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犬・猫の殺処分0をソーシャルで実現するプロジェクト

現在の支援総額

207,000

103%

目標金額は200,000円

支援者数

50

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2012/12/05に募集を開始し、 50人の支援により 207,000円の資金を集め、 2013/02/04に募集を終了しました

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犬・猫の殺処分0をソーシャルで実現するプロジェクト

現在の支援総額

207,000

103%達成

終了

目標金額200,000

支援者数50

このプロジェクトは、2012/12/05に募集を開始し、 50人の支援により 207,000円の資金を集め、 2013/02/04に募集を終了しました

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本プロジェクトを立ち上げるにあたり、全国に先駆けて殺処分0を実現した「熊本市動物愛護センター」を取材訪問しました。大変インスパイアされましたので、活動報告として訪問記を掲載します。ご一読いただければ幸いです。
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熊本市動物愛護センター 訪問記
『命のリレー』-繋がりが生んだ殺処分0-


予備知識
【犬・猫の殺処分数】H22年度、約20万頭の犬・猫が全国で殺処分されました。(環境省)
【殺処分される場所】殺処分は、都道府県、政令指定都市、中核都市の保健所(動物愛護センターという呼び名もあります)で行われます。
【保健所に収容される原因】捕獲・保護・拾得・不要持ち込み等があります。
【引き取りをする法的根拠】動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)第35条「都道府県等・・・は、犬又はねこの引取をその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。・・・」
【殺処分の法的根拠】狂犬病予防法第6条九項「犬を抑留したとの通知を受け取った後又は公示期間満了の後一日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は政令の定める所により、これを処分することができる」また、動愛法において、最低2日間の公示が義務づけられています。公示期間満了後、保健所の収容頭数を超過した時などに、処分が行われます。
【熊本市動物愛護センター】全国に先駆け「殺処分0」に向けた取り組みを展開。大きな成果を上げる。熊本市や獣医師らで構成される『熊本市動物愛護推進協議会』は2009年度「日本動物大賞」最優秀の大賞を受賞。

プロローグ
 ペット業界で仕事を始めて日が浅い私は、はっきりいって素人です。20年以上犬を飼育した経験はあるものの、ペット業界に入るまで、殺処分の事を何も知りませんでした。この業界で仕事をすると決意してから、殺処分の問題が頭から離れません。自分に何が出来るのか?何をすれば良いのか?自問自答する日々です。この問題を考える上で、自分へのイニシエーションとして、近くの保健所、動物愛護センターを3カ所訪問見学しました。動物愛護のシンポジウムなどにも積極的に参加するようにしています。しかし、いつも気が重いんですよね。「どーん↓」と沈む感じです。TVでペットの可愛そうな話は勿論、感動物語ですら正視できない、神経質というか気が弱いタイプですので、殺処分が行われている施設に直接足を踏み入れることは、とても勇気のいる事でした。でも、熊本市動物愛護センターへの訪問前はこれまでにない不思議な感覚でした。楽しみというわけでもなく、気が重いわけでも無い。ただ、自分にとって、とても大切な経験になるだろうという予感に胸膨らませていました。
 訪問の目的は3つ。1つめは「百聞は一見にしかず」本やWEBでは得られない「殺処分0」の実情を直接、肌で感じること。2つめは熊本市の取り組みを他の自治体や全国に横展開するためのヒントを聞き出すこと。3つめは「ぺっとぼーど」の新機能として開発している里犬・里猫マッチングシステムへの協力を取り付けることでした。霧でなかなか飛び立たない飛行機にじれながらも、やっと熊本空港に向け飛び立ちました。山間にある熊本空港から延々とバスを乗り継ぎ目的地に向かいます。すると、人里少ない、山に囲まれたひっそりとした所に、熊本市動物愛護センターはありました。

