クラウドファンディングにご協力下さったみなさま、また、これからご協力くださる皆様、こんにちは!
本日は明日土曜日の定期演奏会のプログラムにもある、サン=サーンスの生誕の国、フランスの話をしようと思います。
私はご縁があり、若い頃フランスに留学していました。
ナヴァラ、フルニエ、フラショー、トルトリエ、ジャンドロン・・・憧れのチェリストが数多く居ました。
さらに遡ると、バロック時代はガンバのマラン・マレ、古典のデュポール兄弟、最近ではゴーティエ・カプソン、学校は違ったけれど僕とフラショー同門のジャン=ギアン・ケラス等々、数多くの優秀なチェリストを輩出しています。
↑フラショーのクラスのコンサート
チェロの話しはさておきフランスの話に戻りましょう。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、実はフランス、一部の人々は親日家の方が多いのです。
黄金の国ジパング、東洋の神秘、と言った所でしょうか、日本の文化に興味を持っている方がとても多いです。宮廷貴族文化の延長線上の、上流階級サロン文化では、アジア、とりわけ日本に詳しい事が「鼻高々」なステータスであったようです。
留学中のフランス人の友人なども「タタミゼ」(畳と仏語動詞のerをもじって、生活の中に日本文化を取り入れる事を表す仏語)と称して、どこで手に入れたか本物の畳を寝室に置いたり、急須で緑茶を入れて飲んでいたり。
当時、オペラ座の斜迎えに三越デパートがあり、日本の価格の倍から3倍程度で日本食材などは手に入りました。最近では日本食ブームでスーパーの惣菜売り場ではお寿司が売られ、街中ではおにぎり屋さんやお弁当屋さんがあるようです。
お互い全く相容れない、けど、いつの時代もお互い気になって仕方がない、共通の感性を持っている、こんな日本人とフランス人のイメージがあります。
そうそう、ドビュッシーの仕事机の上にも信楽焼のガマの置物がありました。北斎の浮世絵にインスピレーションを得て作曲した「海」も有名ですよね。
余談ですが、僕らの世代では「フランス人はプライドが高いから英語は絶対しゃべってくれない」という文句をよく聞きますが、これはかなり誤解があると思います。ちょっと考えたら単純な話ですよね、もしあなたが、顔が似ているからと言ってアメリカやヨーロッパから来た観光客からいきなり中国語や韓国語で話しかけられたら、あなたはどう答えますか?
フランス人にとっても英語は義務教育の学校で勉強する「外国語」ですよね。
ましてそれが100年間もの戦争をしていた敵国の言葉だとしたら? 色々な感情をお持ちの方がいらっしゃると思います。
さて、話しを戻しましょう。
留学中はパリ市内の14区、地下鉄4番線のアレジアという駅の近くに、それこそ「屋根裏部屋」に住んでいました。
屋根裏部屋はいわゆる「住み込みのメイド」が寝泊まりする部屋です。トイレ共同、バスなし。なので家賃が安い。(笑)
幸い公衆浴場が近くにあったので、ほぼ日本と同じ入浴ライフは送ることが出来ました。しかし入浴は時間制で、時間を過ぎると管理のおばちゃんがドンドンと扉をノックし、ドアを空けるのにはびっくりしました。
そして同じ14区内にモンパルナス墓地があり、ここにサン=サーンスのお墓があります。
入学した音楽学校(エコール・ノルマル)と並行して通ったフランス語学校、アリアンス・フランセーズの通学途中にあったのでお墓参りにも行きました。他にも、ペール・ラシェーズ墓地のショパンのお墓などにもお墓参りに行きました。フランスのお墓は日本のとはかなり違って、とにかく墓の装飾に「悲しみ」を表現したものが多かった印象があります。薄暗い曇りの日などに行くと、本当に何か出て来そうな雰囲気です。
↑パリのアパルトマンのバルコニーで
さて、サン=サーンス本人の話題にいたしましょう。
モーツァルトと並び称される「神童」、パリのマドレーヌ寺院でオルガニストを務め、「オルガン付き」の交響曲で有名ですよね。
僕らチェリストにとっては、エチュードコンチェルトを卒業して、一番最初に勉強する、プロのレパートリーであるコンチェルトの一つがサン=サーンスのチェロコンチェルトであり、とても馴染みのあるお世話になる作曲家でもあります。
コンサートで演奏させて頂く「白鳥」も、チェリストには欠かせないレパートリーになっています。
この曲は少々曰くがあり、この「白鳥」が入っている組曲「動物の謝肉祭」はその曲の性格からサン=サーンス本人が自身の生前は演奏禁止としたのですが、この「白鳥」だけは例外で演奏を許されていたそうです。
彼はどれだけ辛辣な風刺を盛り込んだのでしょうね、この「動物の謝肉祭」に。
フランス人の風刺といえば数年前の悲しい出来事、パリのテロ、シャルリー・エブド襲撃事件を思い出します。
幼い頃、近所に住んでいた友達が今、コンセルヴァトワールで教授しているのですが、彼女はこの事件の数分前にこの事件現場を
通りかかっていたそうで、生きた心地がしなかったそうです。
話しはかなり飛躍しますがそろそろ地球規模でテロや中東問題、貧困問題などを考えていかなければなりませんよね。
おっと、とりとめもなくなってしまいましたので、今日のお話しはこの辺にしようと思います。ありがとうございました。