2021/03/17 09:00

『出会い』
遡ることもう10年も前の話だ。気の合う友人と始めた『カガヤ区』という活動の初期メンバーとして、SEKIYA(齋藤)さんに出会った。 カガヤ区は、熱い想いや光るアイディアをもった大学生の事業をサポートすることを目的として、齋藤さんと僕も含めた4人の大人で立ち上げた事業。当時の活動拠点は、福島大学のキャンパス近くに設けた、僅か12畳の空間だった。コンテナを改造したこの小さな空間の使い方は様々で、大学生のために使う以外にも、近所の子供たちに向けて授業をしたり、自分たちでカフェを開いたり。 齋藤さんは、若者の応援者であり、自らも挑戦者だった。
『マンデリンの風』
 きっと多くの人が共感してくれるだろう。 僕にとってのコーヒーは、大人の味。何故なら、ぐっと我慢して飲む物だった。苦いのが正解か?薄いのが正解なのか・・・?大人になった後もコーヒーの美味しさなんて分からず、体力勝負の若手建築士の時分、せいぜい眠気覚ましの相棒といったくらいに思っていた。 そんな時、SEKIYAのコーヒーに出会う。 齋藤さんに「どんなコーヒーがお好みですか」と問われて、咄嗟に「苦いのが好きです」と答えたことを覚えている(苦笑)。そう、僕にとってはあの苦〜いコーヒーを美味いと言えたら、物の分かる大人の証なのだから。 そんな僕の不安を察知してくれた齋藤さん、まずはコーヒーを淹れる前にと、話をしてくれた。それは世界中の産地や生産者、そして深煎り・浅煎りの豆の香りや味わいの違い。僕には聞くこと全てが新鮮で、話にどんどんと引き込まれていく。 健康で肥沃な大地で育つ豆の美しさ、その大地がどんな基準で健康と言えるのか。さらにはその背景にあるコーヒー豆産業の厳しい環境や過酷な労働の実態など、コーヒー初心者の僕でも興味を持てるようにと、ありとあらゆる角度から知識を深めてくれた。 そうしてその日僕が選んだのは、『マンデリン』という豆だった。 齋藤さんが丁寧に丁寧にドリップしてくれたコーヒーの味わいは、今でも鮮明に思い出せる。インドネシアのスマトラ島で育ったというその豆は、重めの質感とハーブやシナモンのような香りを醸し出した。それは僕が知っているインドネシアの建築物が持つ独特の力強さや神秘性、そして南国を吹く、スパイスの香りを携えた潮風と何処となくマッチするようだった。 そしてこの一杯こそ、僕が人生初めて(痩せ我慢ではなく)『コーヒーって美味しい』と感じた瞬間だ。 この日から僕は、コーヒー好きを公言している。 齋藤さんの深い知識にも繊細な技術にも到底及ばないが、SEKIYAのコーヒーをまた飲みたいと心から願う一人である。 『コーヒーは時間を温めてくれる』 最後に、齋藤さんが話してくれた言葉の中で、皆さんにシェアしたいフレーズを一つ。 “コーヒーは時間を温めてくれる。“ 慌ただしい時に飲むコーヒーは少し頭を休ませてくれて、考えごとをしている時に飲むコーヒーは思考を深めてくれる。 それはまるでコーヒーがその時々の時間を温めて、ほんの少し芳しく、豊かにしてくれるように。 そんなコーヒーが日常にあるなんて、幸せなことなんじゃないかと思う。


安斎好太郎さんへの返信コメント

安斎さんのとの出会ったとき、少年のような好奇心を携えた大人だなぁ。と、思ったのを覚えています。『カガヤ区』のメンバーから少年時代のエピソードを聞いた時、それがついこないだに起こったことなんじゃないか?と、思うくらいに。

ところが、建築家としての仕事を見れば、お客様の潜在的(お客様ですらまだ気づいていない)に望むものを引き出して形作ってしまう人。そんな風に思いました。

県内で開催されたOPEN TIME(完成披露会)に伺う先々で、施主たちの思いを感じ、それを形作られた状態を見るたびに、自分もいつか、安斎さんに仕事をお願いしようと思ったのでした。ほとんど資金も無い私の無謀ともいえる自店の計画に、納屋をセルフで改築案をいただいた時は、出来るかどうかの不安よりも、子供の頃のようなワクワク感が強かったのを覚えています。

ご協力いただき完成した店は、皆様からお手伝いいただいたのもあり、沢山の方々に愛され、自分だけの店というのではなく、みんなの店になりました。

今回の火災は残念でしたが、またみんなで作り上げることが出来て、さらに良い店になるようにおもいます。