本当にここ?
 保健所(動物愛護センター)はどこも、人気が少ない所にあります。迷惑施設と呼ばれ、疎まれてきた現れだと思いますが、人から隔離された場所にあることで、余計に人とペットとの間にある大きな壁を感じさせます。まるで、別世界のようです。熊本市動物愛護センターも同様でした。バスを降りて、案内図に沿って歩いて行くと裏門に辿り着きます。本当にここ?と思うほど古ぼけた門には、目を懲らしてみなければ分からないほど小さい文字で「熊本市動物愛護センター」と書かれていました。約束の時間より30分ほど早く着いたので、「ええい中に入ってしまえ!」と足を踏み入れます。最初に目に入ったのが、綺麗に磨かれた慰霊碑でした。

 みずみずしい花が添えられ、日々の手入れが行き届いていることが一目で分かります。慰霊碑がいきなり目に入ってきた施設は初めてでした。思わず手を合わせ、人が動物にしてきた残酷な行為を謝罪します。すると、奥から犬達の大きな吠え声が聞こえてきます。どうやら私に向けて吠えているようです。声の方に近づくと、たくさんの犬たちがいました。犬たちは檻の中ではなく、一匹ずつ、日当たりの良い屋外にいました。「なるほどこれか~」と思い近づいていきます。なるほどと思ったのは、この屋外で日光浴をさせている光景は熊本市動物愛護センターのHPにも掲載されており、代表的な取り組みの一つだと知っていたからです。近づくと激しく吠える犬たち、しかし、怖いとは思いませんでした。むしろこっちにおいでよと呼ばれているようで、犬たちの目前まで近づきます。ふと、これ以上刺激しちゃいけないかなと思い、視線をそらし、周りを見渡しました。犬達の奥には収容施設と思われる所、ぐるっと後ろを振り返ると事務所と倉庫があるだけでした。思わず「え?!」と漏らすほど、それらは狭く、小さく、古い建物でした。


全て見て行ってください
 早く着いた分、色々見ようと思ったものの、外から見れる所がもう無さそうです。仕方ないので、早すぎるとは思いながらも受付に行きました。窓口の奥から、笑顔の女性が出てこられました。村上睦子所長でした。優しい表情で「遠い所よく来てくださいました」とのこと。正直予想外でした。書籍で歴代の男性所長達の武勇伝を読んでいたので、ごつい熊本男児を想像していたのですが、こんな優しそうな女性が所長とは・・・正直ほっとしました。怖いおじさんだったらどうしようかと思っていましたから(笑)早速、話を聞きたいと申し出た所、村上さんは取材慣れした様子で、スライドを使って説明を始めました。

 村上さんはこの施設には6年在籍、今年の4月から所長になられたとのこと。冒頭に「行政の力だけでは殺処分0は実現できませんでした。民間やボランティアさんの力があってこそです。」と目力を込めて話されました。以降、この言葉は繰り返し村上さんから聞くことになります。また、説明の最後には「今日は全部見て行って下さい。私達はオープンですから」とも言われ、柔和な目の奥にある凄みを感じたのでした。

熊本市動物愛護センターで何が起きたのか
「殺処分の数値はご覧のように、H18から激減しています。猫はH20から大幅に減っています」と村上さんは資料の数値を淡々と説明してくれました。が、いきなり度肝を抜かれました。なんだこの減り方は!凄すぎる・・・。

