鎌倉教場の「今」をお伝えします。
今回は、「明治神宮流鏑馬神事」と「稽古の成果」についてです。
令和3年11月3日に明治神宮で流鏑馬を奉納しました。
大日本弓馬会が奉納している流鏑馬の中でも、最も長い期間に渡って継続しているのが、この明治神宮の御例祭を奉祝して行われる流鏑馬です。
先の大戦の影響で一時中断していた時期もありますが、最初の奉納から90年近くが経過した今も尚、変わらずに続けられています。
当時は、馬の輸送手段がなく、鎌倉から馬に乗って明治神宮まで遠路行軍しており、いざ鎌倉ならぬ、いざ明治神宮であったとのこと。
流鏑馬の伝統を今日まで繋いで来られたのも、こうした諸先輩方の苦労と功績があったこらこそであり、今更ながら感謝の念に堪えません。
現在は、馬は馬運車で、人は車か電車で移動するようになり、当時の大先輩方からすれば、何とも楽な奉納に思えるのかもしれません。
しかしながら、労力の点は往時よりも楽になったかもしれませんが、この明治神宮流鏑馬神事は、大日本弓馬会にとって最大の表舞台でもあることから、精神的な気楽さなどは皆無です。
特に、ここ最近は、天下泰平・五穀豊穣・万民息災のみならず、新型コロナウイルス感染症の早期収束も祈願していますので、より一層、騎射にも熱が入るというものです。
さて、当日は素晴らしい好天に恵まれました。
真っ青な空に明治神宮の深い緑の杜、そこに設置された木火土金水の式の的、まさに絵になる光景です。
もっとも、感染症対策のため残念ながら無観客での開催となり、例年楽しみにしていらっしゃる皆様には大変申し訳なく思っています。
出場した射手は9名で、同じく感染症対策の観点から、行事の時間短縮を見込み、例年よりも人数が減っています。
奉射に出場した射手9名の成績は、
6射中6的中が2名
6射中5的中が4名
6射中4的中が3名
と全体の的中率が8割を超え、少なくともここ数年では最高を記録しました。
競射の的中成績は並程度でしたが、一の的から三の的まで満遍なく割れ、全体としては好成績であったといえます。
特筆すべきは、矢番えに失敗して的を射ずに通過する射手が少なかったことです。
的を射た後、次の的まで4~5秒しかありません。
その短い時間の中で腰から矢を抜き、弦に番え、弓を打ち上げ、次の的に狙いをつけなければなりません。
この技術は非常に難しく、先人の中には射るよりも難しいという方もいた程です。
以前の稽古場では、直線馬場が100メートル弱しかなく、的を1つしか設置できませんでした。
そのため、この矢番えの稽古ができなかったのです。
これに比べ、現在の鎌倉教場では、220メートルの本格的な馬場を備えていますので、一の的を射た後の二の的までの矢番え、二の的を射た後の三の的までの矢番え、と本番さながらの矢番えの稽古ができるようになりました。
教場の設置から間もなく1年が経過しようとしています。
今回の明治神宮流鏑馬神事での好成績、矢番えの上達は、この間の鎌倉教場での稽古の成果が如実に表れたものといえるでしょう。
やはり、稽古環境は何よりも大事なのです。
流鏑馬の伝統を後世に繋ぐため、充実した稽古環境に対する御支援は何物にも代えがたい贈り物です。
支援は寄付金という形を取っておりますが、私たちにとっては、単なるお金ではなく、その支援しようというお気持ちが何物にも勝る宝物となります。
流鏑馬という無形文化を伝える私たちです。皆様の無形のお気持ちも、期待というプレッシャーとしてヒシヒシと感じているところでございますので、その御期待に添えるよう、より一層稽古に励んでまいりますので、引き続きの御支援をよろしくお願いいたします。