2021/11/05 12:00

こんにちは!YSCグローバル・スクールです。

コロナ禍で学びとつながりの機会がいっそう減少している海外ルーツの子どもための奨学金クラウドファンディング、現在目標の【48%】に!これまでに【131名】もの方々がこのプロジェクトに参加してくださいました。本当にありがとうございます。皆様から寄せていただいた応援のメッセージ一つひとつに勇気づけられています。

プロジェクト終了まであと【25日】。

ひとりでも多くの子どもたちに手を伸ばすことができるよう、ぜひこのプロジェクトを広めてください!皆様の引き続きのご支援とご協力をどうぞ、よろしくお願いいたします。


<多文化コーディネーターに聞く―高校進学の現状と課題>

朝晩冷え込むことが増えてきたこの頃、海外ルーツの子どものための専門教育支援事業YSCグローバル・スクールでは、そろそろ「高校進学支援」が本格化してきます。現役の中学3年生はもちろん、15才以上の、中学を進路未決定で卒業し再受験を希望する子どもや、出身国で中学校相当を修了してから来日した若者などが日本での高校進学を目指してがんばっています。

海外にルーツを持つ子どもたちにとって、高校進学は日本人の子どもと比べて更に大きな難関となっています。日本の子どもたちの高校進学率がおよそ100%に近い中で、海外ルーツの子どもの高校進学率は70%程度にとどまるのではないかと推計されていますが、「日本語で受験する/高校の授業を受ける」という言葉の壁に加えて、具体的に何が問題なのでしょうか?

 当スクールの設立当初から支援に携わり、海外にルーツを持つ子どもたちのサポートに豊富な経験を持つ多文化コーディネーターのピッチフォード理絵さんに聞いた内容をまとめました。

今回は前篇として海外ルーツの子どもの高校進学に関する現状と課題をお伝えします。

続く後篇では、ふだんはなかなか詳細を知ることのできない、多文化コーディネーターによる高校進学支援活動についてご紹介しています。
*記事中のマスクをしていない写真は全てコロナ禍以前に撮影(写真:🄫Yuichi Mori)

試験を数日後に控えた生徒たちへ、当日の注意事項を説明するピッチフォードさん

どこに暮らしているかが分かれ目に—入試制度に大きな自治体間格差

海外ルーツの子どもとその家庭の状況はさまざまですが、日本語力を含む学力や経済的な事情、入試制度の問題などから、実際に入学できる学校は限られてしまうことが少なくありません。

例えば東京都内の場合、都立高校8校に「在京外国人特別枠」(注1)があります。

定員は8校合わせて155名。こうして見ると多いようにも感じますが、もともと海外ルーツの子どもも多い東京都。受験資格に「外国籍」で「来日3年以内」という制限があり、高校進学を希望する海外ルーツの子どもたちが充分に受け入れられているとは言い難い現状です。

この特別枠では入試科目は英語、または日本語の作文と面接です。英語圏出身ではなく、作文を書けるほどの日本語力がない生徒にはどちらも難しく、制度の恩恵に預かれずにこぼれ落ちてしまいます。

この他、日本国籍を持つ子どもには「帰国枠」(注2)がありますが、基本は「保護者の海外赴任等に伴い、一家で海外に在住していた者」が対象です。「呼び寄せ」というケースでよく見られるような、保護者が先に日本で生活していて、子どもが一定の年齢に達するまで海外の親族に預けられていたような場合には利用できません。

一方、一般入試で都立高校を受験するとなると、ほぼ全校で5教科(国語、英語、数学、理科、社会)での入試が行われていて、たとえ日本語ネイティブ向けの問題文にルビを振ってもらったとしても、来日してわずか数年の生徒にとって設問を正しく理解することは困難です。

下の表は、全国各地の支援者や関係者有志がネットワークを組んで実施している高校入試制度に関する調査結果です。各都道府県や政令指定都市等の外国人特別入試枠や特別措置の有無をまとめていて、入試上の特別な配慮のある、なしだけを見ても地域ごとの高校への入りやすさに格差があることがわかります。(詳しくは 「外国人生徒・中国帰国生徒等の高校入試を応援する有志の会」高校入試特別措置調査が掲載されたホームページをご参照ください)

『2020年調査 都道府県立高校(市立高校の一部を含む)の外国人生徒及び中国帰国生徒等への2021年度高校入試特別措置等について』(外国人生徒・中国帰国生徒等の高校入試を応援する有志の会)より引用

これを読んでくださる方の中には、もしかしたら私立の学校やインターナショナルスクールに行けばよいのでは、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私立高校の中には外国人生徒のために国際入試を実施している学校もありますが、私たちのスクールで出会う家庭の多くにとってその学費を負担することは困難な状況です。