いただいた統計資料から分かる大きな特徴として「犬の捕獲・保護頭数は変化していないものの、不要犬の引き取り頭数が激減している」「猫の場合は、譲渡頭数が大幅に増えている」ことがあげられます。その他、犬の場合、返還数が増加。猫の場合、拾得・不要猫引き取り頭数が減少しています。では、一体何をすればこのような凄い結果になるのでしょうか?村上さんの話しに戻りたいと思います。
「H13年に淵邉さんという人が所長になりました。淵邉さんは当時の施設の状況に『どぎゃんかせんといかん』と思ったそうです。職員一人一人に尋ねるとみな、自分の心を押し殺していたようで、一様に『もう殺処分はしたくない』という反応が返ってきました。そこから殺処分0に向けた取り組みが始まりました」この話を聞いて、思い浮かんだのが旭山動物園の事でした。リーダーの熱い思いに職員が心動かされ、日本一の動物園になる、あの話です。話は続きます。「法改正があり『動物愛護推進協議会』という組織を作れるようになりました。そこで、全国に先駆け、獣医師会・動物愛護団体・ペット業界など25名からなる新しい協議会を設立しました。当初は、お互い手探りで、なかなか話も進まなかったようです。ある時、ポストイットを使って、ブレーンストーミングを行った所、実はみんなの思いは一つだったことが分かりました『殺処分0を目指す』ということです。皆が同じ思いだったことが分かり、そこから協議会は大きく前進しました」ああ〜ここポイントだなあ〜と頭の中でつぶやきます。獣医さん、保健所、動物愛護団体、ペット業界。お互い一般的には仲が悪いというか、目の敵ですよね・・・その人達が力を合わせることになったというのは特殊に見えます。同時に、頭の中では「これって他の自治体でやれるかなあ?」という疑念が湧き出てきました。僕が参加したシンポジウムはどこも、お互いを批判するばかりで、とても協力すると言った雰囲気ではありませんでした。そんな私の気持ちをよそに、村上さんは矢継ぎ早に取り組み事例を紹介してくれます。
• 飼い主への返還率を高めるため、ホームページや新聞紙面上で告知
• 動物愛護推進協議会において、迷子札つけよう100%運動を展開

• イベントで動物愛護推進協議会メンバーが迷子レンジャーショー開催
• 飼い主への譲渡を進めるため、大部屋への押し込みをやめ、個体管理を実施
• 犬の相性に応じて部屋割りを決定
• 日光浴、散歩を毎日実施
• トリマー嘱託員を配置し、譲渡のための第一印象アップ作戦実施
• 猫のケージ飼育管理実施、乳のみ猫の哺乳を自主的に実施
• 健康管理や譲渡前講習会の実施
• 一頭一頭に名前を付け、性格シートを作成。譲渡のための情報開示促進

• 譲渡会の頻繁な開催

 もう相槌さえ打つのも忘れ、聞き入ってしまいました。とにかく、全ての取り組みに動物への「愛」が溢れているんですよね。関係者が気持ちを一つに取り組んでいる姿が、次々とスライドに映し出されます。取り組み紹介の最後に「ボランティアの協力は不可欠です!」と声高に村上さんが言いました。「寄付金や物資の寄付は勿論ですが、猫の団体譲渡にはボランティアの方が大活躍されています。この後、会って頂きますから楽しみにして下さい」もう、「はい、分かりました」としか言えない自分が恥ずかしくて、何とかしなきゃと少し意地悪に「センターには課題はないのですか?」と聞きました。しかし、その質問すら予想されていて、即座に答えが返ってきました「センターの課題としては、毎日ひっきりなしにくる相談や地域の方への説明対応などです。そこで、熊本市動物愛護条例を制定し、地域猫活動も推進しています。そしてね・・・」と嬉しそうに村上さんは資料を見せてくれました。「新しい『譲渡専用施設』を計画しています。来年から工事が開始予定なんですよ^^」まいりました・・・

他の自治体にはできない?
「熊本市の取り組みはよく分かりました。自分の住んでいる自治体や、熊本市以外の自治体に同様の取り組みが拡がらないのはなぜでしょうか?」2つめの目的である質問をぶつけました。「他の自治体でも同じ事は出来ますよ・・・」という回答を期待していたのですが、村上さんは「他の自治体で同じ事をするのは難しいかもしれませんね。熊本市の例は特別かもしれません。あと、『どうして自分の自治体はできないのか』という批判的な姿勢は何も生み出しませんよ」と言われてしまいました。「『自分はこんなことをしたい、こういう協力をしたい』という姿勢を持って下さい。そういうスタンスで来て頂く方に協力は惜しみません」村上さんは身を乗り出して続けます。「人と人との連携、繋がりがとても大切です。対決姿勢からは繋がりは生まれません。熊本市が成功したのは官・民・ボランティアが一つの目標に向かい、繋がりを深め、連携をとったからなんです」


