期間中、制作に関するお話を書いていきたいと思います。
作家としてはダメなところかもしれませんが、あまり作品を言葉で説明するのが得意ではなく、避けて来ました。私の場合、作品でこれを伝えたい!というより、直感的に好き嫌いの判断で楽しんでもらえればいいと思っているので、別段どこにも説明を出していませんでした。
でも私自身、映画や本など、その作品を深く知ることで「噛み砕く面白さ」「反芻する面白さ」を感じます。なので同じように、私が作品について話すことで、次また作品をご覧いただいた時に、楽しんでもらえる視点が1つでも増えたら嬉しなと思い、書いてみることにしました。
拙い文章で少し長くなりますが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
まずは、作品を「空間」「形」「素材」「色」の4つの要素に分けて、具体的な作品画像を交えてお話ししたいと思います。
「空間」
立体作品は、手で触れて作ることができる「形」と同時に、「空間」も作ることができる。
これが立体作家として活動する大きな理由の1つです。地面からの立ち上がり、量感、動き、いろいろな要素から生まれる物理的な空間を、いかに作っていくか。
具体的な作品でご説明したいと思います。
「華はこび」
この作品を作ったのはまさに、二体のあいだの空間を作りたかったからです。
複数体のモチーフを組み合わせると、空間が出しやすく遊びがいがあります。
ブレーメンの音楽隊をモチーフに、4体を組み合わせた「ハルモニア」
4体をただ乗せていくのではなく、ツタを使って4体を繋げる空間を作っています。
では一体の中で作る空間とは。
こちらの「K」は土台を設けることで、地面からの空間をより広げています。地面と土台の接地部分、土台の中にもそれぞれ空間を作り遊んでいます。ボリュームのある角と体の間の空間も作っていて楽しいところです。空間を見るという意味では、斜め後ろからの角度がオススメです。
「五郎兵衛 茶福」↓は、重心をずらして空間を作った作品。
↑この角度からだと分かりづらいですが、
ものすごく後ろ重心で頭を支え、頭の下に空間が出来ています。
(画像だと分かりづらいですね...、個展の時に持っていくのでぜひ見てください。)
「天紅」↓は体の動きで空間を出している作品。
この体勢を見て、日本画を思い出す方もおりますでしょうか。そう、あれを立体にしてみたかったんです。絶対立体にしたら面白い空間が出ると思いまして。インスタグラムには動画も載っているので是非見てみてください。そちらの方が圧倒的に空間が分かりやすいと思います。
「ランタナ」↓は体の動きに加えて、かなり縦の空間で遊んだ作品です。
高さが150cmあります。やっぱり大きいのは空間がたくさん使えて楽しいもので。気がつくとすぐ大きくなってしまいます。
片足を上げているのはやっぱりそこに、向こうへ抜ける空間を出したかったからです。
こちらも縦の空間で遊んだ「柳木」↓
高さ113cm。結構細かい空間も作って遊んでいます。
こちらも個展の際に持っていきたいと思っています。
(ちなみに作っている時に考えていたのは、樹齢何百年の木がついに朽ちた時に、龍に生まれ変わって昇っていくというイメージ。なのであと1mくらい足したかった...。)
サイズが小さなものでも、いかに空間で遊びながら作れるようになるかがずっと課題です。
「天駈」↓これでも20×18cmの高さ52cmあるので小さいとは言えないですね...。難しい。
あと壁面でも、奥行きを抑えながら、いかに空間を作るかという課題も。
「アルストロ」↓
v字型にしてvのところに空間を作ろうと思った作品。ギリギリ奥行き20cm以内。
作っている時は大体メジャー片手に闘っています。思うままに作るとすぐ大きくするので。
モチーフありきで空間を作る場合も。金魚の尾びれ綺麗だなぁと思って作った「舞柳」↓
金魚が作りたかったのではなく、尾びれが枝垂れる空間を作りたかった作品です。
しかしそれをどうやって作るかはさっぱりイメージできないまま作り始め、手を動かしながら考えていました。私は空間を平面でイメージできないので、設計図を描ける人たちの頭を覗いてみたいです。
制作に対する「空間」の話。伝わりましたでしょうか。
「空間」がゲシュタルト崩壊してませんでしょうか。
作家が作品に対してこだわっているところは、きっと客観的に見れば微々たる違いだったりして、どこまでマニアックに話していいのかわかりません。でもその微々たる違いが積もり重なって、その作家にしか出せない雰囲気につながっていくのだと思います。
次は、手で触れて作ることができる方の「形」の話をしたいと思います。