2021/04/18 17:43

 この絵本制作に際して、私は二つのテーマを決めました。

 一つ目は、戦争を決して繰り返してはならないと伝えることです。

 4年前、壁画制作のボランティアで、初めてホーチミン戦争証跡博物館を訪れました。ごく近い過去、ベトナムでは国を二分しての殺し合いが行われ、終戦後の今もなお、その影響に苦しむ人が大勢いることを知りました。もし、これが日本の出来事だったなら。私は家族や知人の顔を思い浮かべ、恐ろしさと怒りに震えました。どのような理由があろうとも、人が人の命や健康、希望を奪っていいはずはありません。私たちは過去の過ちから学ばなくてはなりません。

 二つ目は、ドクさんの人生を知ることによって、日本の子どもたちに生きる力を感じて欲しいということです。

 結合双生児の写真を見た時の衝撃は大きいのですが、「ひどい」「かわいそう」と思ってもいつしか忘れてしまうのです。私もそうでした。でも、実際のドクさんは多くの人に愛され、家族に恵まれ、困っている人をサポートする仕事をしながら世界中に平和を発信する影響力を持つ大人に成長しました。その事実を広く伝えたくて制作したのが、この絵本です。

 ドクさんはかわいそうな人なのでしょうか。誰よりも自分を生かし豊かな人生を送っているのでは。

 ぜひこの絵本を読んでいただき、本物のドクさんに接することによって、「どんな境遇にあっても、希望を失わず行動すれば人は幸せになれる。」と、信じてください。今、様々な問題で苦しんでいる方が、少しでも明るい気持ちになってくだされば本望です。


絵 江原 三保子(日本画家)