Q13「あなたの飼い犬が、余命いくばくもありません。どうしますか?」
1.病院で飼い主の腕の中で安楽死 2.最後まで家庭で自然に看取る 3.苦痛を和らげる治療を受けさせる 4.不要犬としてセンターへ 5.どこかへ捨てる 6.わからない


飼い主として適正ですか?
「私は飼い主として適正なのだろうか?」譲渡前講習会に初めて参加した感想です。センターから犬の譲渡を希望する人は、事前に譲渡前講習会を受講しなくてなりません。そこは、飼い主としての自覚、適正を自ら判断する場となります。
 講師であるセンター所属獣医師の上野明日香さんがゆっくりとした口調で説明を始めます「最初に、ビデオを上映します。大丈夫でしょうか?」え?大丈夫ってどういうこと?頭が混乱します「もしかして、ショッキング映像でしょうか?」ドキドキしながら尋ねます。「ショッキングと言う程ではありませんが・・・大丈夫でしょうか?」大丈夫じゃないよ〜><と思いながらも、いい年したおっさんが泣き言も言えないと思い「多分・・・大丈夫だと思います。泣いても笑わないでください」と予防線を張り、緊張しながらビデオを見ました・・・ダメでした。ぼろぼろに泣いてしまいました。お恥ずかしい・・・
講習会はビデオの他に、講義、適正チェックなどがあります。飼い主として必要な知識を身につけると同時に、飼い主になる「覚悟」を問われます。冒頭のQ13は「飼い主適正チェック」の最後の設問です。非常に難しい設問です。上野さんは「答えは一つではありません。4と5は絶対ダメですが、それ以外は人それぞれの思いがあるでしょう」とアドバイスしてくれました。私の飼っている犬は年を取り、耳が遠く、目もよく見えていません。余命いくばくというレベルではありませんが、私は考え込んでしまい、答えに窮していました。すると、上野さんは「施設の見学に行きましょう」と沈み気味な私の気持ちを察してか、外の空気を吸うよう促してくれました。


殺処分機の前で立ちつくす
 犬と猫が収容されている施設を上野さんと一緒に見学しました。丁度日光浴が終わり、犬達が施設の中に戻るタイミングでした。随分と吠えています「怒っているのでしょうか?」と尋ねた所、上野さん「いえ。これからご飯なのですよ」(笑)とのこと。ご飯のあげ方も特徴的です。一匹ずつ皿が用意され、公平に配られます。当たり前と思われるかもしれませんが、個体管理をせず集団で一つの檻に収容している施設では、個別の餌やりは不可能です。しかも、力の強い動物が餌を食べてしまい、皆に行き届きません。この点も、熊本市動物愛護センターはよく考えられていると感じました。日光浴の間に綺麗に清掃され、清潔なスペースで嬉しそうにご飯をほおばっている犬達を見ると、こちらまでお腹が空いてきます。檻の前には一頭一頭、名前と性格シートが掲示されています。そのシートを見ながら、名前で呼びかけ、お腹一杯になった犬達と触れ合う事が出来ました。講習会で沈み気味だった私の気持ちは動物達との触れ合いで元気を取り戻します。

