2021/12/11 22:35
ずっと聞けなかった。


私と彼が昔よく通った焼鳥やさんがあります。

この10年間、たまに行っていたけど

5年以上前に一度だけ、

彼が入院していることを伝えたきり

それ以降は普通に焼鳥を食べに行っていました。



今回、10年の節目を迎えるにあたり

どうしてもマスターとママには伝えたいなと思って

先日一人でお店に行きました。



美味しい焼鳥を食べて、もうすぐお会計という時、


「あの、実は彼が入院して今年で10年経つんですよ。」


一瞬、マスターの手が止まる。


「え?・・・」


マスターは、スゴく頑固おやじって感じで

(ゴメンナサイ!)取り乱すことなんて一度も見たことがないけど、しばらく下を向いて沈黙のあとに


「田島さん、あんたは本当にスゴイ人だよ。」


「スゴイよ。」


「そうか、まだ生きていたのか。」


「そうか・・・生きていたのか」




この言葉だけを聞くと、色んな解釈があるかもしれませんが、マスターのこの言葉の意味は、


まだ、生きて"くれて"いたのか


という意味が込められていました。



「ずっと聞きたかったけど、田島さんは一言もいわないから、こっちから聞いていいのかわからなかったんだよ。」


マスター、ご心配おかけしてごめんなさい。

でも、話したら自分が崩れてしまいそうだったから

言えなかったんです。


名もなき人のストーリーを記憶に


さらに、クラウドファンディングで

小さな冊子を作ることを伝えると


『その本は、うちの店の歴史として置いておきたいな。』


と、言ってくださいました。


名もなき一般人の、ちょっとしたストーリーが

与える影響は微々たるものですが、

その場所で過ごした日々は、

確実にそこにいる人たちの記憶に残っています。



クラウドファンディングは終わっても

こういう日々の伝える行動が

何か少しでも、

誰かの背中を押すきっかけになれたら。

それを忘れずにこれからも地道に行動します。



私にとっては、家族のような存在の

マスターとママ。


最後に

「話してくれてありがとう」


と深々頭を下げられ、私も恐縮しながら

また、来ますね。笑顔でお店を出ました。



素敵な思い出をありがとうございます。

また、美味しい焼鳥、食べに行きますね。