また、インターナショナルスクールの学費は更に高く、もともと日本に赴任してきた外国人家族のための学校として企業が授業料を負担することが前提だったため、一般家庭では賄えないほどの金額である場合が少なくありません。

入試本番直前のある日。お菓子と共に配られたのは、他の子どもたちが折り紙で作った「お守り」でした。

高すぎる中退率-海外ルーツ高校生にこそ、教育機会保障を

現時点で、多くの高校では海外ルーツの生徒たちへの支援がまだ整っておらず、言葉の壁やより高度になる学習内容についていくことが難しくなってしまうことも少なくありません。文部科学省が行った調査によると、高校に通う日本語があまり得意でない生徒の中途退学率は9.6%にの上っています。これは、一般高校生の7倍以上の数(注3)となっており、がんばって高校に入学できたとしても、支援体制が整っていない中では卒業までの道のりに大きな困難が立ちはだかっていることを表しています。

上述の通り、特別入試枠等、入試上の特別な配慮の拡充は進められていますが、まだまだ子どもたちのニーズに追い付いていないのが現状です。加えて、たとえ頑張って高校に合格したとしても、卒業までたどり着くことにも困難が立ちはだかっており、子どもたちの学びの権利を保障するには程遠い状況です。

高校は義務教育課程ではないため、長らく海外ルーツの高校生に対する支援は学校任せ、自治体任せの状況が続いてきました。その結果、多くの子どもたちが高校生活で挫折を経験し、不安定な状況のまま日本社会で生き抜いていくことを余儀なくされています。

支援体制の拡充と共に、あたたかな学校づくりを

上でご紹介したような外国人のための特別入試枠を持つ高校では、一般の高校よりも支援体制の整備が進められており日本語指導や通訳などのサポートを受けることができます。また、海外ルーツの生徒たちが一定の人数在籍していることから、子どもたちにとってより学びやすい環境となっており、進学率の向上と中退防止の観点からもこうした特別入試枠を持つ高校の設置を加速させることが重要です。

一方で、このような支援体制が整っていない高校でも、子どもたちが安心して過ごせるような場づくりがされている学校もあります。たとえばYSCグローバル・スクール学ぶ生徒たちが毎年一定数進学する定時制高校。中学校時代に不登校を経験したり、学習上の困りごとを抱えたりなどの経験を持つ生徒が多く通う定時制高校は、生徒たちの様々な事情に考慮しきめ細やかな支援が行われている場合も少なくありません。生徒たちのバックグラウンドやルーツがどのようなものであれ、学校に通い学んでほしいという先生方の想いが、海外ルーツの高校生にもじゅうぶん届いていると感じることも多々あります。大切なことは、仕組みや制度上の支援に留まることのない、子どもたち一人ひとりを大切にするあたたかな学校づくりなのかもしれません。

YSCの「卒業文集」より

YSCグローバル・スクールでは、現在、全国各地から高校進学を目指す子どもたち30名以上が学習に参加しています。彼らが進学しようとするすべての学校が充実した環境にあるわけではないかもしれません。高校に合格するための支援はもちろんのこと、少しでも中退を防ぎ、高校生らしい素敵な時間を過ごしてもらえるよう、進学後を念頭に置いた支援にも力を入れています。

ぜひ、多くの方々に、このプロジェクトへの参加を通して、私たちと共に日本の高校に進学を希望する海外ルーツの子どもたちの未来を支えていただけたらと願っています。

次回後篇では、引き続き当スクールの多文化コーディネーターがどのように子どもたちの高校進学や進学後の高校生活をサポートしているのかについてご紹介します。どうぞお楽しみに。


(注1)「在京外国人生徒対象入試」とは、東京都立高校入学を希望する外国籍の方を対象とした入試で、一定の応募資格を満たせば受検することができます。試験は一般入試より事前に実施されるため、一般入試を併願することが可能です。東京都以外の自治体も、最近では多くがこのような入試における「外国人特別枠」を設けています。外国人特別枠入試が受検できる要件や試験の内容などは都道府県等によって異なっています。

また、特別入試枠の他に、一般入試における合理的配慮を実施する自治体があります。東京都の場合は、事前の申請を行うことで一定要件を満たせば入試問題へのルビ振りや辞書の持ち込みが可能です。こうした特別な配慮は一般的に「特別措置」と呼ばれています。

(注2)「帰国枠」とは、「海外帰国生徒」を対象とした入試制度で、いわゆる「帰国子女枠」と呼ばれている枠組みです。本文の通り、保護者の海外赴任等により、一家で海外で暮らしていた子どもが対象となるため、日本国籍を持つ海外ルーツの子どもであっても、保護者と国をまたぎ離れて暮らしていたような場合は利用することができません。

(注3)参照:文部科学省『「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 30 年度)」の結果について』

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