「殺処分機ご覧になりますか?」突然、上野さんから聞かれました。「もう使っていませんが、ご覧になりたければお見せしますよ」とのこと。しばらく考えました。見るべきだと分かっていながらも、怖くてふん切りがつきません。しかし、殺処分機を見ますか?と勧められたのは初めてです。「拝見させてください」と意を決し答えました。上野さんが、殺処分が行われていた時の手順を教えてくれます「檻の奥に通路がありますよね?檻から通路に追いやり、こちらにある殺処分機に向けて、通路の犬を追い込みます。殺処分機にかけられた後(二酸化炭素による窒息死)、ベルトコンベアで焼却炉に運ばれ灰になります」
初めて見る殺処分機の前で、私は呆然自失してしまいました。使われていないとは言え、生々しさが残っています。追い込まれて、狭い殺処分機に詰め込まれる犬達の姿が目に浮かび、先程ビデオで見た、動物達の悲鳴や殺処分機を引っ掻いていた音が重なります。同時に、この機械を使って殺処分する人の気持ちを思い浮かべました。こんな悲劇があっていいのでしょうか?殺処分される動物と殺処分する人、どちらにも責任はありません。肝心の当事者がその場にいない、そんな人の為にどうして責任の無い動物と人が辛い思いをしなくてはならないのだろう?虚しさで一杯でした。


それぞれの思い
 施設見学を終え、事務所に戻ってきました。しばらくすると、愛護係担当で獣医師の後藤隆一郎さんが地域巡回から戻ったとのことで、話を聞かせてくれました。地域猫活動の苦労話などを色々と教えてくれます。地元の方に粘り強く、動物愛護への理解を求める後藤さんの姿は頼もしく輝いて見えました。なんの気無しに「印象に残っている飼い主さんや動物はいますか?」と尋ねた所、後藤さんはしばらく考え込みます。その姿は、思い出せないのではなく、私にどう説明したら良いのか困っているような表情でした。
「今までで一番印象に残っているのは、自分が殺処分した犬です。H22に大量の犬が収容され、施設の収容頭数を大幅に超過しました。譲渡も進まず、どうしても殺処分をしなくてはならないという状況に追い込まれました。その中に、H21に保護された犬がいまして、その犬は左脇がぱっくり割れて、血管がむき出しになっていました。海のそばで保護されたので、網などに引っかかったようです。ある時、脇から突然血が噴き出し、半日ずっと止血の為に自分が手で押さえていた事がありました。止血している間にも、私の顔をペロペロなめてくるんですよね。お互い血だらけになりながらも、こいつ可愛いなあ〜と思ったりしていました。そんな経緯もあって、その犬は当初「後藤犬」と呼ばれていました。その後、「シャンクス」と名付けられたのですが、シャンクスには吠え癖があり、人に激しく吠えるといった問題行動を起こしていました。外傷の事もあり、譲渡するには条件が厳しいため、殺処分の対象に選ばれてしまい、安楽死の処置を誰かがしなくてはいけなくなりました。自分からその役を引き受けたんです。でも、何とか殺処分を避けたいと思い、ギリギリまで色々な方策をとったのですが、とうとう万策尽き、シャンクスを殺処分する日が来ました。とにかく怖かったし、苦しかったです。最後は、自分が注射を打ち、安楽死させました。自分の腕の中で目を閉じたシャンクスの表情は忘れることは出来ません。あんな経験は二度としたくないです。あの事は、自身の動物愛護活動への大きな原動力になっています」私は言葉を返すことが出来ず、二人の間には暫く沈黙が流れました。

 私はセンターを訪問する前は、殺処分の事を想像はすれど、現実感が無かったような気がします。しかし、保護されている犬や猫に触れ、殺処分機を眼前にし、殺処分をした人の苦しみを直接聞かされた今、これまでとは違う気持ちになっていました。自分の痛みとして感じるようになっていたのです。

