たちが来にくくなってしまったりしたら、それはそれで嫌だなと思います。公共性がとっても高い場所だからこそ、刺青がある人だけでなく、外国人など色々な人に開かれているべき場所だし、そういう佇まいの人蔘湯であり続けてほしいです。


― 風呂好きな山田さんは、銭湯ではどのように過ごしていますか?

山田 まず体と髪の毛を洗います。かけ湯だけして入る人もいますが、僕は絶対、全部洗ってから入ります。その方が、お湯の質が分かる気がするんですよ。お湯に対して肌の感覚が鋭くなるというか。必ず全部洗ってから、できるだけジェットとかがないノーマル風呂に入りますね。人蔘湯なら深風呂。そこから水風呂に一回入って、そのあとラドンに入って水風呂、最後にジェットで体をほぐして出る感じですね。大体30分から40分位。お風呂に入ると本当によく疲れがとれる。お風呂は僕の健康管理にとって必需品です。


― 今後、人蔘湯とコラボしてみたいことは?

山田 月に1回アトリエで行っている「月イチ水あび」というアートイベントで、人蔘湯とコラボしたいと思っています。銭湯でどういうディテールを楽しんだらいいか、建築的に見ても面白いし、いろんなマニアックな視点がある。本当のマニアがどこを見て楽しんでいるのか教えてもらいたいですね。銭湯に詰め込まれている人の知恵や工夫、創造性みたいなものについて聞きたいです。

大武 私はタイルが貼ってある向きとか見ています。昔の大工さんの考えを感じるところが銭湯にはたくさんありますね。

山田 ぜひ一回レクチャーしてください!「こういう視点がある」と聞くだけでもとても面白いと思います。


以上、山田さん、ありがとうございました!

山田さんに制作していただいた にんじん湯の映像は、YouTubeチャンネル冷や水でご覧いただけます。

また、山田さんが映像を担当された映像演劇『風景、世界、アクシデント、すべてこの部屋の外側の出来事』が21日まで穂の国とよはし芸術劇場PLATで上演中です。こちらもぜひ!



次回のメンバー紹介は、建築家の黒野有一郎さんを予定しております。お楽しみに!

引き続き、ご支援よろしくお願いいたします。

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インタビューは地元ライターの飯塚さんに執筆いただきました。わかりやすい文章をありがとうございます!

ライター:飯塚雪
1985年、愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後に東京へ上京、地元新聞社への就職をきっかけにUターンする。7年間の記者活動を経てフリーに。2020年に立ち上げたローカルwebメディアaoものにて豊橋・田原地域のニュースを発信中。

飯塚さんに執筆いただいた、にんじん湯のイベントレポートもぜひご覧ください!