スーパーボランティアさんの衝撃
 センターに来てからかれこれ、6時間が経過しています。外はすっかり暗くなり、山間にあるセンターは急に冷え込んできました。翌日に予定があるので、最終の飛行機で帰らなくてはなりません。着々と飛行機の時間が迫っていましたが、最後にどうしてもお話を聞きたい人がいました。村上所長の話にもあった、譲渡猫の活動で大活躍されている「スーパーボランティア」の西惠美子さんとどうしても会いたかったのです。待っている間、西さんが紹介された新聞記事やブログを何度も読み返していました。
西さんのプロフィールを簡単にまとめると、元々犬派だったそうですが、近所の捨て猫を愛犬がくわえてきたので、フリーペーパーで飼い主を探したことが、活動を始めるきっかけだったとのこと。知人から熊本市動物愛護センターの事を聞き、居ても立ってもいられずセンターに足を運びボランティア活動を本格化。毎週、譲渡会を開催し、ブログ「にゃわん奮闘記」などを通じて、猫の新しい飼い主探しに奔走しています。県内の主婦や会社員ら15名のメンバーで「チームにゃわん」を結成し、2009年だけでも134匹の新しい飼い主を見つけるなど、熊本市動物愛護センターの猫生存率向上に欠かせない存在になっています。
 やっと、西さんとチームにゃわんの高井展子さんに話を聞く事が出来ました「最初は一人で始めたので、苦労は多かったです。孤独感もありました。しかし、今では仲間が増え、大きな手応えを感じています。ブログやインターネットのおかげで、支援物資や資金も集まっており、全国で応援してくださっている方々から勇気を頂いています。」
 ボランティアをしたい、何か協力したいと思っている人にアドバイスはありますか?と尋ねた所「ボランティアにはそれぞれのやり方や役割があると思います。何でもいいからやる事ありませんか?という受け身の姿勢だと長く続かないですね。自分に何が出来るか?何をしたいのか?それを自分で見つける事がとても大事だと思います」話は続きます「譲渡会などを通じて、色んな人たちと出会います。子供達には特に動物好きになってもらいたいですね。命の大切さを子供の頃から理解して欲しいです。そして、これからも人から人へ、動物達の『命のリレー』が続く事を願っています」

「チームにゃわん」のブログ http://emibingo.blog49.fc2.com
 淡々とした語り口の中に強い意志を感じました。「命のリレー」という人の輪はオープンに開かれています。私もリレーに参加したいと思い、3つ目の目的である質問をぶつけました。「ぺっとぼーど」ではリニューアルを予定しており、その中の一つとして里犬・猫のマッチング機能を開発しています。開発中の画面を村上所長や西さんにお見せして、協力をお願いした所「まあ素敵!喜んで協力します」と言ってくださいました。これで、センター訪問の全ての目的を無事達成し、大慌ててタクシーに乗り込むことができました。

エピローグ
 センターからの帰路、東京に向かう最終便の飛行機は、疲れたサラリーマン達で一杯です。いびきをかいて寝ている人、お酒を飲んで顔を赤らめている人、機内の雑誌を読みふけっている人、これまでは気にも留めなかった人達なのに、なぜか一人一人の事を想像していました。
人の力って凄いなあ、一人では何も出来ないけれど、人と人が繋がって、力を合わせれば不可能なんて無いなあ。そんな清々しい気持ちが溢れ出てきます。センターに来る前は、殺処分に対する答えが見えず悶々としていたのに、今ではすっきりしていました。答えが分かったわけじゃないけど、自分のすべきこと、やりたいことが見えています。
 家では愛犬が私の帰りを待ちわびているはずです。いつも以上にたっぷりと愛情を注いで、今日触れ合った動物たちのことを話してあげよう。そして、今日会った素晴らしい人達のことを伝えてみよう。そんな事を考えていると、飛行機は羽田に到着しました。皆が荷物を下ろし、支度を始めます。出口には一人一人に笑顔で声をかけている客室乗務員の方がいました。その方に「ありがとうございました!」と大きな声をかけてみました。気づいた客室乗務員さんは「ニコッ」と笑顔で会釈を返してくれます。私は「ヨッシャー!」とタラップを駆け下り、軽い足取りで夜の空港を後にしたのでした。

熊本市動物愛護センター(ハローアニマルくまもと市)
http://doubutsuaigo.hinokuni-net.jp
参考書籍:殺処分ゼロ 藤崎童士 三五館、動物愛護管理法Q&A 動物愛護論研究会 編著 大成出版社、犬たちをおくる日 今西乃子 金の星社

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